今月の表紙
視神経乳頭黒色細胞腫
著者:
加藤美千代1
大野重昭2
所属機関:
1宮田眼科病院
2北海道大学大学院眼科学
ページ範囲:P.1593 - P.1593
文献購入ページに移動
症例は38歳,女性。1998年5月に右眼の視力低下により近医を受診後,右眼の乳頭黒色細胞腫疑いで当科を紹介され受診した。視力は右0.08(0.8),左0.2(1.0),眼圧は正常で左右差なし,前眼部,中間透光体,網膜も右眼の視神経乳頭以外は異常がみられなかった。眼底検査で右視神経乳頭を中心に2乳頭径大の黒褐色腫瘍性病変がみられた。その中心には乳頭陥凹部に相当すると考えられる部位に,1乳頭径大の網膜視神経に被覆されず硝子体膜に露出した部分が存在した。乳頭部周囲の浮腫,出血,細胞浸潤など炎症性病変は認められなかった。CTおよびMRIでは視神経,眼窩に異常を認めなかった。ゴールドマン視野検査では上鼻側,下鼻側,下耳側に楔状の求心性視野狭窄がみられた。
以上より,良性黒色細胞腫として眼底写真,光干渉断層法,ゴールドマン視野検査で経過観察を行っているが,初診後8年経過した2006年でも,黒色細胞腫の拡大,浸潤は認められず,視力,視野も不変であった。
撮影は興和社製の眼底カメラVX-10iを用い画角35度で行った。薄い網膜に覆われている腫瘍を「くるみ」の模様をイメージしながら,立体感がわかるように表現した。