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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科61巻9号

2007年09月発行

雑誌目次

特集 第60回日本臨床眼科学会講演集(7) 特別講演

視神経疾患の画像診断―撮像法の工夫と臨床応用

著者: 中尾雄三

ページ範囲:P.1624 - P.1633

 視神経疾患の診療において,その病変部分は他の眼疾患と異なり直接に観察できないため,眼窩から頭蓋を描出する画像検査が重要な役割を果たしている。視神経疾患の画像検査としては1970年代にcomputerized tomography(CT),1980年代にmagnetic resonance imaging(MRI)が臨床の場に登場し,画期的な診断法の進歩をもたらした。撮像時間の短縮,解像力の強化,障害の軽減など改良と工夫が行われ,広く普及している。CT,MRIの各々の長所と限界を十分に把握して,眼科医自身がその応用を考慮し,最良の画像情報を得るよう努力する必要がある。

原著

Epipolis LASIKの初期手術成績

著者: 鳥居秀成 ,   根岸一乃 ,   佐伯めぐみ ,   山口剛史 ,   河口奈々恵 ,   坪田一男

ページ範囲:P.1635 - P.1639

要約 目的:屈折異常に対して行ったepipolis LASIKの短期成績の報告。対象:近視または近視性乱視に対してepipolis LASIKを行った14例28眼を対象とした。男性6例,女性8例であり,年齢は平均32.6±7.2歳であった。術前の屈折は-2.25D~-9.63D,乱視は0~2.5D,裸眼視力は0.032~0.2,矯正視力はすべて1.0以上であった。結果:治療から3か月後の屈折は,20眼(71%)が目標値の±0.5D以内,27眼(96%)が±1.0D以内であった。Safety indexは1.07,efficacy indexは0.80であった。術中の合併症としてフリーフラップと不完全フラップが各1眼にあり,術後には一過性のhazeが2眼にあった。重篤な術後の合併症はなかった。結論:術後3か月目の成績から,epi-LASIKは安全で有効であると判断される。ノモグラムの改良で手術成績の向上が期待できる。

続発性角膜アミロイドーシスの臨床像について

著者: 佐々木香る ,   小幡博人 ,   山田昌和 ,   宮田和典 ,   平野耕治 ,   北川和子 ,   木下茂

ページ範囲:P.1641 - P.1644

要約 目的:続発性角膜アミロイドーシスの臨床像の報告。対象と方法:6施設で細隙灯顕微鏡でアミロイド沈着が疑われ,続発性角膜アミロイドーシスと診断した20例を対象とした。結果:男性4例,女性16例で,年齢は9~85歳(平均45歳)であった。全例が片眼性に発症していた。基礎疾患として睫毛乱生が12例,コンタクトレンズを使用している円錐角膜が5例であった。これら基礎疾患は1~35年(平均18年)前からあった。細隙灯顕微鏡所見として,膠様滴状の隆起型が15例,線状の格子型が5例にあった。病変の部位は,睫毛乱生によるものは睫毛と接触する角膜下方,円錐角膜によるものは4例がコンタクトレンズと接触する角膜中央部にあった。表層角膜切除を行った9例では平均40か月の経過観察が行われ,6例で経過が良好であった。結論:続発性角膜アミロイドーシスは中年女性に多く,睫毛乱生または円錐角膜に続発し,角膜が長期間刺激される部位に発生し,隆起型または格子型を呈する。

光線力学療法の直後に視力低下した加齢黄斑変性症例の検討

著者: 窪田真理子 ,   林昌宣 ,   岡田恭子 ,   馬場隆之 ,   三田村佳典 ,   水野谷智 ,   山本修一

ページ範囲:P.1645 - P.1647

要約 目的:加齢黄斑変性に対して光線力学療法を行い,その直後に視力が低下した症例の報告。対象:過去23か月間に光線力学療法を行った加齢黄斑変性189例191眼のうち,その1週間以内に矯正視力がlogMAR換算で0.2以上低下した18例19眼(9.7%)を対象とした。結果:平均logMAR視力は,加療前0.65,1週間後1.11,3か月後0.82で,7眼では加療前の視力以下であった。視力低下の原因は,照射部位の脈絡膜循環障害10眼,網膜下液の増加9眼,出血増加7眼,広範な黄斑下血腫1眼であった。結論:光線力学療法を行った加齢黄斑変性で,その直後に急激な視力低下が約10%の症例で起こった。視力低下は一過性のことが多いが,永続する例があり,注意が必要である。

加齢黄斑変性の視力不良例に行った光線力学的療法の治療成績

著者: 長央由里子 ,   高橋寛二 ,   永井由巳 ,   正健一郎 ,   有澤章子 ,   津村晶子 ,   松村美代

ページ範囲:P.1649 - P.1652

要約 目的:視力が不良な加齢黄斑変性に対する光線力学的療法の結果の報告。対象:過去2年間にPDTを行った術前視力が0.1未満の加齢黄斑変性68例68眼を対象とした。狭義の加齢黄斑変性は54眼,ポリープ状脈絡膜血管症は14眼であった。結果:術前視力の平均は0.037であり,治療12か月では0.044であった。視力をIogMARに換算し,0.3以上の上昇を改善とするとき,視力改善率は34%であり,不変と合わせた視力維持率は66%であった。平均視力の改善は,ポリープ状脈絡膜血管症でより良好であった。結論:視力が0.1未満の加齢黄斑変性に対しても,光線力学的療法は視力改善または維持に有効である。

網膜剝離手術後の復位網膜の光干渉断層像と視機能

著者: 柴田佐和子 ,   小池智明 ,   岸章治

ページ範囲:P.1653 - P.1658

要約 目的:手術により剝離網膜が復位した後の,視機能と光干渉断層像(OCT)の報告。対象と方法:硝子体手術で復位した裂孔原性網膜剝離3眼を対象とした。男性2例と女性1例であり,年齢はそれぞれ49,52,63歳であった。3眼とも網膜剝離は中心窩を含み,視力低下を自覚してから,それぞれ2週,4日,2週が経過していた。術直前の視力は,0.05,0.03,0.06であった。結果:4~15か月の経過観察で,3眼とも1.2の最終視力を得た。OCTで,視細胞内節と外節の接合部は,2眼では観察されず,手術の3週後に部分的に観察可能になった。1眼では手術の9か月後に初めてOCT検査が行われ,初回からこの接合部が観察された。視力が回復し,この接合部が観察可能になっても,多局所網膜電図による中心窩の応答密度は低下したままであった。結論:剝離網膜が復位しても,術後早期では視細胞外節の変性が続く。外節が部分的に再生し,視力が回復しても,多局所網膜電図による中心窩の応答密度は短期間では回復しない。

ミエロペルオキシダーゼ抗好中球細胞質抗体関連血管炎に合併したサイトメガロウイルス網膜炎と考えられた1例

著者: 冨山隆一 ,   西田朋美 ,   永山嘉恭 ,   岩崎滋樹 ,   水木信久

ページ範囲:P.1659 - P.1663

要約 目的:ミエロペルオキシダーゼ抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)関連血管炎患者に併発したサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎の報告。症例:67歳女性が両眼の視力低下で受診した。8か月前に肺胞出血と半月体形成腎炎を伴うMPO-ANCA関連血管炎と診断され,副腎皮質ステロイドと免疫抑制剤を内服中であった。所見:矯正視力は右0.6,左0.8であり,左眼眼底の下方に出血を伴う白色滲出性病変があった。左眼CMV網膜炎を疑い,ガンシクロビルの全身投与を開始した。左眼の滲出性病変は消退し,3週間後には右1.2,左1.0の視力に改善した。以後6か月後に脳内細菌性膿瘍で死亡するまで網膜炎の再発などはなかった。結論:本症例は,MPO-ANCA関連血管炎にCMV網膜炎が併発した初めての報告である。長期間の副腎皮質ステロイドと免疫抑制剤の全身投与がCMV網膜炎の原因になった可能性がある。

著明な囊胞状涙囊炎に対し経鼻的涙囊鼻腔吻合術を施行した10例

著者: 福地麗 ,   野瀬明日香 ,   矢部比呂夫

ページ範囲:P.1665 - P.1668

要約 背景:顕著な囊胞状涙囊炎がある鼻涙管閉塞症には経皮的涙囊鼻腔吻合術が一般的な手術法であった。しかし膿が貯溜し炎症が強い涙囊部に切開を行うことは,侵襲が強く,癒着や炎症が遷延化しやすい。目的:重篤な囊胞状涙囊炎に対する経鼻的涙囊鼻腔吻合術の報告。症例:過去4年間に経鼻的涙囊鼻腔吻合術を行った10例で,すべて片側に発症していた。男性1例,女性9例で,年齢は54~92歳(平均65歳)である。結果:6か月以上の経過観察で,涙囊炎は全例で改善し,再発はなかった。涙囊圧亢進が原因と推測される涙小管閉塞が5例に残った。結論:症例によっては顕著な囊胞状涙囊炎があっても,涙囊圧を管理して手術操作を行えば,経鼻的涙囊鼻腔吻合術は施行可能かつ有効である。

レーザースペックルフローグラフィが診断に有用であった眼虚血症候群の1例

著者: 鹿嶋友敬 ,   岸章治

ページ範囲:P.1669 - P.1675

要約 目的:レーザースペックルフローグラフィ(LSFG)で眼虚血症候群が診断できた症例の報告。症例:左内頸動脈の完全閉塞がある64歳男性が左眼視力低下で受診した。矯正視力は右1.2,左0.07であり,視力障害を説明できる眼底病変はなかった。既往から眼虚血症候群を疑い,LSFGを行った。カラーマップで明らかな左右差があり,眼底の各部位で患眼の血流量が低下していた。平均年齢50歳の健常者18人36眼にLSFGを行い,左右差はなかった。結論:主に脈絡膜の循環動態を非侵襲的に表示するLSFGは,網膜と脈絡膜の血流が低下する眼虚血症候群の診断に有用である。

黄体・卵胞ホルモン配合剤投与後に失明したBehçet病の1例

著者: 関向大介 ,   安積淳 ,   根木昭

ページ範囲:P.1677 - P.1680

要約 目的:薬剤投与がBehçet病の大発作を誘発したと考えられる1例を報告する。症例:2004年6月4日に神戸大学病院眼科を初診した51歳女性は,15年来のBehçet病の既往があった。初診時視力は右光覚なし,左矯正0.3であった。経過中に大発作を起こし左眼も光覚なしとなった。発作の2週間前より,婦人科医院にて黄体・卵胞ホルモン配合剤を処方されていた。同配合剤は血栓性静脈炎の既往のある患者には禁忌であった。所見:発作直後は硝子体混濁が強かった。硝子体混濁軽快後,視神経は蒼白で,網膜血管は高度に白鞘化していた。結論: Behçet病患者に対する黄体・卵胞ホルモン配合剤の危険性を周知する必要がある。

眼瞼に発生した多形腺腫

著者: 辻英貴 ,   小島孚允 ,   田村めぐみ ,   野田康雄 ,   髙澤豊

ページ範囲:P.1681 - P.1684

要約 目的:眼瞼に発症した多形腺腫2症例の報告。症例と所見:症例はいずれも男性で,年齢は51歳と64歳である。いずれも片眼に発症し,1例では上眼瞼,1例では下眼瞼に腫瘍があった。1例では過去20年間に4回の腫瘍切除を同一部位に受けていた。2例とも腫瘍切除術が行われ,病理学的に多形腺腫と診断された。切除された断端には腫瘍がなく,陰性であった。2例とも6か月および18か月の経過観察で腫瘍の再発はない。結論:多形腺腫は涙腺部に好発するが,眼瞼にも発症することがあり,眼瞼腫瘍の鑑別で留意する必要がある。

井上眼科病院における身体障害者手帳の申請

著者: 引田俊一 ,   井上賢治 ,   南雲幹 ,   石井祐子 ,   若倉雅登 ,   井上治郎

ページ範囲:P.1685 - P.1688

要約 目的:視覚障害による身体障害者手帳を申請した症例の特徴の報告。対象:2005年の1年間に,東京にある井上眼科病院を通じて視覚障害による身体障害者手帳を申請した156名を検索の対象とした。結果:男性79例,女性77例で,年齢は11~96歳(平均62歳)であった。疾患の内訳は,緑内障36例(23%),網膜色素変性27例(17%),黄斑変性19例(12%),網脈絡膜萎縮17例(11%),視神経症15例(10%)などであった。緑内障と視神経症では女性よりも男性,網脈絡膜萎縮と糖尿病網膜症では男性よりも女性の比率が優位に高かった。該当等級は1級と2級を合せると91例(58%)であった。結論:視覚障害による身体障害者手帳を申請した原因疾患は多岐にわたっていた。等級は重症例が多かった。

産業医科大学病院における最近10年間の未熟児網膜症の検討

著者: 森田啓文 ,   久保田敏昭 ,   西尾陽子 ,   田原昭彦

ページ範囲:P.1689 - P.1693

要約 目的:過去10年間に当院で発症した未熟児網膜症の報告。対象と方法:2005年までの10年間に産業医科大学病院の新生児集中治療室に入院し,眼底検査を受けた生下時体重1,500g以下の217例を対象とした。在胎期間は22~36週(平均29週)であり,出生体重は440~1,492g(平均1,071g)であった。結果:未熟児網膜症の発症率は70.5%,治療を要した症例は22.5%であり,在胎期間が短く,出生体重が低いほど,発症率と要治療率が高かった。短い在胎週数,低い出生体重,Apgarスコアの1分と5分値,無呼吸発作,呼吸窮迫症候群,人工呼吸管理,脳室内出血,輸血のいずれもが発症因子であった。短い在胎週数,低い出生体重,Apgarスコアの1分と5分値,脳室内出血,輸血のいずれもが重症化因子であった。結論:出生体重が1,500g未満の新生児では,未熟な児ほど未熟児網膜症の発症率と要治療率が高かった。

透析前後の眼球計測値の変化

著者: 大萩豊 ,   松浦豊明 ,   岡本全弘 ,   桝田浩三 ,   原嘉昭

ページ範囲:P.1695 - P.1698

要約 目的:血液透析前後の眼球計測値の変化の報告。対象と方法:慢性腎炎に対し1年以上前から血液透析を受けている10例20眼を対象とした。男性4名,女性6名であり,年齢は平均60±8歳である。眼圧は非接触眼圧計,眼球の形状はPentacam(R)で測定した。結果:眼圧には透析前後で有意な差はなかった。角膜曲率半径は,強主経線と弱主経線ともに変化せず,中心角膜厚にも変化はなかった。前房深度は透析前2.96±0.71mm,透析後2.88±0.72mmで有意に減少した。前房容積は透析前152.2±49.4μm3,透析後135.2±34.5μm3で有意に減少した。結論:前房深度と前房容積が透析後に減少した原因として,透析中に水が眼内から眼外に移動した可能性がある。

アベリノ角膜ジストロフィに対するレーザー屈折矯正角膜切除術後の白内障手術における屈折誤差

著者: 髙木誠 ,   陶山洋志 ,   中村護 ,   藤原りつ子

ページ範囲:P.1699 - P.1703

要約 目的:アベリノ角膜ジストロフィに対するエキシマレーザー屈折矯正角膜切除術(PRK)施行後,白内障手術を行った症例での術後屈折誤差についての検討。対象と方法:対象は17例30眼。3種類の角膜屈折力(SimK・ring 3・True Net Power)と3種類の眼内レンズ(IOL)計算式(SRKⅡ・SRK/T・Holladay 1式)を用いて9通りの予測屈折値を算出し,術後屈折値との差を屈折誤差として比較した。結果:屈折誤差の平均値が最小であったのはTrue Net PowerとHolladay 1式の組み合わせで-0.26±1.31D,ばらつきが最小であったのはring 3とSRK/T式の+2.31±0.47Dであった。結論:PRK後のIOLの算定は,現時点ではring 3とSRK/T式の組み合わせを使用し,屈折誤差を参考にIOL度数を補正する方法が最良であることが示された。True Net Powerは,今後測定法を改良することで臨床応用が期待される。

従来の抗真菌薬に抵抗を示した角膜真菌症に対しボリコナゾールが有効であった1例

著者: 松永次郎 ,   山本昇伯 ,   熊谷直樹 ,   門田遊 ,   山川良治

ページ範囲:P.1705 - P.1709

要約 目的:新しいアゾール系抗真菌薬ボリコナゾールが奏効した角膜真菌症の症例の報告。症例:農作業中に32歳男性の右眼に異物が飛入した。3日後に眼科を受診し,角膜潰瘍と診断されたが軽快せず,その6日後に当科を受診した。4年前から糖尿病があった。所見と経過:視力は右1.2,左1.5であり,右眼の角膜に3mm径の潰瘍と浸潤があり,前房に強い炎症所見があった。角膜擦過物から糸状菌が検出され,フルコナゾールの点眼,ミコナゾールの点眼と点滴を行ったが病状は悪化し,12日後に右眼視力が0.05に低下した。角膜擦過物からAspergillus fumigatusが同定され,ボリコナゾールの点眼と点滴に変更した。角膜潰瘍と前房内炎症は軽快し,変更から22日後に視力は0.2に改善した。ボリコナゾールは3か月後に中止し,視力は1.5になった。結論:ボリコナゾールは角膜真菌症に対する治療の選択肢となり得る。

水晶体囊,硝子体,毛様体に霜降り状混濁がみられた1例

著者: 中茎敏明 ,   林暢紹 ,   小浦裕治 ,   矢生健一 ,   福島敦樹 ,   上野脩幸 ,   藤田善史

ページ範囲:P.1711 - P.1714

要約 目的:水晶体囊,前部硝子体,毛様体に多数の白色顆粒がある症例の報告。症例:65歳女性が左眼の霧視で受診した。霧視は3か月前からあり,5週間前に左眼に白内障手術を受けたが霧視は続いていた。所見:矯正視力は右1.0,左1.2であり,左眼には囊内に固定された眼内レンズがあった。右眼には格別の異常がなく,左眼には後囊の後面,前部硝子体,硝子体基底部,毛様体全周に白色顆粒状物質が霜降り状に沈着ないし浮遊していた。前房と隅角には異常がなかった。全身検査では異常がなく,試験切除した硝子体の細菌と真菌学的検査は陰性であった。この白色物質は通常の光顕と電顕標本作成法ではアルコール系では溶出して同定できなかったが,凍結切片では顆粒状と小管状構造物の集塊であった。結論:水晶体囊,硝子体,毛様体に出現した霜降り状の白色顆粒は何らかの脂肪複合物と推定される。

眼内レンズの交換が必要であったぶどう膜炎の1例

著者: 松下恵理子 ,   小浦裕治 ,   西野耕司 ,   中茎敏明 ,   福島敦樹 ,   上野脩幸 ,   矢生健一

ページ範囲:P.1715 - P.1718

要約 目的:内因性ぶどう膜炎で炎症のため眼内レンズを要した症例の報告。症例:61歳女性が3か月前からの両眼のぶどう膜炎で受診した。矯正視力は右0.2,左1.2であった。副腎皮質ステロイドの点眼を行ったが,硝子体混濁は増悪した。4か月後に左眼視力が0.5になったため,硝子体手術,水晶体摘出,眼内レンズ挿入を行った。硝子体の細胞診で悪性リンパ腫は否定され,視力は1.2に改善した。眼内炎は持続し,眼内レンズの前後面に炎症性物質が付着し,左眼視力が0.07に低下したために,初回手術から1年後に眼内レンズ交換術を行い,視力は1.0になった。摘出した眼内レンズには多核巨細胞と多数のマクロファージが付着していた。結論:ぶどう膜炎で眼内レンズに炎症性物質が付着した場合には,慎重に副腎皮質ステロイド点眼を漸減する必要がある。

病理学的に眼瞼カポジ肉腫と診断できたHIV感染症の1例

著者: 植村明弘 ,   武田憲夫 ,   八代成子 ,   西桂 ,   水野嘉信 ,   白戸勝 ,   田沼順子 ,   笹尾ゆき

ページ範囲:P.1719 - P.1723

要約 目的:組織学的に眼瞼のカポジ肉腫と診断できたAIDS患者の報告。症例:43歳男性がアメーバ性肝膿瘍を契機として,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体が陽性であることが判明し,精査のため眼科を受診した。所見と経過:頸部と鼠径部にリンパ節腫大があり,生検でカポジ肉腫と診断された。薬物投与でリンパ節腫大は消退した。初診から2か月後に右の下眼瞼に暗赤色腫瘍が生じ,薬物療法に反応しないためその4か月後に全摘出した。大きさは14×12mmで,病理学的にHHV-8の潜伏感染タンパクが検出され,カポジ肉腫と診断された。以後9か月間,眼瞼腫瘍の再発はない。結論:薬物療法で軽快しない眼瞼のカポジ肉腫に対し,生検を兼ねた切除は有効であった。

黄斑円孔術後早期に円孔が再開した1例

著者: 調枝聡治 ,   河野博文 ,   谷村真知子 ,   木許賢一 ,   高木康宏 ,   中塚和夫

ページ範囲:P.1725 - P.1728

要約 目的:黄斑円孔に対する硝子体手術後の早期に円孔が再発した1例の報告。症例:72歳男性が左眼黄斑円孔で紹介され受診した。矯正視力は右0.5,左0.04であり,左眼にGassの第3期に相当する0.5乳頭径大の黄斑円孔があった。硝子体手術と水晶体摘出術,眼内レンズ挿入術を行い,トリアムシノロン注入で後部硝子体剝離を作製した後,内境界膜を剝離し,液空気置換をした。4日後に円孔が閉鎖していたが,その2日後に円孔が再開した。さらに内境界膜剝離を追加し,液空気置換を行った。円孔は閉鎖し,以後1年間再発はなく,視力0.2を維持している。結論:黄斑円孔に対する手術後に,非閉鎖とされていたものには,円孔がいったん閉鎖し,早期に再発した例が含まれている可能性がある。

内境界膜剝離と重症例ではシリコーンオイル充填を併用した高度近視黄斑円孔網膜剝離の手術成績

著者: 野入聡睦 ,   櫻井真彦 ,   村上仁司 ,   佐藤浩介 ,   佐谷充 ,   河井信一郎

ページ範囲:P.1729 - P.1733

要約 目的:高度近視黄斑円孔網膜剝離では,硝子体手術で内境界膜を剝離し,硝子体腔にC3F8ガスを充填しても再剝離する症例がある。これに対するシリコーンオイルタンポナーデの効果を検討した。症例と方法:過去46か月間に手術を行った黄斑円孔網膜剝離14例14眼を対象とした。年齢は55~88歳(平均66歳)であり,後部ぶどう腫が全例にあった。眼軸長は26.75~31.18mm(平均28.79mm)であった。硝子体切除の後,後部硝子体皮質ならびに内境界膜を剝離除去した。軽症例6眼にはC3F8,重症例8眼にはシリコーンオイルを硝子体腔に充填した。結果:14眼すべてで初回復位が得られた。結論:本症では,内境界膜を剝離したのち,シリコーンオイルタンポナーデを行うことで,高率に初回復位が得られる可能性がある。

硝子体手術中に網膜下空気迷入をきたした網膜剝離併発ぶどう膜欠損症の1例

著者: 家久来啓吾 ,   佐藤孝樹 ,   南政宏 ,   石崎英介 ,   前野貴俊 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.1735 - P.1738

要約 目的:ぶどう膜欠損に併発した網膜剝離に対する硝子体手術中に,網膜下に気体が迷入した症例の報告。症例:両眼にぶどう膜欠損があり,小角膜で水平性の律動眼振がある47歳女性の左眼に網膜剝離が発症した。所見と経過:網膜剝離は全象限に及ぶ胞状であった。硝子体手術を行い,術中所見として網膜裂孔が脈絡膜欠損内と赤道部の健常網膜部位にあることが確認された。硝子体切除後に気圧伸展網膜復位を行った際に,脈絡膜欠損内の裂孔から網膜下に気体が迷入し,上方の裂孔から硝子体腔内に排出された。結論:脈絡膜欠損部位にある裂孔は周囲の硝子体切除が不完全になりがちで,網膜の伸展性が低下している。このために気圧伸展網膜復位を行う際に気体が迷入する危険があり,注意が必要である。

連載 今月の話題

原発閉塞隅角緑内障に対する白内障手術

著者: 栗本康夫

ページ範囲:P.1585 - P.1592

 かつて緑内障眼に対する白内障手術といえば,手術侵襲による眼圧コントロールへの悪影響をいかに抑えるか,あるいは緑内障合併のために難易度が高くなった白内障手術をいかに安全に遂行するかという観点から議論されることが多かった。特に閉塞隅角緑内障症例では,浅前房,脆弱なチン小帯,消耗した角膜内皮,ピロカルピン長期点眼による小瞳孔や瞳孔後癒着などのため,白内障手術の難易度が高いことが大きな問題とされた。しかし,今日,原発閉塞隅角症あるいは同緑内障に対する白内障手術は,閉塞隅角の治療的観点から議論されるように大きく様変わりした。すなわち,高度に洗練され安全性を飛躍的に高めた現代のPEA+IOL(水晶体乳化吸引術+眼内レンズ挿入術)を原発閉塞隅角の治療に積極的に適用しようというものである。

日常みる角膜疾患・54

角膜移植後の問題点―創哆開

著者: 森重直行 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.1594 - P.1596

症例

 患者:16歳,女性

 現病歴:15歳時,左眼の円錐角膜に対し,全層角膜移植を受けた。術後3か月時,犬が顔面に飛びかかり左眼部を受傷,急激な視力低下と流涙を自覚したため当院を受診した。

 受診時の左眼視力は手動弁であった。角膜移植時の縫合糸は9時から3時にかけて半周断裂し,創が哆開して前房は消失(図1),角膜の哆開創に硝子体が陥頓していた。水晶体は透見できなかった。緊急入院のうえ,全身麻酔下で左眼の角膜縫合術,前部硝子体切除術を施行した。術中・術後,感染兆候や網膜剝離などの合併症を認めなかった。

 受傷後6年を経過しているが移植片は透明性を維持し,視力はハードコンタクトレンズによる矯正で(1.5)である(図2)。

公開講座・炎症性眼疾患の診療・6

間質性腎炎ぶどう膜炎症候群

著者: 合田千穂 ,   北市伸義 ,   大野重昭

ページ範囲:P.1598 - P.1601

はじめに

 特発性の急性尿細管間質性腎炎にぶどう膜炎を合併した疾患を,間質性腎炎ぶどう膜炎症候群(tubulointerstitial nephritis and uveitis syndrome:TINU症候群)と呼ぶ。1975年Dobrinら1)により急性好酸球性間質性腎炎に前部ぶどう膜炎と骨髄肉芽腫を伴った2症例が初めて報告された。北海道大学眼科ぶどう膜炎外来では10~15歳の小児ぶどう膜炎の7.2%を占め,サルコイドーシスに次ぐ第2番目の頻度である2)

網膜硝子体手術手技・9

糖尿病黄斑浮腫

著者: 浅見哲 ,   寺崎浩子

ページ範囲:P.1602 - P.1609

はじめに

 糖尿病黄斑浮腫の硝子体手術は,光沢のある肥厚した後部硝子体膜を伴う症例に対する手術成績が1992年にLewisら1)によって報告されてから盛んに行われるようになった。それ以降,後部硝子体剝離(posterior vitreous detachment:以下,PVD)の起きていない眼に,PVDを作製して視力向上や浮腫軽減に効果があったという報告2~4)や,PVDがすでに起きている眼に単純硝子体切除を行っても改善効果があったという報告5,6)があり,硝子体手術自体が黄斑浮腫の改善に効果があるということは共通した見解である。

 内境界膜剝離を併用した硝子体手術は,1999年に矢那瀬ら7)により報告されてから行われるようになったが,浮腫は改善するものの視力は硝子体手術単独と比べ有意な改善は得られないという報告が多い8~10)。しかし,内境界膜を電子顕微鏡で観察すると,糖尿病網膜症眼では肥厚し,その表面の硝子体皮質の残存,fibrous astrocyteや線維芽細胞などの細胞成分の付着がみられ11,12),内境界膜を剝離することはそれらの物質も同時に除去し増殖の場を除去するという点で意味のあることと思われる13)

 一方最近では,抗VEGF抗体であるベバシズマブ(アバスチン(R))は2006年に虹彩血管新生や硝子体出血に対しての臨床応用が報告14,15)されてから盛んに行われるようになった。また,その血管透過性抑制作用を期待して糖尿病黄斑浮腫にも応用されている16)

 また,薬物療法として硝子体手術に代わる可能性があるものの1つにプラスミンがある。プラスミンは非特異的蛋白分解酵素であり,後部硝子体膜と網膜との間の橋渡しをしているラミニン,フィブロネクチンなどを分解することでPVDを起こす働きがある17~19)。今後は薬物療法が趨勢になってくるかもしれない。

 本稿では,糖尿病黄斑浮腫に対する標準的な治療法である硝子体手術に内境界膜剝離を併用した手術手技について詳述する。

眼科医のための遺伝カウンセリング技術・11

遺伝カウンセリングと倫理問題(2)

著者: 千代豪昭

ページ範囲:P.1611 - P.1622

はじめに

 前回の連載でビーチャムとチルドレスの原理・原則主義を紹介し,医療現場における倫理的課題の分析方法について述べた。倫理規範は,人間が社会生活を行うために善悪を基準に決めた基本的なルールに過ぎないと割り切って話を進めたので,「倫理」という言葉のなかに崇高な人間性とか道徳性を重視する読者には抵抗を感じられた方もおられたのではないかと思う。しかし,倫理学を背景とした理論や分析方法が,医療現場における医療従事者の現場判断に少しでも役立つことがご理解いただけたら幸いである。

 今後,先端科学はますます発達するだろう。先端科学がわれわれの社会にどのような影響を与えるか,厳密な将来予測が大切である。倫理学は先端科学の将来予測を行うツールとしても有用であるというのが筆者の主張である。20世紀になって発達した応用倫理学の一分野である生命倫理学は生命科学,特に医療科学を主な舞台として発達してきた。遺伝医療の現場では生命倫理学で議論される材料に日常茶飯事のように遭遇する。遺伝カウンセラーは毎日のように倫理的課題に直面しているのである。

 今回の連載では日常の事例から倫理分析の実際を紹介したい。なお,事例の紹介については個人情報保護の立場から,個人データを一部変えてあることをお断りしておきたい。

臨床報告

増殖糖尿病網膜症手術後の良好な視力予後に関連する因子の検討

著者: 中野早紀子 ,   山本禎子 ,   山下英俊

ページ範囲:P.1747 - P.1753

要約 目的:増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術の視力転帰に関連する因子の検討。対象と方法:増殖糖尿病網膜症に対して初回硝子体手術を行った55例64眼を対象とした。男性47眼,女性17眼であり,年齢は24~84歳(平均56歳)であった。同時手術として,超音波乳化吸引術を40眼,眼内レンズ挿入を37眼,ガスタンポナーデを22眼,眼内レンズ光凝固を56眼に行った。成績は手術後6か月で判定した。結果:0.5以上の視力は,術前には2眼(3%),術後22眼(34%)であり,有意差があった。術後視力0.5以上と有意に関連する術前因子は,後部硝子体剝離があること,網膜剝離がないこと,インスリン治療を行っていることであった。結論:増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術の良好な視力転帰に関連する術前因子は,後部硝子体剝離があること,網膜剝離がないこと,インスリン治療を行っていることである。

各象限で異なった多局所視覚誘発電位を示した視神経炎の1例

著者: 湯川英一 ,   太田麻美子 ,   上田哲生 ,   新田進人 ,   原嘉昭

ページ範囲:P.1755 - P.1759

要約 目的:象限により異なった多局所視覚誘発電位(mfVEP)を示した症例の報告。症例と方法:左眼の眼球運動痛と視力低下で60歳男性が受診した。矯正視力は右1.2,左0.5であり,3日後に左眼視力が0.05に低下した。副腎皮質ステロイドの全身投与などで7か月後に左眼視力は1.5に回復した。急性期と回復期にmfVEPを測定し,象限毎の違いを検索した。各象限のmfVEPの正常値として,正常者20例20眼での値を採用した。結果:急性期の自動視野計による視野測定で,感度低下が軽度な象限でも,mfVEPでは明らかな反応低下があった。回復期で視野低下が回復した象限でも,mfVEPで潜伏時が延長していた。急性期に感度低下が軽度であった象限では,mfVEP反応が回復していた。結論:mfVEPを使うことで,視神経炎に対する治療効果の判定と,周辺部視野での新規な視機能評価が可能である。

Clostridium perfringensによる内因性全眼球炎の1例

著者: 高橋明子 ,   鈴木善久 ,   杉田糾 ,   浅見哲 ,   杉田二郎 ,   寺崎浩子

ページ範囲:P.1761 - P.1765

要約 目的:Clostridium perfringensによる内因性全眼球炎の症例の報告。症例と経過:87歳女性が4日前からの心窩部痛と嘔吐,2日前からの左眼視力障害と眼痛で受診した。矯正視力は右0.4,左光覚なしであり,眼圧は右12mmHg,左56mmHgで,急性閉塞隅角緑内障と診断し,レーザー虹彩切開術を行った。翌日前房出血が生じ,CT検査で硝子体内にガス像が認められた。全身検査で胆囊炎と肝膿瘍が発見された。内科治療で全身状態は改善したが,受診の4日後に角膜が穿孔し,眼球内容除去術が行われた。眼球内容物から嫌気性グラム陽性桿菌であるC. perfringensが検出された。結論:眼内にガス像が見られるときには,ガス壊疽の原因でもある本菌による感染症の可能性がある。

今月の表紙

視神経乳頭黒色細胞腫

著者: 加藤美千代 ,   大野重昭

ページ範囲:P.1593 - P.1593

 症例は38歳,女性。1998年5月に右眼の視力低下により近医を受診後,右眼の乳頭黒色細胞腫疑いで当科を紹介され受診した。視力は右0.08(0.8),左0.2(1.0),眼圧は正常で左右差なし,前眼部,中間透光体,網膜も右眼の視神経乳頭以外は異常がみられなかった。眼底検査で右視神経乳頭を中心に2乳頭径大の黒褐色腫瘍性病変がみられた。その中心には乳頭陥凹部に相当すると考えられる部位に,1乳頭径大の網膜視神経に被覆されず硝子体膜に露出した部分が存在した。乳頭部周囲の浮腫,出血,細胞浸潤など炎症性病変は認められなかった。CTおよびMRIでは視神経,眼窩に異常を認めなかった。ゴールドマン視野検査では上鼻側,下鼻側,下耳側に楔状の求心性視野狭窄がみられた。

 以上より,良性黒色細胞腫として眼底写真,光干渉断層法,ゴールドマン視野検査で経過観察を行っているが,初診後8年経過した2006年でも,黒色細胞腫の拡大,浸潤は認められず,視力,視野も不変であった。

 撮影は興和社製の眼底カメラVX-10iを用い画角35度で行った。薄い網膜に覆われている腫瘍を「くるみ」の模様をイメージしながら,立体感がわかるように表現した。

べらどんな

目の保養

著者:

ページ範囲:P.1633 - P.1633

 ヨーロッパの都市ではフィレンツェが好きだが,ウィーンにも10回以上は行った。伝統がある古い町なのに,新しいものが次々と育っていくからである。モーツァルトもベートーベンもシューベルトもブラームスも,その当時は人々がびっくりする革新的な作曲家であった。

 美術でも事情が似ている。19世紀から20世紀に移る時期が世紀末であり,アール・ヌーボー「新芸術」もこの頃に登場した。ドイツ文化圏では,これはJugendstil「青春の手法」と呼ばれている。

書評

骨・関節X線写真の撮りかたと見かた 第7版

著者: 片山仁

ページ範囲:P.1663 - P.1663

 ひとつの著書が第7版まで版を重ねることは,最近の医学関連の出版物にあってはそう多いことではない。本書を利用する人が多く,期待が高いことを物語っている。

 本書は国内に限らず近隣諸国で翻訳されて利用されていると聞いている。本書は堀尾重治氏の努力の結晶であるとの一言に尽きるが,当然,版を重ねるにしたがって充実してきている。第7版ではMRIに関する記述がさらに追加されている。骨格系のMRIとなれば当然,脊椎・関節に重点が置かれる。第7版では特に脊椎に関する記述が充実しており,病的画像所見や臨床症状が要領よくまとめられている。堀尾氏は卓越した放射線技師長であった人であるが,本書をこのレベルまで引き上げた努力は並大抵のものではなかったはずである。その努力と勇気が内容に表れている。心から敬意を表したい。

やさしい目で きびしい目で・93

視覚障害リハビリテーション

著者: 内田まり子

ページ範囲:P.1739 - P.1739

 私は現在,視覚障害リハビリテーション(以下,視覚障害リハ)ワーカー(視覚障害生活訓練指導員)として財団法人日本盲導犬協会仙台訓練センターに勤務しています。当センターでは,盲導犬育成貸与事業および東北地域での視覚障害リハ事業を展開しています。

 視覚障害リハとは,大まかにいえば,見えない,あるいは見えにくいことによって生じた日常生活の困難を,他の手段を使って解決しようという訓練です。日常生活全般にかかわる訓練ですから,その内容は多岐に渡ります。机に置いた物を効率よく,さりげなく探す方法や,コーヒーに砂糖をこぼさずに入れる方法,安全な包丁操作,調理方法などもあります。操作ボタンが平らな家電製品には,凹凸のあるシールを貼るだけで,見えなくても一人で操作できます。音声で画面を読みあげるパソコン,携帯電話もあります。文字データをバーコード化して読み取る道具もあります。白杖を利用することで,転落や衝突を防いで,安全に歩行できます。また盲導犬との歩行も,視覚障害リハの1つです。

ことば・ことば・ことば

略語は危険

ページ範囲:P.1743 - P.1743

 略語が氾濫しています。きっかけはNHKらしいのですが,NEC, NTT, NTV, NGO, NOX, NMJ, NCT, NVDなどなど,いくらでも続けられます。

 いくつかの単語の頭文字を並べて作った略語のことをacronym「頭字語」といいます。眼科でも例が多く,laser, IOL, AMD, LASIKなどがそれです。

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あとがき

著者: 大野重昭

ページ範囲:P.1780 - P.1780

 厳しい残暑もようやく終わりを告げ,しのぎやすい毎日となりました。異常気象のせいで最近は四季の移り変わりにも微妙な変化がみられます。学会シーズンの秋に猛烈な台風の本土上陸がないよう,心から祈りたいと思います。

 学会といえばその昔はスライドもない時代で,すべてがポスターによる発表だったそうです。大きな紙に手書きで発表内容を記載し,それを大事に学会会場まで運んで講演したようです。それが今では自分で簡単に発表スライドをコンピュータで作れるようになりました。また,スライドの変更や追加も簡単にすぐできるため,一夜漬けどころか1時間前にあわてて完成させても発表に間に合う時代です。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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