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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科61巻6号

2007年06月発行

文献概要

臨床報告

Soemmering's ringにより眼内レンズ偏位をきたした1例

著者: 矢舩伊那子1 植木麻理1 南政宏1 廣辻徳彦1 前野貴俊1 佐藤文平1 池田恒彦1

所属機関: 1大阪医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.1111 - P.1115

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要約 目的:Soemmering輪により眼内レンズが偏位した症例の報告。症例:31歳女性の右眼に打撲による網膜剝離が生じた。受傷から2週後に,硝子体切除,経毛様体扁平部水晶体切除,輪状締結などを行い,網膜が復位した。水晶体の前・後囊は同じ大きさの輪として残した。その1年後に眼内レンズを二次挿入して毛様体溝に固定し,裸眼0.9,矯正1.2の視力を得た。その22か月後に視力が裸眼0.2,矯正1.2になった。肥厚したSoemmering輪があり,眼内レンズの下部が前方に偏位していた。以後4か月間,眼内レンズの傾斜はやや少なくなったが,0.2の裸眼視力が続いている。結論:経毛様体扁平部水晶体切除術で前後囊を輪状に残したとき,Soemmering輪が生じ,その肥厚により囊外に固定した眼内レンズが偏位し乱視などの屈折変化が起こる可能性がある。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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