臨床眼科61巻6号

2007年06月発行

特集 第60回日本臨床眼科学会講演集(4) 原著

緑内障患者の身体障害者手帳の申請

著者： 久保若奈¹ 中村秋穂¹ 石井祐子¹ 南雲幹¹ 井上賢治¹ 若倉雅登¹ 井上治郎¹

所属機関： ¹井上眼科病院

ページ範囲：P.1007 - P.1011

要約　目的：緑内障による身体障害者手帳申請を調査した結果の報告と問題点の指摘。対象と方法：井上眼科病院に通院中の緑内障患者で，視覚障害による身体障害者手帳を申請した35例を調査の対象とした。申請時の等級や重複障害申請の内訳を，身体障害者診断書と意見書の控えを資料に調査した。結果：視覚障害1級と2級の申請が65％を占め，視野障害2級が最も多かった。13例が重複障害申請で，9例は補装具の給付申請を目的とした。結論：現行の視野障害認定基準は，緑内障の視野変化の特徴から視野障害の程度を評価しにくい。手帳を申請する際には，補装具を考慮して視力障害の重複障害申請を検討すべきである。

参考文献

1）中江公裕・増田寛次郎・妹尾　正・他：わが国における視覚障害の現状．厚生労働科学研究研究費補助金難治性疾患克服研究事業．網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究．平成17年度総括・分担研究報告書（3年計画の1年目）．263-267，2006

2）中江公裕・小暮文雄・長屋幸郎・他：わが国における視覚障害の現況．厚生の指標　38：13-22，1991

3）大澤秀也・初田高明：外来における視覚障害患者の検討．臨眼　51：1186-1188，1997

4）高橋　広：北九州市内19病院眼科における視覚障害者の実態調査．第1報．視覚障害者と日常生活訓練．臨眼　52：1055-1058，1998

5）谷戸正樹・三宅智恵・大平明弘：視覚障害者における身体障害者手帳の取得状況．あたらしい眼科　17：1315-1318，2000

6）伊藤　忠・田村正人・中沢　満：視覚障害をきたす原因疾患の推移．臨眼　56：1713-1718，2002

7）武居敦英・平塚義宗・藤巻拓郎・他：最近10年間に身体障害者手帳を申請した緑内障患者の背景の検討―順天堂大学と江東病院の症例から．あたらしい眼科　22：965-968，2005

8）厚生省社会・援護局更生課：視野障害認定の手引．厚生省令第29号参考資料．1995

9）眞鍋禮三：視覚障害者の認定について．眼科診療プラクティス45（開放隅角緑内障―手術への決断）：112-120，1999

10）北原健二：身体障害者福祉法．眼科　46：417-421，2004

11）東京都心身障害者福祉センター身体障害相談課：身体障害者福祉法に基づく補装具の「補装具交付意見書」作成の手引き（視覚障害編）．2004

12）田中憲児・石田みさ子・久保明夫・他：視覚障害者における補装具および日常生活用具の活用状況．臨眼　49：411-414，1995

13）坂上達志：他のロービジョン補装具の処方．眼科診療プラクティス61（ロービジョンへの対応）：50-53，2000