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連載 日常みる角膜疾患・57
角膜フリクテン
著者: 川本晃司1 近間泰一郎2 西田輝夫1
所属機関: 1山口大学大学院医学系研究科情報解析医学系学域眼科学分野 2山口大学医学部眼病態学講座
ページ範囲:P.2096 - P.2098
文献購入ページに移動患 者:35歳,女性
主 訴:左眼眼痛
現病歴:2005年7月から特に誘因なく左眼の眼痛が出現した。近医眼科を受診した後に近くの総合病院眼科を受診し,点眼治療で疼痛は治癒した。9月に再度左眼眼痛が出現したため別の近医眼科を受診したが,次第に症状が増悪するために当科を紹介され受診した。
既往歴:両眼の麦粒腫(何度か繰り返している),2年前から顔面の酒皶。
家族歴:父親が糖尿病(2型)
初診時所見:視力は右1.5(n. c.),左1.0(1.2×S+2.00D()cyl-3.50D 130°),眼圧は右8mmHg,左11mmHgであった。細隙灯顕微鏡による検査では,右眼上眼瞼に麦粒腫がみられたが角膜には異常所見はなかった。左眼では眼球結膜の下方に限局性の充血がみられ,4時方向から角膜実質中層に侵入する新生血管を伴った結節性病変がみられた(図1a)。結節病変の周辺は実質性の細胞浸潤がみられ,病変部と輪部の間には透明帯はみられなかった。前房内には炎症所見はなく中間透光体および眼底には異常所見はなかった。以上の所見および全身疾患の既往はなかったことから角膜フリクテンと診断し,初診当日から抗原となる細菌を標的とした抗菌点眼薬と抗菌薬の内服を開始した。
治療経過:抗菌点眼薬と抗菌薬の内服を開始後から,左眼下方にあった眼球結膜充血は軽減したが結節性の病変自体の軽減はみられなかった。その後抗菌薬の内服は中止し,11月よりステロイド点眼薬の点眼を開始した。ステロイド点眼薬の開始とともに結節性病変部の新生血管の退縮がみられ,結節周辺の細胞浸潤も軽減した。その後も抗菌点眼薬とステロイド点眼薬を継続し,2007年8月には病変部の治癒がみられたために,点眼を中止し終診とした(図1b)。最終受診日の左眼の視力は1.2(1.5×S+0.50D)であった。
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