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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科61巻6号

2007年06月発行

文献概要

臨床報告

急速な血糖是正により網膜症が発症した若年発症2型糖尿病の1例

著者: 田岡香1 荒木里香2

所属機関: 1国立病院機構三重病院眼科 2国立病院機構三重病院内科

ページ範囲:P.1105 - P.1109

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要約 目的:急激な血糖コントロールにより網膜症が起こった若年発症2型糖尿病症例の報告。症例と経過:27歳女性が13歳のときに2型糖尿病と診断された。思春期から血糖コントロールが不良になり,19歳でインスリン治療を開始した。HbAlc値は常時10%以上で,血糖値は不安定で200~400mg/mlと高かった。検眼鏡と蛍光眼底造影で網膜症はなかった。入院加療の結果,血糖値は100mg/ml台に低下し,HbAlc値は3か月で5.6%に低下した。入院から7か月後に無数の点状と斑状出血が眼底全面に生じた。視力低下はなかったが,血管透過性が亢進し,無灌流野が出現していた。汎網膜光凝固を行い,以後1年後まで網膜症の悪化はない。結論:血糖コントロールが不良な若年者では,急激な血糖是正を契機として網膜症が発症することがあり,注意が必要である。

参考文献

1)The Diabetes Control and Complications Trial Research Group:Early worsening of diabetic retinopathy in the Diabetes Control and Complications Trial. Arch Ophthalmol 116:874-886, 1995
2)日谷光一郎・山本禎子・竹内 忍・他:急速な血糖是正により増悪したが,内科と眼科の連携により良好な結果を得た2型糖尿病の1例.糖尿病 47:447-451,2004
3)三好永利子・田村正人・松橋英昭:急速な血糖是正後の糖尿病網膜症悪化.眼紀 52:586-589,2001
4)河野泰子・枦木秀生・福森順子・他:長期間放置後の厳重な血糖コントロールにより糖尿病網膜症の増悪した1例.Diabetes Journal 5:35-39,1977
5)浜田幸子・千原悦夫:急速なインスリン治療により悪化した汎網膜光凝固の糖尿病網膜症.臨眼 50:69-72,1996
6)斉藤公子・山本禎子・日谷光一郎・他:合併症を有する管理不良糖尿病(網膜症).Modern Physician 25:255-259,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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