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特集 眼科専門医に必要な「全身疾患と眼」のすべて 16.免疫不全
AIDS
著者: 島川眞知子1
所属機関: 1東京女子医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.322 - P.326
文献購入ページに移動はじめに
HIV感染症は,レトロウイルスであるhuman immunodeficiency virus(HIV)-1の感染で成立する。AIDS(後天性免疫不全症候群acquired immunodeficiency syndrome)とは,このHIVが主としてCD4陽性Tリンパ球(以下,CD4リンパ球)に感染し,その量的・質的低下をきたした結果,細胞性免疫不全となり,日和見感染を併発した状態である。
図1に示すように,HIVに感染してもAIDS発症までは約10年前後かかる慢性疾患であり,急性感染期,長年にわたる無症候期,原因不明の発熱,体重減少がみられはじめるAIDS関連症候群期(AIDS-related complex:ARC期),AIDS期と経過する。しかし,無症候期の間にも体内ではリンパ組織を中心に連日1010個もの新しいHIV-RNAが盛んに増殖し,リンパ球と死滅の戦いがなされる。この戦いは長年に及んで,ふつうは1,000/μl以上あるCD4リンパ球が減少しはじめると,その数に応じた日和見感染がみられてくる(図1)。したがってCD4リンパ球数はその時点の免疫状態を,血漿中HIV-RNA量はその後の病気の進行速度を示す重要な指標となる。
CD4リンパ球数が200/μl以下になると,AIDS診断のための23の指標疾患に代表されるような日和見感染が頻発する(表1)。AIDSはHIVの抗体検査陽性と,これらいずれかの指標疾患の発症で診断される。
HIV感染症は,レトロウイルスであるhuman immunodeficiency virus(HIV)-1の感染で成立する。AIDS(後天性免疫不全症候群acquired immunodeficiency syndrome)とは,このHIVが主としてCD4陽性Tリンパ球(以下,CD4リンパ球)に感染し,その量的・質的低下をきたした結果,細胞性免疫不全となり,日和見感染を併発した状態である。
図1に示すように,HIVに感染してもAIDS発症までは約10年前後かかる慢性疾患であり,急性感染期,長年にわたる無症候期,原因不明の発熱,体重減少がみられはじめるAIDS関連症候群期(AIDS-related complex:ARC期),AIDS期と経過する。しかし,無症候期の間にも体内ではリンパ組織を中心に連日1010個もの新しいHIV-RNAが盛んに増殖し,リンパ球と死滅の戦いがなされる。この戦いは長年に及んで,ふつうは1,000/μl以上あるCD4リンパ球が減少しはじめると,その数に応じた日和見感染がみられてくる(図1)。したがってCD4リンパ球数はその時点の免疫状態を,血漿中HIV-RNA量はその後の病気の進行速度を示す重要な指標となる。
CD4リンパ球数が200/μl以下になると,AIDS診断のための23の指標疾患に代表されるような日和見感染が頻発する(表1)。AIDSはHIVの抗体検査陽性と,これらいずれかの指標疾患の発症で診断される。
参考文献
1)Jobs DA, Van Natta ML, Holbrook JT et al:Longitudinal study of the ocular complications of AIDS. 1. Ocular diagnoses at enrollment. Ophthalmology 114:780-786, 2007
2)Jobs DA, Van Natta ML, Holbrook JT et al:Longitudinal study of the ocular complications of AIDS. 2. Ocular examination results at enrollment. Ophthalmology 114:787-793, 2007
3)Thrne JE, Holbrook JT, Jobs DA et al:Effect of cytomegalovirus retinitis on the risk of visual acuity loss among patients with AIDS. Ophthalmology 114:591-598 2007
4)立川夏夫:HIV感染症の最前線.医学のあゆみ 218:911-921,2006
5)木村 哲:HIV-1感染症と日和見感染.医学のあゆみ 213:869-875,2005
6)島川眞知子・佐藤信祐:AIDSに併発した進行性網膜外層壊死の1例.日眼会誌 103:137-143,1999
7)島川眞知子:後天性免疫不全症候群患者にみられた脈絡膜結核腫の1例.日眼会誌 104:437-441,2000
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