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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科62巻1号

2008年01月発行

文献概要

臨床報告

開瞼失行から気付かれた薬剤性パーキンソン症候群

著者: 髙木美昭1 奥田隆章2 小谷博和1 黒住浩一1 門田光裕1 峯克彰1 大野未知3 市川篤4 髙木潔子5

所属機関: 1吉田病院眼科 2奥田眼科 3吉田病院精神科 4吉田病院内科 5東大阪生協病院内科

ページ範囲:P.83 - P.87

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要約 目的:眼科受診時に開瞼失行が発見され,薬剤性パーキンソン症候群と診断された症例の報告。症例:83歳女性が糖尿病網膜症の精査のため受診した。糖尿病と高血圧の既往があり,3か月前に急性心筋硬塞の発作があった。所見と経過:両眼とも強く閉瞼し,自発的または用手的に開瞼不能であった。視力は左右眼とも光覚弁で,眼圧は右48mmHg,左41mmHgであった。両眼に増殖型糖尿病網膜症,虹彩ルベオーシス,右眼に前房出血があった。開瞼不能の原因として,開瞼失行が疑われた。顔貌が仮面状で動作が緩徐であり,両上肢に静止時の振戦と筋固縮があった。心筋硬塞のあと抗うつ薬としてスルピリド150mg/日を服用中であったため,これによるパーキンソン症候群であると推定された。スルピリドを中止し,A型ボツリヌス毒素を12か所に注射した。その後自発開瞼が可能になり,スルピリド中止から3週後に静止時の振戦と筋固縮が消失した。結論:開瞼失行が薬剤性パーキンソン症候群の主要徴候である可能性があり,全身状態に注意する必要がある。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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