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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科61巻11号

2007年10月発行

文献概要

特集 眼科専門医に必要な「全身疾患と眼」のすべてコラム 眼科研究こぼれ話

視覚電気生理学者の夢

著者: 長谷川茂1

所属機関: 1新潟大学

ページ範囲:P.327 - P.327

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 私の研究領域は視覚電気生理学です。名前からしても物理学のようなお堅い響きがあるようで,おまけに電気ですから触れると恐ろしいことが起きそうで,わが教室のたいていの人からは敬遠されます。「○△くん(さん),電気生理の研究はどうだい? おもしろいよ」と誘った場合の答えは,約90%以上の確率で「わたしは数学や電気は苦手ですから」となります。確かにかなりマニアックなところが多いようです。さらに内容もやや小難しいようで入局して以来,教室の△◆先生からはおそらく1回も理解も評価もされていなかったようです(集談会では,話がわからないと毎回お小言をいただいたのを思い出します)。そこであきらめてはいけません。どのような研究領域でもそうでしょうが,世界にはきわめて専門的な(マニアックな,ただしアブノーマルでない)連中がいますので,正当な評価をしてもらえる可能性があります。この領域はいまや絶滅が危惧されていると伝え聞きますが,何かどえらい発見でもあれば,近い将来,一躍脚光を浴びるでしょう(と願っています)。

 やはり電気生理ですから,多くの時間はコンピュータとの対話に費やされます。視覚刺激のパターンやトリガー出力など自分でプログラミングしたり,波形解析には自作のフーリエ変換-逆フーリエ変換プログラムを作成したり,Excelのマクロでグラフを作成したりしなければなりません(手間がかかる)。また測定は電気製品(アンプ,コンピュータ,電極,モニター)との格闘です。しかし,これらの部分は自分の思いどおりにコントロールできる範囲ですから,うまくいけば快感となります。一方,実際の測定対象は人間ですから,なかなかこちらの思いどおりにはなりませんので結構ストレスになります。以前は正常コントロールや予備実験を外来の患者さんを対象として行うことができましたが,いまは権利意識の高まりもあり,簡単には応じてもらえません。かといって動物での実験も,動物保護団体の活動がさかんで困難そうです。最近,独立法人化と新臨床研修制度のおかげで経済効率が重視され,人手も少なくなったため,診療や手術にかける時間が増え,電気生理検査をする時間が少なくなってきているのが残念です。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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