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低い評価の書
岡西為人の『中国醫書本草考』では『脈経』の項の後に「付」として『脈訣』が取り上げられている。歴代の医家や学者がこの書を評価せず,この書の流行を苦々しく思っていたことを知っていた氏は,正面から取り上げる気持ちにならなかったのだろうか。
「訣」とはきっぱりとひと言でいいきった秘伝をいい,『脈訣』は歌のように短い句にして脈についての知識をまとめた本である。岡西は「このような形式のものは隋唐のころにはほとんどなかったが,宋初にはいろいろなものがあったらしい」と述べている。しかし701年に出された大宝律令の医疾令には,医学を学ぶ学生たちの学ぶべき本について書いてあり,
凡医針生,各分経受業。医生,習『甲乙』『脈経』『本草』,兼修『小品』『集験』等方。針生,習『素問』『黄帝針経』『明堂』『脈訣』,兼習『流注』『偃側』等図,『赤烏神針』等経
とあるので,現代に伝わる『脈訣』ではないにしても何かしら,脈についての歌訣のようなものがすでに我が国に入っていたと思われる。
岡西為人の『中国醫書本草考』では『脈経』の項の後に「付」として『脈訣』が取り上げられている。歴代の医家や学者がこの書を評価せず,この書の流行を苦々しく思っていたことを知っていた氏は,正面から取り上げる気持ちにならなかったのだろうか。
「訣」とはきっぱりとひと言でいいきった秘伝をいい,『脈訣』は歌のように短い句にして脈についての知識をまとめた本である。岡西は「このような形式のものは隋唐のころにはほとんどなかったが,宋初にはいろいろなものがあったらしい」と述べている。しかし701年に出された大宝律令の医疾令には,医学を学ぶ学生たちの学ぶべき本について書いてあり,
凡医針生,各分経受業。医生,習『甲乙』『脈経』『本草』,兼修『小品』『集験』等方。針生,習『素問』『黄帝針経』『明堂』『脈訣』,兼習『流注』『偃側』等図,『赤烏神針』等経
とあるので,現代に伝わる『脈訣』ではないにしても何かしら,脈についての歌訣のようなものがすでに我が国に入っていたと思われる。
参考文献
1)服部敏良:奈良時代醫学の研究.東京堂,1945
2)服部敏良:鎌倉時代医学史の研究.吉川弘文館,1964
3)服部敏良:室町安土桃山時代医学史の研究.吉川弘文館,1971
4)岡西為人:中国醫書本草考.井上書店,1974
5)保坂弘司:大鏡 全現代語訳.講談社学術文庫,1981
6)三木紀人:徒然草 全訳注(3).講談社学術文庫,1982
7)滑寿(滑伯仁)著,豊田白詩(訳):診家枢要.世論時報社,1995
8)小曽戸洋:中国医学古典と日本.塙書房,1996
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