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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科61巻12号

2007年11月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

眼の不定愁訴と結膜弛緩症

著者: 横井則彦

ページ範囲:P.1985 - P.1992

 眼の不快感にかかわる不定愁訴は,しばしば外来を悩ますものである。しかし,不定愁訴の原因を看破して適切な治療に結び付けるには,涙液の生理やドライアイ,結膜弛緩症およびその関連疾患,眼瞼疾患といった多くの涙液に関連しうる疾患群の病態生理についてよく理解しその対応策を習得しておく必要があり,なかなかハードルが高い。そのようななかで,結膜弛緩症は誰にでも診断ができて,病態が理解しやすく,しかもその外科治療は驚くほど効果的である。また本疾患を克服することにより,不定愁訴の原因となる他の疾患がよくみえるようにもなる。本疾患は,加齢によりあらゆる眼表面に表現されうるため,その理解は不定愁訴の克服における第1歩と思われる。

日常みる角膜疾患・56

表層角膜移植術後の角膜不正乱視

著者: 小林泰子 ,   川本晃司 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.1996 - P.1999

症例

 患者:35歳,女性

 主訴:右眼の視力低下

 現病歴:1997年12月,右眼の視力低下を自覚し,1998年1月に近医で周辺部角膜変性症を指摘され手術が必要と説明を受け,精査・手術目的で当科を紹介され3月に受診した。

 治療経過:初診時の視力は,左0.4(0.8×S-1.00D=cyl-3.00D 90°)であった。角膜輪部4~8時にかけての角膜実質の著明な菲薄化および血管の侵入,脂質の沈着を認めた(図1a,b)。眼底および中間透光体は異常を認めなかった。テリエン角膜辺縁変性の診断で,1998年7月に左眼に対し表層角膜移植術を施行した。術後経過は順調で,移植片の透明度も良好である。手術により倒乱視は軽減した(図1c)。最終視力は,左1.0(1.2×S+0.50D=cyl-1.50D 90°)と良好であるが,自覚的に単眼複視を認めた(図1d)。

 ウェーブフロントアナライザー(KR-9000PW®,トプコン)を用いて波面収差測定を行った(図2)。マイヤー像は,角膜下方にむけて楕円状に変形しており,Hartmann像は,角膜形状異常による下方の像の歪みを認めた。Axial Powerは,下方に急峻化を認め,角膜の高次収差のカラーコードマップでは,コマ様収差が存在していることがわかった。屈折の全収差カラーコードマップでは,垂直方向と水平方向の波面が異なっていた。屈折および角膜の高次収差カラーコードマップは同じパターンを示し,不正乱視が角膜由来であることがわかった。RMS(root mean square:2乗平均平方根)表示では,瞳孔径6mmのときにS3のコマ収差の数値が大きくなっていた。波面収差解析により中心視力が良好であるにもかかわらず単眼複視を訴えるのは,角膜不正乱視によるものと判断した。

公開講座・炎症性眼疾患の診療・8

Posner-Schlossman症候群

著者: 宮崎晶子 ,   北市伸義 ,   大野重昭

ページ範囲:P.2000 - P.2003

はじめに

 米国のAdolph PosnerとAbraham Schlossman1)は1948年,片眼性・再発性の虹彩毛様体炎を伴う一過性高眼圧症例9例を報告し,原発緑内障と続発緑内障の中間ともいえる疾患であると考えglaucomatocyclitic crisisという概念を提唱した(図1)。これが今日Posner-Schlossman症候群と呼ばれているものである。基本概念は現在もそのまま受け入れられており,片眼性,再発性虹彩毛様体炎を伴う急激な眼圧上昇が特徴である。本病は最初に米国で報告された疾患ではあるが,白人より日本人で高頻度にみられるため2),日本における内眼炎診療では常に念頭におかなければならない重要な疾患である。

網膜硝子体手術手技・11

増殖糖尿病網膜症(2)硝子体切除

著者: 浅見哲 ,   寺崎浩子

ページ範囲:P.2004 - P.2008

はじめに

 増殖糖尿病網膜症の手術戦略を立てるうえで,その病態をまず知ることが必要不可欠である。また,増殖膜処理の基本を理解することも合併症の少ない手術を行うには重要である。本稿では初めに増殖糖尿病網膜症の病態について説明し,次に増殖処理の前までの硝子体切除術について述べる。増殖膜処理の実際の手技については次号で解説する。

眼科医のための遺伝カウンセリング技術・付録

遺伝カウンセリングにおける遺伝情報の収集

著者: 四元淳子 ,   千代豪昭

ページ範囲:P.2009 - P.2020

はじめに

 日常診療に多忙な臨床医の皆さんが遺伝カウンセリングにチャレンジする場合,クライエントと面接する時間と場をどうやって確保するかが現実的な問題であろう。次の課題はクライエントに提供すべき「情報」をいかに短時間に要領よく収集するかである。

 われわれ遺伝カウンセラーを自称している専門職でも,クライエントとの面接に先立って相当の時間をかけて情報収集している。特に経験が少ない領域の遺伝カウンセリングについては専門書や後掲する「遺伝カウンセリングマニュアル」で知識を整理し,Inet情報もチェックしておかねばならない。遺伝子診断に関する情報は分子遺伝学を背景とした日進月歩の遺伝医学が背景にある。最新の情報を得たうえでクライエントに会うことは,医師として,あるいは遺伝カウンセラーとして基本的な姿勢であり義務でもある。自信がない場合は,顔見知りの専門医に電話をかけることも稀ではない。専門施設では専門医や分子遺伝学の専門家から常時新しい遺伝情報を得る機会があるが,臨床家にとって情報入手には限界があろう。

 しかし,近年急速に発達したInet環境は情報環境を大きく変えた。遺伝カウンセリング領域でも例外ではない。今回の連載では遺伝カウンセリングにおけるInetの利用法を中心にまとめてみた。

臨床報告

子宮頸管スクリーニング検査後に発症した新生児クラミジア結膜炎の2例

著者: 村瀬寛紀 ,   堀由起子 ,   望月清文 ,   太田俊治 ,   高木敦志 ,   伊藤綾子 ,   山田信二 ,   山岸由佳 ,   三鴨廣繁

ページ範囲:P.2037 - P.2042

要約 目的:出産前にスクリーニング検査を受けた母親から生まれた2例に新生児クラミジア結膜炎が発症した報告。症例:生後19日の女児と16日の男児に新生児クラミジア結膜炎が発症した。いずれも片眼に罹患し,主訴はそれぞれ血性眼脂,眼瞼腫脹と眼脂であった。両症例とも蛍光抗体染色とクラミジアPCR法でクラミジア抗原が陽性であった。1例の母親は妊娠34週目のスクリーニング検査では陰性,分娩後の検査では陽性であり,他の1例の母親は妊娠28週目のスクリーニング検査で陽性であり,クラリスロマイシンの投与を受けていた。結論:クラミジア感染についての出産前スクリーニング検査では,検査時期の再検討が望まれる。検査で陽性であった母体から出生した児には注意深い経過観察が必要である。

福岡大学病院眼科におけるぶどう膜炎の統計

著者: 小沢昌彦 ,   野田美登利 ,   内尾英一

ページ範囲:P.2045 - P.2048

要約 目的:福岡大学病院眼科での内因性ぶどう膜炎の報告。対象と方法:過去15か月間に受診した内因性ぶどう膜炎84例を診療録の記述に基づいて検索した。男性40例,女性44例であり,年齢は7~79歳(平均45歳)であった。結果:片眼発症と両眼発症はともに42眼であった。内訳は,サルコイドーシス10例(12%),急性前部ぶどう膜炎9例(11%),原田病7例(8%),ヘルペス性虹彩毛様体炎5例(4%),Behçet病3例(4%)などであり,30例(36%)が分類不能であった。治療として47例(56%)に副腎皮質ステロイドが全身投与されていた。結論:ヘルペス性虹彩毛様体炎が多かったのは,PCRにより積極的にウイルスDNA同定が行われたためである。急性前部ぶどう膜炎については,診断基準の確立が望まれる。

ブナゾシンの効果が消失するまでの時間

著者: 小林博 ,   岩切亮 ,   小林かおり

ページ範囲:P.2049 - P.2052

要約 目的:ブナゾシンの点眼を中止した後に眼圧下降効果が消失するまでの期間の検索。症例と方法:開放隅角緑内障または高眼圧症でブナゾシン0.01%を1日1回点眼中の15例を対象とした。男性7例,女性8例で,年齢は45~75歳(平均62歳)であった。無治療時の眼圧は21~24mmHg(平均21.9±1.0mmHg)であり,点眼中の眼圧は18~20mmHg(平均18.9±0.7mmHg)であった。点眼を中止し無治療時の眼圧に達するまで,1週間に1回眼圧を測定した。結果:眼圧下降効果がなくなるまでの期間は,両眼のうち効果消失が遅い眼では3.9±1.4週,効果消失が早い眼では3.2±1.4週であった。全例で中止6週間後に眼圧が無治療時の値に達していた。結論:ブナゾシンの点眼中止後に眼圧下降効果がなくなるまでの期間は平均3.6週で個体差がある。

デスメ膜小穿孔を用いた濾過手術の成績

著者: 小林博 ,   小林かおり

ページ範囲:P.2053 - P.2059

要約 目的:デスメ膜小穿孔を用いた濾過手術の成績の報告。対象と方法:薬物治療で眼圧が22mmHg以上の原発開放隅角緑内障または落屑緑内障65眼を対象とし,デスメ膜小穿孔を用いた濾過手術を行い12か月の経過を観察した。結果:術前の眼圧は平均28.1±5.9mmHgであった。術後3,6,12か月後の眼圧は,それぞれ11.9±2.5mmHg,12.1±2.9mmHg,12.7±3.2mmHgであり,いずれも術前値よりも有意に下降していた(いずれもp<0.0001)。手術から12か月後の無投薬の状態で,61眼(93%)が20mmHg以下,57眼(86%)が16mmHg以下の眼圧であった。合併症として,低眼圧が2眼(3%),浅前房が2眼(3%),脈絡膜剝離が1眼(2%),前房出血が4眼(6%)にあった。結論:デスメ膜小穿孔を用いた濾過手術で,眼圧が有意に下降した。合併症は低頻度であった。

ドメスティック・バイオレンスによる外傷性眼障害者の1例

著者: 青山公彦 ,   新里越史 ,   杉田威一郎 ,   雑喉正泰 ,   岩城正佳

ページ範囲:P.2061 - P.2064

要約 目的:家庭内暴力により白内障と網膜剝離が生じ,眼科的ならびに社会的に救済できた症例の報告。症例:33歳女性が両眼の視力低下で受診した。10年以上前から父と義母から家庭内で暴力を受けていたという。8年前に右下肢骨折,6年前に左下肢骨折,4年前に肝臓の圧迫破裂,2週間前に熱湯による顔面と上半身の熱傷があった。矯正視力は右光覚弁,左手動弁であり,両眼に外傷性白内障と網膜剝離があった。経過:左眼に対し白内障手術,眼内レンズ挿入術,シリコーンオイル併用の硝子体手術を行った。7週後のシリコーンオイル抜去後に網膜剝離が再発した。網膜冷凍凝固術で網膜は復位し,0.3の最終視力を得た。退院後は実家に帰らせず福祉施設に入居させた。結論:本症例の救済には,医学的治療に加え,患者の親戚,医療スタッフ,病院間の連携,警察の協力など法律を含めた総合的な対策が奏効した。

動力草刈り機作業中にフェイスシールドを装着していたにもかかわらず穿孔性眼外傷をきたした2例

著者: 小池生夫 ,   小池直栄 ,   大原進 ,   相馬利香 ,   久保田敏昭 ,   田原昭彦 ,   石橋達朗

ページ範囲:P.2065 - P.2069

要約 目的:フェイスシールドを装着して動力草刈り機で作業中に異物が飛来し,穿孔性眼外傷が起こった2症例の報告。症例:2例とも男性で,年齢はそれぞれ51歳と61歳である。1例では異物がアクリル製のフェイスシールドを打ち抜き,シールドの破片が左眼角膜を穿孔した。角膜を縫合し硝子体切除を行った。他の1例では異物がフェイスシールドと顔面との隙間から飛入し,左眼角膜を穿孔した。角膜を縫合し水晶体乳化吸引術,眼内レンズ挿入術を行った。2症例とも経過は良好で視力が回復した。結論:動力草刈り機で作業中の眼外傷の予防には,フェイスシールドでは不十分なことがあり,ポリカーボネート製で隙間がない保護眼鏡が有効であると推定される。

カラー臨床報告

CO2レーザーを使用した加齢性下眼瞼内反症手術

著者: 宮田信之 ,   金原久治 ,   岡田栄一 ,   水木信久

ページ範囲:P.2033 - P.2036

要約 目的:CO2レーザーによる下眼瞼の加齢内反症の治療報告。対象:過去5年間にレーザーで治療した下眼瞼に加齢内反症がある28例33眼を対象とした。男性17例,女性11例であり,年齢は59~90歳(平均76歳)であった。方法:CO2レーザーで下眼瞼縁から2mm下方で皮膚を10mm眼瞼縁に平行に切開し,眼輪筋を10×4mmの大きさで剝離した。症例に応じて眼輪筋を4~8mm短縮し,必要な場合は余剰な皮膚を切除した。結果:手術には約10分を要し,ほとんど出血がなく,術後の腫脹も少なかった。全例で眼瞼内反が改善した。結論:CO2レーザーによる下眼瞼の加齢内反症の治療は,侵襲が小さく確実な手術野が得られ有効である。

今月の表紙

ベーチェット病(前房蓄膿・フレア・セル)

著者: 内田強 ,   中澤満

ページ範囲:P.1993 - P.1993

 症例は40歳,男性。左眼のベーチェット病で4年前に初診,今回再燃で来院し前房所見をスリット撮影した。視力は右1.2(n. c.),左0.02(n. c.),眼圧は左右ともに14mmHgであった。左眼前房中に高度のフレア・セルによる混濁および前房蓄膿があり,ベーチェット病による再発性虹彩毛様体炎と診断された。

 撮影に際し注意した点は,観察は容易でも写真撮影すると写りづらいフレア・セルを,前房蓄膿などの前房内全体の所見とともに立体的に表現したことで,そのために次のように撮影条件を設定した。70度耳側から撮影するために,固視灯で患者の視線を鼻側に10度傾け,カメラを耳側に最大値の60度振り,フラッシュパワー最大・スリット長11mm・スリット幅1mmを患者の左眼に固視正面から当て,スリット光が瞳孔中心を照らすように位置を調整し撮影した。撮影機材はKowa社製フォトスリットランプSC-1200,フィルムは富士フィルムPROVIA400Fを使用した。

書評

眼科手術入門

著者: 本田孔士

ページ範囲:P.1995 - P.1995

 最近まれに見る,大変に親切な,こころの行き届いた眼科手術の入門書である。手術の心構え(皆さん,ついつい忘れていませんか)から始まり,手術環境の整備,消毒などの術前準備,手術の基本手技,基本操作,closed eye surgeryの要点,そして麻酔を扱った前半の第1部「手術の基本」が特に優れている。

 20~30年前の顕微鏡手術導入期の本には,確かにこのような記載があったが,最近の手術書に,しばしば欠けている部分である。何をやるにしても大切なのは基本である。基礎がしっかりしていないと,いくらやっても大成しない。最近の教育一般を見ても,基本に関する指導が足りないから,礼儀,挨拶などのできないような,変な社会人ができてしまう。基本は,初心者の時に,徹底的に習慣として体で覚えておかなければならない。学会で手術ビデオを見ていると,かなりアドバンストな人で,ここに書かれているような基本手技のできていない人がいる。恥ずかしいことであり,悪い癖になっていて,年季の入った人ほど修正が効かない。そのような意味で,中堅の人にも,さっと一度は目を通してもらいたい本でもある。

標準眼科学 第10版

著者: 寺崎浩子

ページ範囲:P.2021 - P.2021

 医学生,臨床研修医,眼科研修医の皆様,そしてコ・メディカル,医療関係者の皆様こんにちは。本日はここに『標準眼科学』第10版をご紹介いたします。

 本書は第1版が1981年と20数年前に出版された歴史ある眼科教科書です。私の研修医時代,本書はとにかく知りたいことがすぐ,よくわかる,従来の教科書とはちょっと違う新しいスタイルの本でした。今,20数年たち,記念すべき第10版の本書を見てその新鮮さに再び驚きました。TEXTに入る前の1ページに描かれた眼球の説明図がとても印象的です。いつも,ポリクリの学生さんや研修医が外来や手術室で脇にはさんで持っているこの本が,なぜ新鮮でわかりやすいのか考えてみました。

べらどんな

消炎薬と種の絶滅

著者:

ページ範囲:P.2003 - P.2003

 非ステロイド消炎薬,いわゆるNSAIDがかなり広く使われている。

 1899年に合成されたアスピリンがその皮切りである。NSAIDの奏効機序は一様ではないが,プロスタグランジンを抑制するものが多いようだ。

視力の値段

著者:

ページ範囲:P.2042 - P.2042

 雑誌「American Journal of Ophthalmology(AJO)」がかなり面白くなった。論文を受理してから半年以内に掲載するという速報性も嬉しいし,近着の8月号の社説Editorialで「滲出性加齢黄斑変性の治療に関する諸問題」が論じられているのも注目される。

 加齢黄斑変性では,血管内皮増殖因子vascular endothelial growth factor(VEGF)が血管新生の原因である。病巣が中心窩外ならば光凝固ができたり,進行例では新生血管膜の切除や中心窩を移動させる手術も行われたが,効果は限られていた。それがこの数年前からVEGFを抑制する薬が開発され,本症の予後が一挙に好転した。

やさしい目で きびしい目で・95

ひと言(2)

著者: 祐森弘子

ページ範囲:P.2025 - P.2025

 「見る」「視る」「観る」という役割を務める眼は,外からの情報源の90%を担っているとされる。そのため,視力や視野などが悪くなっていくと「見えなくなってしまったらどうしよう」という大きな不安がのしかかってくる。

 視力や視野を生命と考えるならば(学会でも,生命表という表現で視力・視野が論じられている),眼科でもホスピス的なことを日頃行っているのだなと思っている。「ホスピス」とは,末期患者さんの身体的苦痛を緩和することを中心に,残された時間を充実して心静かに生きることを可能にする介護の1つであり,家族もホスピスの対象に含まれるわけである。

ことば・ことば・ことば

プリン

ページ範囲:P.2029 - P.2029

 アメリカには17年に1回しか地上に出てこない蝉がいます。Magicicada septendecimが学名で,英語ではseventeen-year locustと呼びます。今年の6月にはこれが大量に姿を見せました。シカゴがあるイリノイ州が中心ですが,何億もの個体が木の幹にぎっしりとまり,それが鳴く声は120デシベルもあったといいます。

 これで2024年までは蝉の大群を見ずに済むわけではありません。この「17年蝉」にはこれ以外にも16の群があり,地域によって出現する年がずれているからです。

文庫の窓から

『霊枢』

著者: 中泉行弘 ,   林尋子 ,   安部郁子

ページ範囲:P.2070 - P.2072

漢方医学の根本経典

 『黄帝内経霊枢』略して『霊枢』は『九巻』,『鍼経』,『九霊』,『九墟』とも呼ばれていた。『黄帝内経』という書物が紀元前26年までに宮廷医,李桂園によってまとめられ,それがいつの頃か『素問』と『霊枢』という2つの書物へと再編された。その時期は明らかではないが,2世紀の初めから3世紀の中頃と考えられている。晋の皇甫謐(214-282)の『甲乙経』と唐の王冰の『黄帝内経素問』の自序(762)にもこの2つの書物のことがそれぞれ語られ,『霊枢』は『素問』と並び古来漢方医学の根本経典として知られている。

 しかし,唐末からの混乱の時代を経ると『霊枢』は散失してしまう。そこで,北宋に至って高麗より献じられた『鍼経』を『霊枢』とした(1093)。さらに南宋の世になった1155年,再び散失の危機に瀕していた『霊枢』を史崧(しすう)が新たに校正して24巻81篇として刊行する。『現代語訳 黄帝内経霊枢』(東洋学術出版社,1999)の監訳者白杉悦男氏によれば「現行の『霊枢』は全てこの史崧のテキストに基づいている」という。

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あとがき

著者: 中澤満

ページ範囲:P.2080 - P.2080

 「臨床眼科」11月号をお送りします。第61回日本臨床眼科学会が盛会のうちに終了し,今度はわれわれ編集委員が学会原著の編集作業に入る番となりました。演者の皆様にはどうか奮ってご投稿くださるようにお願いいたします。

 また,今月もいろいろな連載が順調に進んでおりますが,四元淳子,千代豪昭両氏による「眼科医のための遺伝カウンセリング技術」は今回がいよいよ最終回となりました。今回はインターネットを利用した最近の分子遺伝学のデータベースの紹介がなされています。遺伝性疾患の患者と向き合う機会の多い方には非常に有益なお話です。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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