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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科61巻1号

2007年01月発行

文献概要

連載 眼科医のための遺伝カウンセリング技術・3

ロジャースのカウンセリング理論

著者: 千代豪昭1

所属機関: 1お茶の水女子大学大学院人間文化研究科特設遺伝カウンセリングコース

ページ範囲:P.27 - P.33

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はじめに

 前回の連載で,遺伝カウンセリングの目標は医療の現場でクライエントに好ましい行動変容を起こすことであると述べた。医師が患者のために最も適切だと信じる選択を勧めても,患者が素直に医師の意見に従うとは限らない。好ましい行動変容が起こるためには,クライエント側のさまざまな条件を満たす必要があることがおわかりいただけたと思う。カウンセリング・スキルも影響する。具体的なカウンセリング・スキルの話は次の連載で述べることにし,今回はカウンセラーがどのようにしてクライエントの行動変容を促し,行動変容を援助していくことができるのか,カウンセリングの理論について紹介したい。今しばらく理論的な話を我慢していただきたい。

 すでに述べたが,カウンセリングにはさまざまな理論が提唱されていて,それぞれが特徴をもっている。専門職のカウンセラーは内容や場面に応じていくつかのカウンセリング理論を使い分けているのが普通である。この連載ではロジャースの初期の理論を解説したい。なぜロジャースなのかとの疑問の声もあるかも知れない。心理学の専門家ではない著者自身がロジャースを中心に勉強したという理由もあるが,ロジャースの理論は医師が医療の現場で利用するカウンセリングの理論としては最も適していると信じるからである。ロジャースは理系人間にも理解がしやすく,また,カウンセラーの基本的なスキルを学習したり,カウンセラーズ・マインドを習得するためには最適な技法である。心理専門職も基本的な理論のひとつとしてロジャースは必ず学ぶし,一時ほどではないとしても現代なおロジャースのファンは少なくない。ロジャースは研究者としての活動が長期間であるため,初期と晩年では内容が少し異なる。またロジャースの理論は現在なお多くの研究者により手を加えられながら発展しつつあるが,世界中で有名になりカウンセリングの普及に大きな貢献をした初期の理論を遺伝カウンセリングに導入してみたいと思う。

参考文献

1)佐治守夫・友田不二夫(編):カウンセリング(ロージャス全集2巻).岩崎学術出版社,東京,1966
2)友田不二夫(編):カウンセリングの立場(ロージャス全集11巻).岩崎学術出版社,東京,1966
3)伊藤 博(編):クライエント中心療法の評価(ロージャス全集17巻).岩崎学術出版社,東京,1966
4)友田不二夫・伊藤 博(編):クライエント中心療法の研究(ロージャス全集18巻).岩崎学術出版社,東京,1966
5)國分康孝:カウンセリングの理論.誠信書房,東京,1980
6)千代豪昭:カウンセリング技術クライエント中心型の遺伝相談.臨床遺伝研究 5:89-99,1983
7)遺伝医学と遺伝サービスにおける倫理問題に関する国際ガイドライン1995.松田一郎(監):http//www.jshg.jp/

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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