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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科61巻8号

2007年08月発行

文献概要

やさしい目で きびしい目で・92

恩師の言葉

著者: 清水聡子1

所属機関: 1帝京大学

ページ範囲:P.1535 - P.1535

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 小・中・高校では多分いまでも朝礼があり,校長先生のお話というのが行われているのでしょう。何十年も前のことなのに,高校時代の校長先生のお話のなかで憶えている話があります。女子高でしたから先生方もほぼすべて女性,校長先生も当時70歳くらいの女性でした。校長先生がおっしゃるには,「女性の生き方には2種類あります。いまの世代のために生きる人,次世代のために生きる人です。いまの世代に生きる人とは自分で仕事を持ち,自分が直接社会に貢献する人です。次世代に生きる人とは子供を生み育て,次の世代を背負って立つ人たちを育成することで社会に貢献する人です。あなたたちはどちらになってもいいのですよ。」という内容でした。校長先生自身は女子教育に身を捧げられ,独身を通された方でした。校長先生でありながら人前で話をするのは苦手だったそうで,必ず話す内容をレポート用紙にまとめられ,そのレポート用紙を繰りながら訥々と話される小柄な姿に生徒から「かわいー」の声があがることもしばしばでした。とはいっても,もともと化学の先生で頭は理系,話される内容は常に理路整然としていました。

 生意気盛りの高校生,皆若くて(それなりに)美しく,年配で独身の先生方をオールドミスと馬鹿にする傾向があったため,諭す意味でこのようなお話をされたのか,さまざまな道がありますよというお話どおりのことだったのか,はたまた女子高でありながら受験校であったので,結婚なんてしなくていいからいい大学に入ってバリバリ仕事をおやりなさい,ということが実は言いたかったのか,当時もいまもわかりません。校長先生の真意が何にせよ,私はふーん,どっちでもいいんだぁ,と妙に納得したのでした。専業主婦を全面否定したり,逆に女の幸せは結婚!と固執する必要はないのですね。とにかく何らかの形で社会に貢献しなくてはということが心に刻まれたのでした。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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