臨床眼科61巻8号

2007年08月発行

特集 第60回日本臨床眼科学会講演集(6)

原著

高度の眼内出血が初期症状としてみられた扁平上皮癌例での播種性血管内凝固症候群の1例

著者： 栗田加織¹ 河野剛也¹ 安宅伸介¹ 鳴美貴仁² 平山貴子³ 井上浩二⁴ 白木邦彦¹

所属機関： ¹大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学 ²大阪市立十三市民病院眼科 ³柏原市民病院眼科 ⁴永山病院眼科

ページ範囲：P.1501 - P.1504

文献概要

要約　目的：高度の硝子体出血で初発した扁平上皮癌による播種性血管内凝固症候群の症例の報告。症例：70歳女性が右眼の変視症で受診した。右眼に網膜細動脈瘤があり，そのほかに格別な病的所見はなかった。3か月後に右眼の急激な視力低下と頭痛が生じた。硝子体出血があり，眼圧は60mmHgに亢進していた。虹彩切開術が奏効せず，悪性緑内障の診断で硝子体切除を行ったが硝子体出血は軽減せず，再出血を繰り返した。頸部の画像診断でリンパ節腫大の多発があり，生検で縦隔リンパ節扁平上皮癌が発見され，播種性血管内凝固症候群と診断された。右眼の硝子体出血は発症から4か月間の現在まで持続している。結論：コントロール不能の眼内出血では，出血傾向亢進を伴う全身疾患が関係していることがある。

参考文献

1）松田　保：全身疾患に伴う凝固・線溶異常．齋藤英彦（編）：最新内科学大系21．血液・造血器疾患4，血小板・凝固・線溶異常．309-324，中山書店，東京，1992

2）狩野　廉：瞳孔ブロック・毛様体ブロック．眼科 44：1651-1656，2002

3）Simmons RJ, Lowe RF, Ritch R et al：The Glaucoma. 2nd ed. 841-855, Mosby, St Louis, 1996

4）小俣貴靖・浜中輝彦：悪性緑内障の診断と治療．眼科診療プラクティス60（難治緑内障とその対策）：42-44，2000