icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科62巻1号

2008年01月発行

文献概要

臨床報告

免疫グロブリン遺伝子解析が診断に有用であった特異な球結膜下炎性偽腫瘍の1例

著者: 寺坂祐樹1 堅野比呂子2 長谷川晶子1 郭權慧1 宮崎大1 井上幸次1

所属機関: 1鳥取大学医学部視覚病態学 2松江市立病院眼科

ページ範囲:P.53 - P.57

文献購入ページに移動
要約 目的:免疫グロブリン遺伝子解析で診断が確定した球結膜下炎性偽腫瘍症例の報告。症例:38歳女性が4か月前からの左眼充血で受診した。所見と経過:裸眼視力は左右とも1.5であり,左眼には輪部上方の球結膜下に強く充血した径10mmの腫瘤があり,前部ぶどう膜炎の所見があった。腫瘤の生検でリンパ球の浸潤があり,免疫関連リンパ様組織(MALT)の可能性が疑われた。この細胞の遺伝子解析で,免疫グロブリンH鎖J領域にモノクロナリティがなく,炎性偽腫瘍と診断した。1年後に腫瘤の全摘出を行い,遺伝子解析で診断が再確定した。結論:球結膜下の腫瘤は,臨床的・病理組織学的に炎症か腫瘍かの鑑別が困難なことがあり,遺伝子解析が診断確定に有用である。

参考文献

1)Jakobiec FA, Neri A, Knowles DM 2nd:Genotypic monoclonality in immunophenotypically polyclonal orbital lymphoid tumors. a model of tumor progression in the lymphoid system. The 1986 Wendell Hughes lecture. Ophthalmology 94:980-994, 1987
2)Kamat D, Lazewski MJ, Kemp JD et al:The diagnostic utility of immunophenotyping in the pathologic evaluation of lymphoid proliferation. Modern Pathology 3:105-112, 1990
3)渡辺量己・重光敏朗・馬嶋慶直・他:免疫組織化学的および生物学的に診断した結膜悪性リンパ腫の1例.臨眼 52:895-898,1998
4)鈴木純一・小栗直美・盧 勇・他:両眼に同一クローンのBリンパ球の増生を確認した結膜悪性リンパ腫.臨眼 49:259-263,1995
5)末永雅之・塩谷 浩・相楽正夫・他:眼科領域に原発した悪性リンパ腫の臨床病理学的検討.眼紀 39:813-820,1988
6)松尾好恵・石原美香・金田周三・他:難治アレルギー性結膜炎と診断されていた両眼瞼結膜MALTリンパ腫の1例.あたらしい眼科 21:241-244,2004
7)Isaacson PG, Wright DH:Malignant lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue. A distinctive type of B-cell lymphoma. Cancer 52:1410-1426, 1983
8)梶浦祐子・井上正則・山本 節:結膜,眼瞼および眼窩における悪性リンパ腫の臨床病理学的検討.臨眼 45:1457-1460,1991
9)南條由佳子・高巻公美子・外園千恵・他:遺伝子解析により診断された結膜悪性リンパ腫の1例.臨眼 51:1017-1020,1997
10)Knowles DM, Jakobiec FA, Halper JP:Immunologic characterization of ocular adnexal lymphoid neoplasms. Am J Ophthalmol 87:603-619, 1979
11)石川大介・中山以知郎・安積 淳・他:11年後の再発で悪性リンパ腫と診断された眼窩リンパ増殖病変の1例.日眼会誌 103:821-825,1999
12)三原静香・矢部比呂夫・渋谷和俊:炎症性偽腫瘍として5年間ステロイド療法を施行された眼窩原発悪性リンパ腫の1例.あたらしい眼科 18:1559-1562,2001
13)小幡博人・野田実香:眼窩の偽腫瘍とは何か?.眼科 47:207-212,2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?