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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科61巻1号

2007年01月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

屈折矯正手術に役立つ眼光学(2)―眼内レンズ挿入眼,角膜屈折矯正手術と眼収差

著者: 大沼一彦

ページ範囲:P.7 - P.12

 前回は,ザイデルの5収差とゼルニケ表現の関係について述べた。今回は,眼内レンズ挿入眼や角膜屈折矯正手術で起きる波面収差とそのときの見え方について,自作の計算機シミュレーションによって求めた結果を使って解説する。収差と瞳孔の関係および偽調節,コントラストについて,皆様の理解のお役に立てれば幸いである。

眼科図譜・347

流行性結膜炎の多発性結膜小出血点

著者: 青木功喜

ページ範囲:P.14 - P.15

 流行性結膜炎の病因としてはヒトアデノウイルス(HAd3,8,19a,37)とエンテロウイルス(EV70,Coxakie virus A,24 variant)が代表的である1)。流行性を示す結膜炎では,流行を最小限にするためできるだけ早期に診断することが大切である2~4)

 エンテロウイルスによる急性出血性結膜炎(acute hemorrhagic conjunctivitis:以下,AHC)では24時間の潜伏期,球結膜小出血点,短い病期が,そしてヒトアデノウイルス(以下,HAd)による流行性角結膜炎(epidemic keratoconjunctivitis:以下,EKC)では急性結膜炎,耳前リンパ腺症,角膜上皮下点状混濁が臨床診断基準として取り上げられている。AHCではこの診断基準が早期診断の意味をもつが,HAdによるEKCの早期診断には,上記診断よりも両眼性,重症結膜炎,家族内感染などが実際的である。

日常みる角膜疾患・46

Meesmann角膜ジストロフィ

著者: 川本晃司 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.16 - P.17

症例

 患者:71歳,男性

 主訴:両眼視力低下

 現病歴:学童期より両眼の視力低下を自覚していた。外傷の既往はない。以前より日中に羞明を感じることも多かった。近くの大学病院で診察を受けた際に両眼の角膜ジストロフィと診断された。その後はながらく経過を観察されていた。最近,両眼の霧視が強くなり白内障も指摘され,手術目的で2006年9月に当科を受診した。

 初診時所見・治療経過:当科初診時の視力は右0.03(0.2×-4.00D()cyl-1.00D 180°),左0.03(0.3×cyl-4.00D),眼圧は右12mmHg,左11mmHgであった。細隙灯顕微鏡検査では両眼に角膜上皮下の微小囊胞が,反帰光線による観察では透明な微小囊胞がみられた。フルオレセイン染色では両眼角膜に点状表層角膜症が,また加齢に伴う水晶体の混濁が認められた(核・皮質白内障)。眼底には異常所見はなく,涙液分泌試験(シルマーI法)でも両眼とも異常所見はなかった。角膜内皮細胞数は右2,949cells/mm2,左3,058cells/mm2であった。上記の所見よりMeesmann角膜ジストロフィと診断し,両眼の視力低下は加齢性白内障によるものと考え,2006年10月に両眼の超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入術を行った。術後の両眼の視力は右(0.9×IOL),左(0.8×IOL)であった。

網膜硝子体手術手技・1【新連載】

基本編(1)手術開始前のセッティング

著者: 浅見哲 ,   寺崎浩子

ページ範囲:P.18 - P.21

 網膜硝子体手術は術者の理解が不十分のままに手を出すと原疾患が治らないばかりでなく,時として失明につながる大きな合併症が起こることにもなりかねない。基本に忠実にそれぞれの手技を確実に施行することにより合併症を減らし,手術成績を向上させることができる。本シリーズは,前半では手術開始前のセッティングや基本的手術手技について,後半では代表的な疾患でわかりやすいように具体的に解説していきたい。

眼科医のための遺伝カウンセリング技術・3

ロジャースのカウンセリング理論

著者: 千代豪昭

ページ範囲:P.27 - P.33

はじめに

 前回の連載で,遺伝カウンセリングの目標は医療の現場でクライエントに好ましい行動変容を起こすことであると述べた。医師が患者のために最も適切だと信じる選択を勧めても,患者が素直に医師の意見に従うとは限らない。好ましい行動変容が起こるためには,クライエント側のさまざまな条件を満たす必要があることがおわかりいただけたと思う。カウンセリング・スキルも影響する。具体的なカウンセリング・スキルの話は次の連載で述べることにし,今回はカウンセラーがどのようにしてクライエントの行動変容を促し,行動変容を援助していくことができるのか,カウンセリングの理論について紹介したい。今しばらく理論的な話を我慢していただきたい。

 すでに述べたが,カウンセリングにはさまざまな理論が提唱されていて,それぞれが特徴をもっている。専門職のカウンセラーは内容や場面に応じていくつかのカウンセリング理論を使い分けているのが普通である。この連載ではロジャースの初期の理論を解説したい。なぜロジャースなのかとの疑問の声もあるかも知れない。心理学の専門家ではない著者自身がロジャースを中心に勉強したという理由もあるが,ロジャースの理論は医師が医療の現場で利用するカウンセリングの理論としては最も適していると信じるからである。ロジャースは理系人間にも理解がしやすく,また,カウンセラーの基本的なスキルを学習したり,カウンセラーズ・マインドを習得するためには最適な技法である。心理専門職も基本的な理論のひとつとしてロジャースは必ず学ぶし,一時ほどではないとしても現代なおロジャースのファンは少なくない。ロジャースは研究者としての活動が長期間であるため,初期と晩年では内容が少し異なる。またロジャースの理論は現在なお多くの研究者により手を加えられながら発展しつつあるが,世界中で有名になりカウンセリングの普及に大きな貢献をした初期の理論を遺伝カウンセリングに導入してみたいと思う。

眼科医のための救急教室・1【新連載】

「先生,すぐ来てください!」そのときあなたは何をしますか?

著者: 和田崇文

ページ範囲:P.50 - P.52

 診察室で患者が倒れたとき,眼科医であるからとためらうことは許されません。街のところどころにAEDが設置され,基本的な心肺蘇生の技術と適切な判断は,すべての医師に求められる時代になってきました。そこで本欄では,眼科診療の場を想定しながら,救命救急の専門家に,救急処置の方法を具体的にご解説いただくことにいたしました。気楽に読めて基本技が身につく,すぐに役立つお話が展開されます。

臨床報告

成人代償不全型先天性上斜筋麻痺に対する下斜筋後転術の矯正効果

著者: 末丸純子 ,   長谷部聡 ,   古瀬尚 ,   木村修平 ,   大月洋

ページ範囲:P.63 - P.68

要約 目的:代償不全型先天性上斜筋麻痺の24例に対して行った下斜筋後転術の成績の報告。症例と方法:症例の性別は男性13例,女性11例で,年齢は16~82歳(平均48歳)であった。初回手術として,球後麻酔下で患眼の下斜筋後転術10mmを施行した。術前と術後に視能訓練士が行った斜視検査データを解析した。結果:術後の過矯正はなく,第1眼位,内転位,患側頭部傾斜での上下偏位を改善するうえで有効であった。患側への頭部傾斜の際の上下偏位の改善効果は,第1眼位における上下偏位の矯正効果を上回らなかった。遠見での両眼単一視の獲得は必ずしも良好ではなかった。結論:患眼の下斜筋後転術は,成人の代償不全型先天性上斜筋麻痺に対して概して有効ではあるが,その効果には限界がある。

製造番号シール紙添付による眼内注入薬の安全管理

著者: 西川憲清 ,   呉雅美 ,   川崎佳巳 ,   三ヶ尻健一 ,   西田直子 ,   田中康夫

ページ範囲:P.71 - P.73

要約 目的:手術用の眼内灌流液に異物が混入していた報告があったので,灌流液の安全性向上のために提案した。方法:それぞれの灌流液をどの症例に使用したかを特定できるよう,灌流液の瓶に製造番号を記したシール紙の添付を提案した。結果:千寿製薬がこの提案に賛同し,シール紙を添付することにした。これを診療録に貼り付けることで,それぞれの症例に使用した薬剤の製造番号を特定することが可能になった。結論:この方法は眼内灌流液の安全管理の面で有効であった。

眼内レンズの一次挿入を行った穿孔性眼外傷の3例

著者: 小林百合 ,   西出忠之 ,   榮木尚子 ,   三浦光生 ,   水木信久

ページ範囲:P.75 - P.79

要約 目的:眼内レンズの一次挿入を行った穿孔性眼外傷3例3眼の報告。症例:症例はすべて男性で,年齢は24歳,29歳,55歳であった。受傷の原因は,釘2眼,針金1眼で,受傷の当日または翌日に受診した。全例に角膜穿孔があり,水晶体前囊が破損し,外傷性白内障があった。1例では前房が消失していた。超音波検査で眼内に異常所見はなかった。受傷眼の矯正視力は,それぞれ0.03,0.5,0.5であった。全例に角膜縫合の後,水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術を行った。眼内レンズの度数は,2眼では受傷眼,1眼では非受傷眼の眼軸長と角膜曲率半径から算出した。結果:全例に術後感染はなかった。角膜抜糸後の最終視力は,それぞれ0.15,0.5,1.2であった。目標屈折度との誤差は,それぞれ-0.35D,+0.2D,+0.1Dであった。結論:後囊が温存されている穿孔性角膜外傷と白内障には,眼内レンズの一次挿入が安全かつ有効である。

海谷眼科における初回全層角膜移植術の成績

著者: 土田宏嗣 ,   新垣淑邦 ,   内山真也 ,   池原正康 ,   小林和正 ,   湯口琢磨 ,   海谷忠良

ページ範囲:P.81 - P.86

要約 目的:初回全層角膜移植の成績の評価と報告。対象と方法:過去52か月間に海谷眼科で初回全層角膜移植を行った48症例53眼を対象とした。男性17例17眼,女性31例36眼であり,年齢は20~88歳(平均66歳)であった。原因疾患は角膜白斑23眼(43%),水疱性角膜症15眼(28%),角膜潰瘍または穿孔9眼(17%),円錐角膜と角膜変性各2眼(4%)である。移植用角膜には,アメリカ合衆国からの輸入角膜26眼と,静岡県アイバンクから提供された27眼を用いた。結果:術後合併症として,拒絶反応が51%,高眼圧が19%,角膜潰瘍または穿孔が11%,眼内炎が9%,水疱性角膜症が8%,遷延性上皮障害が6%にあった。透明治癒は,術後1年後に68%,5年後に50%で得られた。結論:初回全層角膜移植では,拒絶反応の予防と,ハイリスク症例に対する手術適応の検討が望まれる。

超音波白内障手術研修の目標設定のための各手術操作時間の検討

著者: 原田大輔 ,   近本信彦 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.87 - P.90

要約 目的:白内障手術の各段階での時間を測定し,研修医に対する手術の習熟目標を設定すること。対象と方法:過去2年間に合併症なしに白内障手術が行われた40眼を対象とした。20眼については7年の手術経験がある1名の標準術者,他の20眼については経験年数が1~2年の2名の研修中の術者により行われた。全手術を撮影記録し,白内障手術を9段階に区切り,その各段階に必要とした時間を測定した。結果:標準術者の全手術時間は16.3±2.3分であり,研修中の術者のそれは27.5±4.6分と有意に長かった(p<0.001)。標準術者は超音波乳化吸引で最も時間を要し,症例毎の時間変動が大きかった。研修中の術者は前囊切開と皮質吸引でも時間を要し,変動が大きかった。眼内レンズ挿入時間は両者間で同じであった。結論:白内障手術の各段階の時間とばらつきを計測することで,手術訓練の問題点を明確にし手術の質を向上できる。

多局所視覚誘発電位により視機能評価を行った球後視神経炎の1例

著者: 伊集院朋子 ,   湯川英一 ,   新田進人 ,   吉井稔章 ,   原嘉昭

ページ範囲:P.93 - P.96

要約 目的:多局所視覚誘発電位(mVEP)で視機能を評価した球後視神経炎の症例の報告。症例と方法:29歳女性の右眼に視力低下が突発し,矯正視力は右0.02,左1.5であった。球後視神経炎と診断し,副腎皮質ステロイド薬のパルス療法で右眼視力は1.0に回復した。右眼が暗く見える感じのみが持続していた。発症から36か月後にmVEPで視機能を評価した。結果:矯正視力は左右眼とも1.5であり,ハンフリー視野計とハンフリーMATRIXで視野異常は検出されなかった。mVEPでは,左眼に比べ,右眼のすべての象限で頂点潜時が延長していた。結論:球後視神経炎に対してmVEPを使うことで,治療効果の判定を含む視機能が評価できる可能性がある。

術後長期経過後に発症したMRSAバックル感染の2例

著者: 中野早紀子 ,   山本禎子 ,   上領勝 ,   今野伸弥 ,   山下英俊

ページ範囲:P.97 - P.102

要約 目的:網膜剝離に対し強膜輪状締結術(バックル手術)が行われ,その長期間後にMRSAにより眼内感染が生じた2症例の報告。症例:症例は72歳女性と78歳男性であり,それぞれ13年と19年前に網膜剝離に対し輪状締結術が行われ,網膜は復位していた。2症例とも結膜充血で受診し,結膜浮腫,眼脂,眼痛があり,眼内炎が併発していた。CT検査でバックル周囲に膿瘍があった。経過:両症例ともバックルからの感染と考え,バックルを除去した。以後の経過は良好であった。バックルからMRSAが検出された。結論:CT検査はバックル周囲にある膿瘍の診断に有用であった。バックル除去が有効であったが,網膜剝離手術から長期間後にMRSAによる感染が起こった理由は不明である。

カラー臨床報告

Crohn病に続発しビタミンA投与が奏効した後天夜盲

著者: 澤田祐実 ,   中村かおる ,   酒田久美 ,   堀貞夫

ページ範囲:P.57 - P.60

要約 目的:Crohn病に併発した夜盲にビタミンA投与が奏効した症例の報告。症例:38歳女性が夜盲を主訴として受診した。22年前にCrohn病が発症し,寛解と増悪を繰り返し,低栄養状態が続いていた。矯正視力は左右眼とも1.2であり,眼底に点状の小灰白色斑が多発していた。網膜電図(ERG)はa波とb波が著明に減弱し,暗順応曲線が第1相,第2相ともに平坦化していた。血中ビタミンA値が著しく低下していた。ビタミンA欠乏による特発性夜盲と診断した。結果:ビタミンA投与を開始し,2週間後に夜盲を自覚しなくなった。ERGと暗順応曲線は5か月後にほぼ正常化し,眼底の小灰白色斑もほぼ消失した。結論:本症例はCrohn病に伴う消化管吸収障害でビタミンA欠乏が続発して夜盲が生じたと解釈され,ビタミンAの経口投与が著効を示した。

今月の表紙

水晶体脱臼・水晶体落下(同一眼)

著者: 斉藤明 ,   中澤満

ページ範囲:P.13 - P.13

 患者は81歳の女性で,左眼のかすみ・視力低下を主訴に受診した。視力は右0.2(0.3×+2.00D()cyl-3.50D 120°),左0.05(0.08×+2.75D),眼圧は右12mmHg,左30mmHgであった。左眼の瞳孔領に落屑と水晶体脱臼を認め当日入院,その翌日に水晶体落下となり水晶体摘出術,硝子体茎切断術,眼内レンズ強膜固定が施行された。

 現在,左眼の視力は0.1(0.5×cyl-1.50D 100°),眼圧は16mmHgである。この患者の場合,右眼も同様の水晶体落下で以前に治療を行っている。

 撮影には,トプコン社製眼底カメラTRC-50X(フィルムはFUJIFILM Sensia 100),コーワ社製フォトスリットランプSC-1200(フィルムはFUJIFILM PROVIA 400F)を使用した。落下状態では水晶体が安定しないため,ピント合わせに細心の注意を払って撮影した。

べらどんな

白い肌

著者:

ページ範囲:P.26 - P.26

 藤田嗣治の特別展があった。生誕120年を記念しての催しであるが,これだけの規模のものはまず空前絶後であろう。

 藤田の作品では,人物の肌が白いことが特徴である。それも真っ白ではなく,上等な蝋燭か大理石のように深みのある白さで描かれている。今までは画集か複製で見るだけだったが,この白さだけは実物でなければ味わうことができない。じつによい企画だと有り難く思っている。

書評

緑内障3分診療を科学する!―症例に学ぶマネジメントの実際

著者: 根木昭

ページ範囲:P.35 - P.35

 多治見スタディなどによる社会的啓発が進み,眼科外来における緑内障患者は増加している。日本緑内障学会は,緑内障管理の標準化を目指し,緑内障診療ガイドラインを発行している。ガイドラインではベースラインを見極め,目標眼圧を設定し,治療効果を確認しながら治療を進める手順を示してあるが,実臨床では初期治療で目標眼圧を達成できる症例は半数にも満たず,過半数の症例はガイドラインからはずれた管理を当初からはじめねばならない。限られた診療時間内で,個々に異なる症例に対していかに納得できる治療を提供するか,その手がかりを具体的に示してくれる情報源は少ない。

 このような眼科医の欲求不満を解決すべく,エビデンスに裏付けられた標準化された方針を踏まえて,個々の症例に最も現実的で柔軟な対策を打ち出すにはどのような思考過程を踏んだらよいかを,実際の症例をもとに提示しようというのが編者の意図である。

61周年特別企画 還暦随想

著者: 米谷新 ,   望月學 ,   松橋正和 ,   上野聰樹 ,   阿部春樹 ,   宇治幸隆 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.37 - P.45

還暦随想

 弊誌「臨床眼科」は1947年4月に第1巻第1号を発行して以来,お蔭様で61年目を迎えることができました。これもひとえに,読者の方々,論文をご執筆いただいた先生方の長年にわたるご愛顧の賜物と感謝いたしております。

 さて60年,人間でたとえると還暦です。この節目の時期にあたり編集委員会では,弊誌創刊の年にお生まれになった教授の方々に随想をご執筆いただこうということになりました。突然「先生は還暦ですから何かご執筆ください。テーマは自由です」と編集室からの無理なお願いに快くご執筆くださいました先生方,ありがとうございました。深く感謝いたします。

やさしい目で きびしい目で・85

専門化について思うこと

著者: 神野早苗

ページ範囲:P.49 - P.49

 最近の大学の内科は疾患別内科になっていて,糖尿病は糖尿内科,リウマチは免疫内科と細分化されています。専門とする医師が診察にあたり,最先端の医療を行えるというメリットは大きいと思いますが,例えばサルコイドーシス患者に肺病変と心臓サルコイドーシスと皮膚病変があるとすると,眼科も合わせて4科を受診することになります。患者は4回来院しなければならず,さらにステロイドを全身投与する場合にはイニシアチヴをとるのはどこかという問題になってきます。また,入院中の糖尿病患者が風邪をひいて咳が出ていた場合,どこに受診させたらいいのか悩みます。糖尿内科?呼吸器内科?総合内科?どこでしょうか。

 家庭医を作り,高度先端病院は専門化して医療の棲み分けを行うという大義名分はよいようであり,不便なようであり……。昔の内科の先生はなんでも診てくれたように思いますが,今は「それはうちの担当でない。」と断られることが多くなり手間ばかりかかるようになりました。

ことば・ことば・ことば

2007

ページ範囲:P.53 - P.53

 「豚」はドイツ語ではSchweinです。英語にはこれと同じ系統のswineがありますが,近世になってからはpigが一般的な名称になりました。それでも農業や学術用語としてはswineが使われることが多く,swine fever「豚コレラ」,swine flu「豚インフルエンザ」などで使われています。

 豚には性別や大きさによりさまざまな呼び方があります。去勢していない雄豚はboar,そして去勢した食用のはhogと言い,雌豚になるとsow,子豚はfarrowです。

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あとがき

著者: 中澤満

ページ範囲:P.112 - P.112

 1982年のことだった。両眼の白内障に対して眼内レンズ移植手術を受けて,両眼とも裸眼遠方視で1.0の視力となったある患者が,外来の待合いで老眼鏡も掛けずに文庫本を読んでいる姿に驚いた。単焦点の眼内レンズでは遠方視,近方視ともに裸眼視力が良好になるはずがないと思っていたからだ。

 そこで眼内レンズ術後の患者30名に協力していただき,他覚的屈折度から求められる焦点と石原式近点計で求められる自覚的な近点とから,見かけ上の調節力を計算してこの値を眼内レンズ移植眼の偽調節と称した。総計40眼について偽調節を求めたところ,焦点から近方方向に平均約2Dの偽調節があることがわかった。さらに検討すると,偽調節値は瞳孔径に反比例する傾向が最も顕著であることがわかり,偽調節は眼の焦点深度に深く関連する現象であると結論した(「AJO」1983,「IOVS」1984)。ところが実際の人眼での焦点深度はせいぜい0.05D程度であるとの指摘を受け,その本態は完全には解明されずに今に至っている。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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