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『脈訣』
著者: 中泉行弘1 林尋子1 安部郁子1
所属機関: 1研医会
ページ範囲:P.1774 - P.1776
文献購入ページに移動岡西為人の『中国醫書本草考』では『脈経』の項の後に「付」として『脈訣』が取り上げられている。歴代の医家や学者がこの書を評価せず,この書の流行を苦々しく思っていたことを知っていた氏は,正面から取り上げる気持ちにならなかったのだろうか。
「訣」とはきっぱりとひと言でいいきった秘伝をいい,『脈訣』は歌のように短い句にして脈についての知識をまとめた本である。岡西は「このような形式のものは隋唐のころにはほとんどなかったが,宋初にはいろいろなものがあったらしい」と述べている。しかし701年に出された大宝律令の医疾令には,医学を学ぶ学生たちの学ぶべき本について書いてあり,
凡医針生,各分経受業。医生,習『甲乙』『脈経』『本草』,兼修『小品』『集験』等方。針生,習『素問』『黄帝針経』『明堂』『脈訣』,兼習『流注』『偃側』等図,『赤烏神針』等経
とあるので,現代に伝わる『脈訣』ではないにしても何かしら,脈についての歌訣のようなものがすでに我が国に入っていたと思われる。
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