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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科62巻10号

2008年10月発行

雑誌目次

特集 第61回日本臨床眼科学会講演集(8) 原著

アクリル眼内レンズ搭載プリセットインジェクター使用例の臨床成績

著者: 坪井俊児 ,   曽田靖 ,   東秀和

ページ範囲:P.1639 - P.1642

要約 目的:アクリル製眼内レンズを装填した注入器を用いる白内障手術の評価。対象と方法:折り畳みが可能な眼内レンズを装填した注入器KS-Xで白内障手術を66名79眼に行った。年齢は58~93歳(平均76歳)である。手術の1か月後に視力,屈折,細隙灯顕微鏡所見などを検索した。また,KS-X,またはこれと同じ製品であるNX-1で白内障手術が行われた症例の術後1か月間の問題点を,全国136施設に電話または訪問により調査した。さらに折り畳みが可能な各種眼内レンズにつき,レンズ表面の粘着性と鑷子による圧痕を検索し,レンズの形態復元を比較した。結果:自験例79眼中63眼で0.5以上の矯正視力が得られた。調査に対して回答があった4,123例については,術後の細菌性眼内炎は皆無であった。KS-Xの表面粘着性は他の類似装置よりも低く,各温度での復元は良好であった。結論:眼内レンズ注入器としてKS-XまたはNX-1を使用した白内障手術では良好な術後成績が得られた。

涙道内視鏡下でのヌンチャク型シリコーンチューブ挿入術の手術成績

著者: 宮久保純子 ,   岩崎明美 ,   宮久保寛

ページ範囲:P.1643 - P.1647

要約 目的:内視鏡下でのヌンチャク型シリコーンチューブ(NST)挿入術の手術成績の報告。対象と方法:総涙小管閉塞があり,流涙症がある患者36例39側(男性7例,女性29例,平均年齢71歳)を対象とした。涙道内視鏡を使用して,閉塞部の穿破とNSTの挿入を行い,約2か月後に抜去した。結果:29側(手術完了率:74%)にNSTを挿入でき,10側は穿破できず手術を中止した。29側全例が通水可能になり,自覚症状が改善した(成功率100%)。涙道内視鏡所見から,閉塞所見は膜状閉塞,管状閉塞,涙囊虚脱に大別できた。結論:涙道内視鏡所見を理解することにより,NST挿入術の完了率,すなわち成功率が向上すると考えられた。

網膜中心静脈閉塞症に対するベバシズマブの硝子体内注射の短期成績

著者: 野瀬明日香 ,   北善幸 ,   富田剛司

ページ範囲:P.1649 - P.1653

要約 目的:網膜中心静脈閉塞症に対するベバシズマブの硝子体内注射の短期成績の報告。対象と方法:網膜中心静脈閉塞症8例8眼を対象とした。男性5例,女性3例で,年齢は56~79歳(平均69歳)である。1眼が虚血型,7眼が非虚血型であった。発症から治療開始までの期間は2~19か月(平均8.8か月)であった。ベバシズマブ注射の回数は,1回が3眼,2回が4眼,4回が1眼であった。光干渉断層計で中心窩厚を測定し,視力はlogMARで評価した。結果:中心窩厚は注射1か月後で有意に減少した(p<0.01)。0.2以上の視力変化を有意とするとき,2眼が改善,5眼が不変,1眼が悪化であった。結論:網膜中心静脈閉塞症に対するベバシズマブの硝子体内注射の短期観察で,黄斑浮腫は減少し,視力には明らかな効果はなかった。

近視性黄斑変性に対する治療法別視力成績

著者: 舘奈保子 ,   黒川由加 ,   芳村賀洋子 ,   橋本義弘

ページ範囲:P.1655 - P.1660

要約 目的:近視性黄斑変性に対する治療法別の成績の報告。対象と方法:眼軸長26mm以上または-8D以上の近視に合併した脈絡膜新生血管42例42眼を対象とした。男性8例,女性34例で,年齢は31~81歳(平均61歳)である。治療として新生血管抜去術を11眼,光線力学療法を11眼,部分移動術を13眼,ベバシズマブ硝子体注入を7眼に行った。術後6か月以上の経過を観察した。結果:4群すべてで,術前視力よりも術後最高視力が有意に向上した(p<0.05)。しかしいずれの群でも,術前視力と最終受診時の視力の間には有意差がなかった。ベバシズマブ注入では,すべて1回の注入で新生血管が退縮した。結論:近視性黄斑変性に対する新生血管抜去術,光線力学療法,部分移動術の視力への効果は,いずれも一過性であった。ベバシズマブ硝子体注入は,手技が簡便で副作用がなく,長期経過の結果が待たれる。

網膜血管炎を伴った水痘・帯状ヘルペスウイルスによる虹彩毛様体炎の1例

著者: 東香里 ,   大野智子 ,   飛鳥田有里 ,   伊藤典彦 ,   石原麻美 ,   林清文 ,   中村聡 ,   水木信久

ページ範囲:P.1661 - P.1665

要約 目的:水痘・帯状ヘルペスウイルス(VZV)による虹彩毛様体炎の症例の報告。症例:42歳女性が9日前からの左眼の充血と眼痛で受診した。所見:矯正視力は左右眼とも1.2であり,眼圧は右17mmHg,左28mmHgであった。左眼に虹彩炎の所見があった。フルオレセイン蛍光眼底造影で周辺部の網膜から色素漏出があった。前房水からPCR(polymerase chain reaction)でVZVが検出された。単純ヘルペスウイルスとサイトメガロウイルスは陰性であった。対症療法で虹彩炎と眼圧は3週間後に寛解したが,その10日後に毛様充血があり,アシクロビル軟膏の点入で治癒した。隅角に色素沈着があった。結論:急性前部ぶどう膜炎にはVZVによるものがあり,皮膚病変が必発ではない。前房水のPCRによるウイルスの検索が早期診断に有効である。

アトピー性皮膚炎患者に発症した内因性感染性眼内炎の1例

著者: 山田晴彦 ,   星野健 ,   松村美代

ページ範囲:P.1667 - P.1671

要約 背景:内因性感染性眼内炎は若年者には少なく,アトピー性皮膚炎患者に発症した報告もない。目的:若年のアトピー性皮膚炎患者に生じた内因性感染性眼内炎の報告。症例:18歳男性が数日前からの左眼の飛蚊症と視力低下で受診した。全身にアトピー性皮膚炎があった。漢方薬を内服し,ステロイドは使用していなかった。3年前に左右眼のどちらかに角膜ヘルペスがあった。所見:矯正視力は右1.0,左光覚弁であった。左眼に前房蓄膿と硝子体混濁があり,超音波検査で網膜剝離が疑われた。ステロイド剤の局所と全身投与に反応せず,初診から2週間後に硝子体手術を行った。硝子体から黄色ブドウ球菌が培養された。5か月後に治癒し,0.4の視力を得た。眼内炎の感染源は不明であった。結論:本症例での眼内炎には,アトピー性皮膚炎がなにかの形で関与している可能性がある。

ボリコナゾールが著効した真菌性眼内炎の1例

著者: 細川満人 ,   蔵増亜希子 ,   菅達人 ,   高橋芳香

ページ範囲:P.1673 - P.1676

要約 目的:薬剤耐性の真菌性眼内炎にボリコナゾールが奏効した症例の報告。症例:71歳男性が右眼の飛蚊症と視力低下で受診した。6週間前に胆管癌の手術を受けた。経中心静脈高カロリー輸液(IVH)を開始し,18日後に発熱し,IVHカテーテルの先端から真菌が培養された。フルコナゾールの全身投与で解熱したが,右眼視力が低下し,フルコナゾールを増量したが無効であった。所見:矯正視力は右0.04,左0.9で,右眼の中心窩前にfungus ballがあった。真菌性眼内炎と診断し,ボリコナゾールの点滴を開始した。翌日からfungus ballは縮小しはじめ,17日目に退院した。中心窩に瘢痕が残り,最終視力は0.1であった。結論:フルコナゾール耐性の真菌性眼内炎に対し,ボリコナゾールの全身投与が奏効した。

眼付属器の悪性リンパ腫の治療結果

著者: 土橋尊志 ,   村山耕一郎 ,   新津望 ,   米谷新

ページ範囲:P.1677 - P.1682

要約 目的:眼付属器リンパ腫の治療成績の報告。対象と方法:過去10年間に眼付属器のリンパ腫と診断され,治療をした19症例を対象とした。男性15例,女性4例で,年齢は25~84歳(平均58歳)である。7例が結膜型,12例が眼窩型であった。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の眼窩型1例を除き,全例がMALTリンパ腫であった。結果:結膜型の全例が放射線治療で治癒した。眼窩型の若年者では放射線治療のみでは寛解せず,化学療法や抗モノクローナル抗体(リツキシマブ)が奏効する例があった。結論:若年者の眼窩型MALTリンパ腫で,放射線治療に抵抗または再増悪する例では,早期から化学療法やリツキシマブが奏効することがある。

久留米大学眼科における12年間のBehçet病の検討

著者: 石井美奈 ,   田口千香子 ,   浦野哲 ,   河原澄枝 ,   疋田直文 ,   山川良治

ページ範囲:P.1683 - P.1686

要約 目的:久留米大学眼科でのBehçet病の臨床経過と視力転帰の報告。対象と方法:2006年までの12年間に久留米大学眼科でBehçet病と診断した31例を検索した。全例で7か月~12年(平均6.4±3.8年)の経過を観察した。男性25例,女性6例で,男女比は1:0.24であった。結果:眼症状は21~58歳(平均37.5歳)で出現した。27例が両眼に発症し,4例が片眼性で,完全型9例,不全型22例であった。眼炎症発作は年間0.3~9.5回起こり,免疫抑制薬の投与前は平均5.2回,投与後は2.9回であった。治療としては全例にコルヒチンを投与し,さらに18例(55%)には免疫抑制薬を使用した。神経Behçet病5例のうち4例が最終視力0.1未満であった。視力不良な症例は,免疫抑制薬を使用しているものが有意に多かった。結論:Behçet病の眼炎症発作に対し,免疫抑制薬は有効であるが,最終視力が不良である症例が多い。

円錐角膜に合併したFuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎の1例

著者: 谷口紗織 ,   結城賢弥 ,   芝大介 ,   木村至 ,   松本幸裕 ,   大竹雄一郎 ,   坪田一男

ページ範囲:P.1687 - P.1691

要約 目的:Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎が発症した円錐角膜の症例の報告。症例:28歳男性が右眼の高眼圧による霧視で受診した。1か月前から右眼の虹彩毛様体炎の治療を受けていた。3年前に両眼の円錐角膜と診断され,コンタクトレンズを使用していた。所見と経過:矯正視力は右10cm指数弁,左0.7で,左眼に-30Dの近視があった。眼圧は右30mmHg,左14mmHgで,両眼に円錐角膜があった。右眼に虹彩萎縮と前房に炎症所見があり,虹彩異色性虹彩毛様体炎と診断した。ステロイド緑内障は否定された。右眼に線維柱帯切除術を行い,眼圧が下降し,4か月後に0.09の矯正視力が得られた。結論:本症例は,稀ではあるが虹彩異色性虹彩毛様体炎が円錐角膜に合併することを示している。発生学的に虹彩実質と角膜実質が同じ神経堤に由来することが関係している可能性がある。

積極的治療を施行した毛様体膜形成を伴う小児片眼性ぶどう膜炎の1例

著者: 永田健児 ,   多田玲 ,   安原徹 ,   中野由起子 ,   丸山和一 ,   原田麻依子 ,   那須直子 ,   木下茂

ページ範囲:P.1693 - P.1697

要約 目的:“chronic iridocyclitis in young girls”の1例に対して,種々の積極的治療を行った結果の報告。症例:6歳女児。右眼に帯状角膜変性,虹彩後癒着を伴う前房炎症,併発白内障を認め,治療的レーザー角膜切除術,水晶体再建術を施行した。術中に毛様体膜を確認した。術後低眼圧と眼内炎症が持続するため硝子体手術+眼内レンズ摘出術を施行したが,毛様体膜は切除不能のため切開を入れて終了した。術後眼圧上昇および後極部に増殖膜を生じたため,硝子体手術+線維柱帯切開術とともにシクロスポリン内服を行った。その後は眼圧が下降し,眼内炎症も軽減した。結論:“chronic iridocyclitis in young girls”における眼内炎症の消炎には硝子体手術とシクロスポリン投与が有効であった。

多施設による緑内障患者の実態調査―正常眼圧緑内障と原発開放隅角緑内障

著者: 塩川美菜子 ,   井上賢治 ,   森山涼 ,   若倉雅登 ,   井上治郎 ,   富田剛司

ページ範囲:P.1699 - P.1704

要約 目的:眼科病院または診療所に通院中の緑内障患者について行った治療状況の報告。対象と方法:23施設に通院中の緑内障または高眼圧患者1,935例を調査し,特に原発開放隅角緑内障(POAG)と正常眼圧緑内障(NTG)の薬物治療の違いを検討した。結果:男性768例,女性1,167例で,年齢は9~102歳(平均67歳)であった。POAGが34.4%,NTGが47.4%で,全症例の80%以上が開放隅角であった。薬剤数の平均は,POAGが1.9±1.1剤,NTGが1.4±0.8剤で,前者が有意に多かった。単剤使用例では,両群ともラタノプロストが最も多く,POAGではチモロール,NTGではイソプロピルウノプロストンが有意に多かった。2剤使用例では,両群ともラタノプロストとβ遮断薬の併用が多かった。ラタノプロストとチモロールの併用は,NTGよりもPOAGで有意に多かった。結論:緑内障に対する薬物治療では,POAGでは眼圧下降,NTGでは眼内循環改善が重視されている。

乳頭出血近傍の網膜視機能の経過

著者: 浜田幸子 ,   𠮷田敬子 ,   宮澤大輔

ページ範囲:P.1705 - P.1712

要約 目的:乳頭縁に接して出血が生じた眼の視野の経過の報告。症例:乳頭縁に出血がある13例13眼を対象とした。男性4例,女性9例で,年齢は52~81歳(平均68歳)である。6例には消炎薬としてプラノプラフェンまたは副腎皮質ステロイドなどが経口投与され,7例は無治療であった。網膜感度はマイクロペリメー夕(MP-1,ニデック)で測定した。結果:無治療群では網膜感度が5例で自然に上昇し,1例で不変,1例で低下した。治療群では当初から網膜感度が低い重症例が含まれ,4例で出血が多発していた。網膜感度は1例で上昇,2例で不変,3例で低下した。結論:乳頭縁に接して出血がある眼での網膜感度の経過は個体差が大きく,消炎薬の投与で一時的な改善があっても,網膜感度変化の方向性は変えられない。

強膜トンネル併用円蓋部基底結膜切開線維柱帯切除術の手術成績

著者: 輿水純子 ,   宮内修 ,   椎名慶子 ,   徐汀汀 ,   田宮優子 ,   高橋伊満子 ,   溝田淳 ,   田中稔

ページ範囲:P.1713 - P.1716

要約 目的:強膜トンネル併用円蓋部基底結膜切開線維柱帯切除術(本手術と略称)の結果の報告。対象と方法:本手術を行った17眼を対象とした。3眼に正常眼圧緑内障,14眼に原発開放隅角緑内障があり,術前眼圧は平均23.3mmHgであった。結果:平均眼圧は術後12か月で10.7mmHg,24か月で12.0mmHgと,有意に低下した(p<0.005)。目標眼圧を20mmHg以下,15mmHg以下,術前眼圧の30%以上低下とした場合の最終眼圧コントロール率は,それぞれ94%,82%,100%であった。結論:正常眼圧緑内障または原発開放隅角緑内障に対し,本手術で有意な眼圧下降が得られる。

Red-eyed shunt syndromeの逆説的悪化と考えられた1例

著者: 加藤朝香 ,   石川太 ,   目時友美 ,   宮川靖博 ,   伊藤忠 ,   竹内侯雄 ,   木村智美 ,   中澤満

ページ範囲:P.1717 - P.1721

要約 目的:Red-eyed shunt syndromeが逆説的に悪化した症例の報告。症例と経過:85歳女性が両眼の視力低下で受診した。矯正視力は右0.6,左0.4で,上強膜血管の拡張と蛇行,切迫型網膜中心静脈閉塞症が両眼にあった。眼球突出,頸部血管雑音,神経学的異常はなかった。頭部のCTで上眼静脈の拡張が両眼にあったが,内頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)はなく,6日後の脳血管造影と頭部磁気共鳴画像検査(MRI)で異常所見はなかった。初診から4か月後に,両眼上強膜の血管拡張と蛇行,両眼の切迫型網膜中心静脈閉塞症は自然寛解した。結論:両眼の上強膜血管の拡張と眼底出血から本症がred-eyed shunt syndromeと診断した。脳血管造影でCCFがなかったことは,本症例の経過が本症候群の逆説的悪化として解釈できる。

硝子体出血を生じたため硝子体手術を行った加齢黄斑変性の視力転帰

著者: 工藤孝志 ,   鈴木幸彦 ,   鈴木香 ,   山崎仁志 ,   中澤満

ページ範囲:P.1723 - P.1726

要約 目的:加齢黄斑変性に併発した硝子体出血に対して硝子体手術を行った症例の視力経過の報告。対象と方法:過去3年間に硝子体出血に対して硝子体手術を行った加齢黄斑変性14例14眼を検索した。男性5例,女性9例で,年齢は60~89歳(平均72歳)である。原則として白内障手術を同時に行い,2~24か月(平均11か月)の経過を追った。術前視力は,2眼が0.2で,他は0.04以下であった。結果:最終視力は,指数弁以下が6眼,0.01~0.1が5眼,0.4~0.5が2眼,不明1眼であった。術前視力と比較し,6眼が2段階以上改善し,4眼が不変,3眼が悪化,1眼が不明であった。結論:加齢黄斑変性に併発した硝子体出血に対する硝子体手術で視力が改善することが多いが,良好な視力を得ることは困難である。

血管新生緑内障に対する強膜トンネル併用円蓋部基底結膜切開線維柱帯切除術の手術成績

著者: 椎名慶子 ,   宮内修 ,   輿水純子 ,   徐汀汀 ,   田宮優子 ,   高橋伊満子 ,   溝田淳 ,   田中稔

ページ範囲:P.1727 - P.1732

要約 目的:血管新生緑内障に対する濾過手術の結果の報告。対象と方法:血管新生緑内障16例16眼を対象とした。男性14例,女性2例で,平均年齢は58.6±11.5歳である。緑内障の原因は糖尿病網膜症14例,網膜中心静脈閉塞症1例,眼虚血症候群1例であった。強膜トンネル併用円蓋部基底結膜切開線維柱帯切除術を行い,6か月以上の経過を観察した。平均眼圧は28.9±9.1mmHgであった。結果:眼圧は術後1か月後15.7±7.9mmHg,3か月後18.3±9.8mmHg,6か月後16.1±6.3mmHg,最終12.4±4.0mmHgと,いずれも有意に低下した。術後の目標眼圧を20mmHg,15mmHg,術前の70%以下に設定した場合,1年生存率はそれぞれ61.1%,52.1%,68.2%であった。Coxの比例ハザード検定で,術後の眼圧コントロールに有意な影響を与える予後因子は,新生血管緑内障と術前高眼圧であった。結論:強膜トンネル併用円蓋部基底結膜切開線維柱帯切除術により,血管新生緑内障の50~70%の症例で目標眼圧が達成できた。術前の積極的な眼圧下降,血管新生の抑制,術後の管理が重要な要因であった。

近視性脈絡膜新生血管に対する光線力学療法とベバシズマブ硝子体注入の比較

著者: 中馬智巳 ,   西田智美 ,   小澤摩記 ,   中馬秀樹 ,   直井信久

ページ範囲:P.1733 - P.1738

要約 目的:近視性脈絡膜新生血管に対する光線力学療法とベバシズマブ硝子体注入の効果の比較。対象と方法:近視性脈絡膜新生血管15例15眼を対象とした。男性3眼,女性12眼で,年齢は26~79歳(平均57歳)である。全例に-6D以上の近視があった。9眼に光線力学療法,8眼にベバシズマブ硝子体注入を行った。この2群間には年齢と視力に有意差がなかった。相乗平均視力は,前群では0.24,後群では0.31であった。全例で3か月以上の経過を追った。結果:最終観察時の視力は,光線力学療法群では改善2眼,不変5眼,悪化2眼で,相乗平均視力は0.23であり,術前視力と有意差がなかった。ベバシズマブ群では改善7眼,不変1眼で,相乗平均視力は0.77であり,術前より有意に改善した(p<0.005)。結論:近視性脈絡膜新生血管には,光線力学療法よりもベバシズマブ硝子体注入が有効である。

特発性黄斑上膜手術に対する23ゲージシステムの使用成績

著者: 星合繁 ,   花田斉久 ,   鈴木茂揮 ,   田邊樹郎 ,   貞松良成 ,   栗原秀行

ページ範囲:P.1741 - P.1744

要約 目的:20ゲージ(G)と23Gシステムによる特発性黄斑上膜に対する硝子体手術の比較。症例と方法:25か月間に手術を行った特発性黄斑上膜40例40眼を検索した。20眼には20G,20眼には23Gシステムを用い,白内障同時手術を20G群中18眼,23G群中13眼に行った。両群を手術時間,術後視力,改善度について比較した。結果:白内障同時手術を行ったときの手術時間は,20G群では44.7±14.6分,23G群では37.1±11.8分であり,有意差があった。術後最高視力と視力の改善については,両群間に差がなかった。合併症として,両群それぞれの約10%に,網膜剝離または硝子体出血などが生じた。結論:特発性黄斑上膜に対する硝子体手術では,20Gと23Gシステムの間に成績または合併症に有意差はない。23Gシステムでは手術時間が短縮され,術者と被術者の負担が軽減される。

硝子体手術を施行したミトコンドリア遺伝子異常を伴う増殖糖尿病網膜症の1例

著者: 土師正也 ,   南政宏 ,   福本雅格 ,   佐藤孝樹 ,   池田恒彦 ,   村瀬裕子 ,   寺前純吾 ,   花房俊昭

ページ範囲:P.1745 - P.1749

要約 背景:ミトコンドリア遺伝子に異常がある糖尿病では増殖糖尿病網膜症に進行しにくいと考えられている。目的:ミトコンドリア遺伝子異常がある増殖糖尿病網膜症の症例に硝子体手術を行った報告。症例:感音性難聴がある36歳男性が糖尿病網膜症で受診した。22歳で糖尿病を指摘され,26歳からインスリン注射を行っている。母は若年時から糖尿病があり,母方の祖母に糖尿病がある。兄はミトコンドリア遺伝子異常を指摘されたことがある。所見:矯正視力は右手動弁,左1.0で,右眼に牽引性網膜剝離と硝子体出血があった。ミトコンドリア解析でアデニンからグアニンへの点変異がmtDNA3243にあった。右眼に硝子体手術を行い,良好な結果が得られた。9か月後に左眼に硝子体出血が生じ,硝子体手術を行った。右0.25,左0.9の最終視力が得られた。結論:ミトコンドリア遺伝子異常がある増殖糖尿病網膜症に対しても,硝子体手術が有効であった。

連載 今月の話題

眼窩腫瘍の診断と治療update

著者: 高村浩

ページ範囲:P.1615 - P.1622

 骨と皮膚に囲まれた閉鎖空間である眼窩という特異な部位に発症する眼窩腫瘍の多くは直接みることはできないので,CTやMRIでそのイメージをとらえ,病理検査によって確定診断を得る。治療は手術のみならず,放射線治療や化学療法などを組み合わせて行う。日頃遭遇することが少ない疾患ではあるが,その診断や治療法につき概説する。

日常みる角膜疾患・67

結膜弛緩症

著者: 折田朋子 ,   近間泰一郎 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.1624 - P.1626

症例

 患者:72歳,女性

 主訴:両眼の異物感

 既往歴:高血圧症

 現病歴:2005年頃から両眼の異物感を自覚し,近医を受診した。両眼の結膜弛緩症を指摘され,ヒアルロン酸ナトリウムやフルオロメトロンなどの点眼を用いても自覚症状が改善されなかったため,手術目的で当科を紹介され受診した。

 初診時所見:視力は右0.8(1.0),左0.9(1.0),眼圧は右13mmHg,左14mmHg(非接触型眼圧計)であった。両眼の鼻側により強い結膜弛緩を認め,結膜の一部は角膜と接触していた(図1)。軽度の眼瞼下垂を認めたが,マイボーム腺機能不全や角膜上皮障害はなかった。

 経過:前医でヒアルロン酸ナトリウムやフルオロメトロン点眼が使用され,改善が得られていないことから外科的治療の適応と判断し,両眼の結膜弛緩症に対してカレーシスマーカー(M-1405,イナミ)を用いた涙液メニスカス再建術(横井法)1)を行った。術後,創離開や肉芽形成はなく,術後2週間で抜糸を行った。術後1か月頃には涙液メニスカス形成も良好で(図2),患者の異物感も著明に改善した。

公開講座・炎症性眼疾患の診療・19

多発消失性白点症候群

著者: 齋藤理幸 ,   齋藤航 ,   北市伸義 ,   大野重昭

ページ範囲:P.1628 - P.1632

はじめに

 多発消失性白点症候群(multiple evanescent white dot syndrome:以下,MEWDS)は,眼底に一過性の白点が生じる原因不明の網脈絡膜症である1,2)。白点症候群(white dot syndrome)の代表的疾患であるとともに3),急性帯状潜在性網膜外層症(acute zonal occult outer retinopathy:以下,AZOOR)の類縁疾患,いわゆるAZOOR complexの1つでもある4)。それらを鑑別するうえで,この疾患の臨床像を正確に把握することは重要である。

網膜硝子体手術手技・22

開放性眼外傷(7)一時的人工角膜を用いた2次的硝子体手術

著者: 浅見哲 ,   寺崎浩子

ページ範囲:P.1634 - P.1638

はじめに

 穿孔性眼外傷では,角膜損傷により角膜混濁が起きている場合や,前房内出血に高眼圧が合併し角膜染血症が起きている場合に,視認性が悪くなることがある。その際,角膜を通しての手術は不能となるため,一工夫必要である。

 内視鏡を用いて眼内の処理を行うことも可能であるが,内視鏡の装置を持つことはどの施設でもできることではないし,その技術の習得もさることながら,外傷の処理をすべて内視鏡観察下に施行することは容易ではない。そこで,そのような症例において,より簡便に視認性を確保し,網膜硝子体の処理を容易にする方法を紹介する1)

もっと医療コミュニケーション・10

目つき・顔つき・態度を学ぼう!!

著者: 佐藤綾子 ,   綾木雅彦

ページ範囲:P.1752 - P.1755

 「この先生の言っていることは心から信じられる」と感じて,強い信頼感をもち,医師の口から次に出てくる言葉を待ち,医師の口元を見つめる。こんな患者が目の前にいれば期待にこたえてあげようと強く思い,自然に丁寧で親切な説明ができることでしょう。

 ところが,「この医師の言うことは本当かしら?」「もしかしたら判断が間違っているかもしれない」「この症例について豊富な診療体験をもっているのかしら?」と患者が心に疑いをもてば,患者の目つきは暗く批判的になります。そのような視線を浴びると,実力ある医師でも何だか話しづらいという感じを受けるでしょう。

今月の表紙

鎌状網膜剝離

著者: 山本素士 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.1623 - P.1623

 症例は30歳,女性。1983年2月に左眼視力障害を主訴に近医を受診後,精査目的で当科を紹介され受診した。視力は右0.5(n. c.),左0.2(n. c.),前眼部,中間透光体に異常がみられなかった。両眼ともに眼底検査で網膜裂孔はなく,視神経乳頭から周辺部網膜へと鎌状に伸びる線維増殖組織が確認され,その収縮による牽引性網膜剝離がみられた。満期出産で家族歴はない。以上より鎌状網膜剝離と診断し,強膜バックルを用いた網膜剝離復位術を行い経過観察している。術後25年経過した2007年でも,視力は左(0.06)と低下しているものの網膜剝離の再発はない。

 撮影にはNidek社無散瞳眼底カメラAFC-210を使用し画角45°で撮影した。NAVIS-Liteパノラマソフトを用いて写真を合成した。線維増殖組織が血管を巻き込んで牽引し周辺網膜に癒着している様子をイメージして撮影した。被検者の負担を軽くするため,病変部を捉える必要最低限の枚数を撮影するように心がけた。また,無散瞳眼底カメラを用いることによって眩しさの軽減を試み,固視の安定も得られスムーズな撮影ができた。

臨床報告

2型3色覚と診断された女性先天赤緑色覚異常者に対する遺伝子診断の試み

著者: 林孝彰 ,   竹内智一 ,   常岡寛

ページ範囲:P.1763 - P.1767

要約 目的:2型3色覚と診断された女性に対し遺伝子診断を試みた。方法:22歳女性(発端者)とその両親に対し,アノマロスコープによる診断とパネルD-15による程度判定を行った。X染色体上のL・M視物質遺伝子配列をPCR(polymerase chain reaction)法で決定し,上流の2つの遺伝子から想定される視物質の分光吸収極大波長の差を波長差として求めた。結果:発端者と父親は2型3色覚(軽度異常)と診断され,母親は正常色覚で保因者と考えられた。発端者は2種類の異なったM-Lハイブリッド遺伝子を有し,それぞれのX染色体上遺伝子配列における波長差は4nmと8nmであった。結論:2型3色覚女性の遺伝子型は,両親の色覚検査と遺伝子解析によって決定できる場合がある。

血管新生緑内障に対する非穿孔性線維柱帯切除術変法の効果

著者: 加賀郁子 ,   黒田真一郎 ,   木村英也 ,   永田誠

ページ範囲:P.1769 - P.1773

要約 目的:血管新生緑内障に対する非穿孔性線維柱帯切除術変法の結果の報告。症例と方法:過去7年間に本手術を行った18例22眼を対象とした。すべて開放隅角であり,年齢は49~69歳(平均61歳)であった。原因疾患は18眼が糖尿病網膜症,4眼が網膜中心静脈閉塞症であった。10眼には単独手術,12眼には白内障と硝子体手術を併用した。結果:平均眼圧は術前が34.4±9.6mmHg,術後は18.3±7.0mmHgで,有意に下降した(p<0.0001)。眼圧が20mmHg以下の生存率は,12か月後77%,24か月後72%,42か月後58%であった。過剰濾過や術後感染などの重篤な合併症はなかった。結論:開放隅角期の血管新生緑内障に対し,非穿孔性線維柱帯切除術変法は安全で有効である。

べらどんな

緑内障の定義

著者:

ページ範囲:P.1638 - P.1638

 本格的な英語の辞書がはじめて出版されたのは1755年のことである。現在の新聞の半ページに相当する大きなもので,A3を縦長にして,幅が少し狭くなったものと考えればよい。厚さは約2,300ページで,4万の単語が収録されている。

 著者はSamuel Johnson(1709-84)で,題名は“A Dictionary of English Language”である。たまたまその写真による復刻版を入手することができた。

運・鈍・根

著者:

ページ範囲:P.1744 - P.1744

 山際勝三郎という偉い先生がいた。医学部を明治21年(1888)に卒業し,ドイツに留学し,ベルリン大学でウィルヒョー(Virchow)に師事する。帰国して病理学の教授になったが,人工的に癌を作る研究に没頭した。

 やり方は簡単である。家兎の耳にコールタールを塗るだけであるが,これを毎日のように繰り返した。

書評

がん医療におけるコミュニケーション・スキル―悪い知らせをどう伝えるか[DVD付]

著者: 垣添忠生

ページ範囲:P.1660 - P.1660

 『がん医療におけるコミュニケーション・スキル―悪い知らせをどう伝えるか』が医学書院から刊行された。編集は内富庸介,藤森麻衣子の両氏,執筆は国立がんセンター東病院,同中央病院,聖隷三方原病院,癌研有明病院,静岡県立静岡がんセンターなど,いずれも日々癌患者や家族と濃密に接するベテラン揃いである。

 患者,家族と,医療従事者との関係,特に患者と医師の間の意思疎通,コミュニケーションは医療の原点である。最近の診療現場の多忙さは危機的である。限られた時間のなかで患者と医師がコミュニケーションを図ることは至難になりつつある。とはいえ,患者-医師関係を構築するうえでコミュニケーションは避けて通れない。

レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版

著者: 大庭祐二

ページ範囲:P.1758 - P.1758

 感染症診療においては既に定番書となっている『レジデントのための感染症診療マニュアル』が改訂,出版された。著者の青木眞先生は,公私において私の恩師の一人であり,緒方洪庵の適塾の門下生で種痘の普及に尽くした湯浅芳斎の末裔でもある。

 私の専門の1つは集中治療であるが,感染症を制するものが集中治療を制すると言っても過言ではないほど,感染症診療は多くの臨床診療科においてかなり重要な位置づけを占める。しかし残念ながら,日本では臨床感染症という領域はかなりの長期間軽視され続けてきた。

やさしい目で きびしい目で・106

出産随想

著者: 五嶋摩理

ページ範囲:P.1751 - P.1751

 長男が産まれたのは国立大学附属病院の分院であった。陣痛室はなく,付き添いも認められず,点滴もしなかった。分娩台に寝かされ,助産師は「何かあったら呼んでください」と言ったきり去ってしまったため,夜中に何時間も孤独と痛みに耐えた。破水し,急激な陣痛がきて呼び鈴を押したら,「まだまだでしょう」と言いながら助産師が来てくれたが,既に排臨していたため,間もなく出産となった。入院は,だだっ広い大部屋で途中から1人になった(その日の出産は私だけで,その後もしばらく出産予定がなかった)。担当医や助産師がたまに顔を出すだけの子供と2人きりの1週間の入院生活はとても長く感じた。出産費用は安かったが,ここではもう二度と出産したくないと思った(この病院はその後閉鎖した)。

 長女はニューヨーク市内の私立病院で出産した。入院後間もなく麻酔科医が部屋に来て,無痛分娩を勧めた。「痛みなら我慢します」と断ったが,「ほとんど全員無痛分娩なので,痛くて騒ぐ人はいませんよ」と説得されて渋々了解した。確かに痛みは少なかったが,その分微弱陣痛になってしまった(予想通り)。「なかなか産まれないのなら帰りますよ」と産科医に催促され(開業医が,担当患者の出産のときだけ契約している病院に出張しているため),陣痛誘発剤を点滴された。夫は出産の立ち会いを指示されており,立ち会いは大変心強かった。入院食のメニューやルームサービスはホテル仕様で,入院は2泊3日だったが疲れがとれて快適だった。

ことば・ことば・ことば

読む辞書

ページ範囲:P.1759 - P.1759

 「辞書は引くためにある」と思われがちですが,そうとは限りません。よほど暇な人でなければ,「右と左,男と女,猫と犬」などの意味を辞書で調べたりしないからです。

 広辞苑で「辞書」を引いてみました。「ことばや漢字を集め,一定の順序に並べ,その読み方・意味・語源・用例などを解説した書」と定義しています。そして「右」は「南を向いた時,西にあたる方」,「男」は「人間の性別の一つで,女でない方」となっています。

文庫の窓から

『脈訣』

著者: 中泉行弘 ,   林尋子 ,   安部郁子

ページ範囲:P.1774 - P.1776

低い評価の書

 岡西為人の『中国醫書本草考』では『脈経』の項の後に「付」として『脈訣』が取り上げられている。歴代の医家や学者がこの書を評価せず,この書の流行を苦々しく思っていたことを知っていた氏は,正面から取り上げる気持ちにならなかったのだろうか。

 「訣」とはきっぱりとひと言でいいきった秘伝をいい,『脈訣』は歌のように短い句にして脈についての知識をまとめた本である。岡西は「このような形式のものは隋唐のころにはほとんどなかったが,宋初にはいろいろなものがあったらしい」と述べている。しかし701年に出された大宝律令の医疾令には,医学を学ぶ学生たちの学ぶべき本について書いてあり,

凡医針生,各分経受業。医生,習『甲乙』『脈経』『本草』,兼修『小品』『集験』等方。針生,習『素問』『黄帝針経』『明堂』『脈訣』,兼習『流注』『偃側』等図,『赤烏神針』等経

とあるので,現代に伝わる『脈訣』ではないにしても何かしら,脈についての歌訣のようなものがすでに我が国に入っていたと思われる。

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あとがき

著者: 西田輝夫

ページ範囲:P.1794 - P.1794

 弊誌「臨床眼科」では,昨年の第61回日本臨床眼科学会で発表されました講演の原著論文を掲載してきました。多くの貴重な眼科臨床での経験や結果が論文として本誌に掲載され,学会での講演やポスター発表に加えて,これからの診療に役立つ記録として参照されていくことと思います。

 「今月の話題」として高村浩先生の眼窩腫瘍に関する総説を掲載させていただきます。日常の診療では,症例数の多いいわゆるcommon diseasesと稀にしか遭遇しないrare diseasesがあります。Common diseasesに対しては,日本眼科学会や各専門別の学会が公表しているガイドラインなどで示されている診断の基準に基づき確定診断を行うことや,現在用いることのできる最良の薬剤や手術を駆使して適切な治療を行うことが肝要です。一方,rare diseasesに対しては,一般的に共通する所見と各症例ごとに異なる症状や所見を明確に判断して対応していかねばなりません。眼科医一人ではrare diseasesに対する経験が少ないが故に,極力思いつきの診断や治療を選択すべきではなく,過去の文献や先輩・同僚の経験を注意深く参照する必要があります。眼窩腫瘍もrare diseasesの1つです。高村先生の力作がお役に立てばと思います。

 まもなく第62回日本臨床眼科学会が開催されます。先生方の臨床経験を同僚の眼科医と共有するためにも,今後貴重な臨床経験として参照できるように,是非「臨床眼科」に原著論文として投稿していただければと存じます。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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