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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科61巻11号

2007年10月発行

文献概要

特集 眼科専門医に必要な「全身疾患と眼」のすべて 9.結合組織病および近縁疾患

Wegener肉芽腫症,関節リウマチ,強直性脊椎炎

著者: 薄井紀夫1

所属機関: 1総合新川橋病院眼科

ページ範囲:P.180 - P.185

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Wegener肉芽腫症

1.疾患概要1)

 原因不明の血管炎を基盤として多様な臨床症状を示す血管炎症候群(表1)のうち,Wegener肉芽腫症(Wegener granulomatosis)は上気道,肺,腎臓の小細動脈に壊死性肉芽腫性血管炎をきたすことを特徴とする。30~50歳代の中年男女に発熱,体重減少などの全身症状を伴って,膿性鼻漏,鼻出血,鞍鼻,中耳炎,眼球突出,咽頭潰瘍などで発症することが多い。肺に病変が及ぶと咳嗽,血痰などが出現し,X線像で結節影や浸潤影を呈する。さらに約40%の症例では急性進行性腎炎(組織像は半月体形成性糸球体腎炎)を起こす。病変が上気道や肺に限られた場合を限局型,上気道,肺,腎のすべてに所見がある場合を全身型と呼ぶ。

 本疾患では抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)の1つであるプロテイナーゼ3(PR-3)に対する抗体(PR3-ANCA,従来のc-ANCA)の出現が高頻度にみられ,かつその抗体価が病勢を反映する。このPR3-ANCAは,炎症性サイトカインの存在下に血管壁に固着した好中球を活性化して活性酸素や蛋白分解酵素の放出を促し,これにより血管炎や肉芽腫性炎症を引き起こすと考えられている。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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