臨床眼科61巻7号

2007年07月発行

特集 第60回日本臨床眼科学会講演集(5)

原著

粘液分泌性の虹彩囊腫による続発緑内障の1例

著者： 小池智明¹ 岸章治¹

所属機関： ¹群馬大学医学部眼科学教室

ページ範囲：P.1317 - P.1319

文献概要

要約　目的：虹彩囊腫からの粘液分泌により続発緑内障が生じた症例の報告。症例と経過：14歳女児が2か月前からの右眼霧視で受診した。右眼の矯正視力は1.2，眼圧は14mmHgであったが，前房に結晶性物質を含む粘液と，虹彩前の上鼻側に破裂した虹彩囊腫があった。3か月後に眼圧が上昇し，囊腫前壁を切除した。2年後に眼圧が再上昇し，囊腫前壁を追加切除した。さらに3年後に眼圧が上昇し，囊腫を含めた虹彩全幅切除を行った。その14か月後に眼圧上昇があり，硝子体カッターで残存囊腫を切除した。以後17か月後の現在まで眼圧は安定し，視力1.2を維持している。結論：数回にわたる眼圧上昇は，虹彩囊腫からの粘液分泌によるものと解釈され，本症例では，囊腫の全切除が有効であった。

参考文献

1）Duke-Elder S：System of Ophthalmology Ⅸ. 754-775, Henry Kimpton, London, 1966

2）Shields JA, Kline MW, Augsburger J：Primary iris cysts：a review of the literature and report of 62 cases. Br J Ophthalmol　68：152-166, 1984

3）塚本英利・中野賢輔・三嶋　弘・他：虹彩囊胞の6例．眼紀　41：1195-1201，1990

4）上畑晃司・三井敏子・三木徳彦・他：自然消退した特発性虹彩囊腫の1例．眼紀　41：2001-2004，1990

5）中村　聡・今野伸介・大塚賢二：Ultrasound biomicroscopyにて発見された原発性虹彩毛様体囊胞による閉塞隅角緑内障に対しレーザー虹彩切開術が有用であった1症例．眼科　46：201-205，2004

6）岸　茂・上野脩幸・玉井嗣彦：Nd-YAGレーザー照射により消失をみた外傷性虹彩囊腫の1例．眼臨　83：227-230，1989