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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科61巻11号

2007年10月発行

文献概要

特集 眼科専門医に必要な「全身疾患と眼」のすべて 9.結合組織病および近縁疾患

結節性動脈周囲炎,大動脈炎症候群,側頭動脈炎

著者: 伊藤忠1

所属機関: 1弘前大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.176 - P.178

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結節性動脈周囲炎

1.概念

 結節性動脈周囲炎(periarteritis nodosa:PN)は中・小型の筋型動脈に壊死性血管炎を生じ,その結果,動脈壁に瘤(動脈瘤)を形成し炎症が生じる疾患で,全身の諸臓器に分布する血管に動脈炎を生じることから,多彩な症状を呈する疾患である1)。肉眼的に壊死性血管炎が認められる症例を古典的多発動脈炎(classical polyarteritis nodosa:classical PN),顕微鏡で壊死性血管炎が認められる症例を顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangitis:MPA)と呼ぶ2)。古典的多発動脈炎と顕微鏡的多発血管炎は障害される血管径が異なることから,臨床症状に差異を認める。また,顕微鏡的多発血管炎では好中球の細胞質に対する抗体(抗好中球細胞質抗体antineutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)のなかの一種であるミエロベルオキシダーゼ(myeloperoxidase:MPO)に対する抗体(抗MPO抗体:MPO-ANCA)が高率に陽性を示すことがわかっている3)

 全国の年間症例数は古典的多発動脈炎で60~100人,顕微鏡的多発血管炎で1,400人で,罹患男女比はやや男性に多く,両疾患とも60歳以上に多くみられる(免疫疾患調査研究班)。

 古典的多発動脈炎では肝炎ウィルスや他のウィルス感染症が関与して発症する症例が存在するが,他の多くの症例では原因不明なことが多い。顕微鏡的多発血管炎ではMPO-ANCAが発症に関与している。両疾患とも遺伝性は認められていない。

参考文献

1)三田村忠行:結節性多発動脈炎.小俣政男・杉本恒明(編):内科学(第7版).1128-1131,朝倉書店,1999
2)福岡利仁・中林公正:顕微鏡的多発血管炎の診断と治療.MPA診療のアップトゥデート.医学のあゆみ 214:75-83,2005
3)武曾恵理:MPO-ANCA陽性血管炎に対する経静脈的大量免疫グロブリン(IVIg)療法.医学のあゆみ 214:113-119,2005
4)丸田知央子・坂本めぐみ・脇山はるみ・他:顕微鏡的多発血管炎の眼合併症についての検討.臨眼 59:1385-1388,2005
5)高橋 潤・高村佳弘・藤井千雪・他:Scanning laser ophthalmoscope(SLO)で経過観察を行った結節性多発動脈炎の1例.眼紀 53:821-824,2002
6)磯部光章:大動脈炎症候群診療の進歩.高安病up date.Cardiovascular Med-Surg 8:169-174,2006
7)羽根田俊・菊池健次郎:大動脈疾患.小俣政男・杉本恒明(編):内科学(第7版).612-617,朝倉書店,1999
8)Baba T, Itakura K, Tanaka R et al:高安病の初期網膜変化における蛍光眼底撮影の重要性.Jpn J Ophthalmol 43:546-552,1999
9)尾崎承一:血管炎.その分と疫学.医学のあゆみ 214:57-62,2005
10)竹之下秀雄・野下展生・永山 徹:側頭動脈炎の1例報告と本邦皮膚科領域における側頭動脈炎21例の検討.皮膚科の臨床 48:801-805,2006
11)大熊壮尚・北川泰久:側頭動脈炎に伴う頭痛.今月の治療 13:455-460,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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