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特集 網膜硝子体診療update Ⅰ.検査法update
補償光学
著者: 北口善之1 不二門尚1
所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科感覚器外科学(眼科学)
ページ範囲:P.56 - P.62
文献購入ページに移動はじめに
補償光学(adaptive optics)とは,光線の歪みを計測しながら同時に補正する技術である。
補償光学は,もともとは天文学分野への応用を目ざして1950年代に提案された概念である。一般的に天体望遠鏡では開口(結像レンズ)が大きいほど鮮明な像が得られる。しかし,実際は大気のゆらぎのため,数メートルの大型鏡を設置しても,10cm程度の小型望遠鏡程度の分解能しか得られない。補償光学技術を用いて大気のゆらぎを補正することで詳細な星の観察が可能になる。
光の経路における乱れが観察の障害になるという点では眼も同様である。外界から入ってきた光は網膜に到達するまでに,角膜,前房,水晶体,硝子体を通過するが,なかでも角膜や水晶体により大きく屈折する。低次の収差であればレンズを用いて網膜上に像を結ばせることができるのであるが,高次の収差はレンズでは矯正しきれないのでどうしても網膜像がぼけてしまい,網膜の詳細な観察の障害となっていた。
補償光学眼底カメラ(以下,AOカメラ)では,補償光学の導入により高次収差まで補正が可能であり,水平面で約2μmの水平解像度が実現した。この解像度により,いままで見ることができなかった錐体のモザイク構造が観察可能になる。いままで見えていなかったものが見えるようになることで,網膜の病変について新たな知見が得られる可能性がある。本項では,AOカメラの理論と眼底疾患への応用を述べる。
補償光学(adaptive optics)とは,光線の歪みを計測しながら同時に補正する技術である。
補償光学は,もともとは天文学分野への応用を目ざして1950年代に提案された概念である。一般的に天体望遠鏡では開口(結像レンズ)が大きいほど鮮明な像が得られる。しかし,実際は大気のゆらぎのため,数メートルの大型鏡を設置しても,10cm程度の小型望遠鏡程度の分解能しか得られない。補償光学技術を用いて大気のゆらぎを補正することで詳細な星の観察が可能になる。
光の経路における乱れが観察の障害になるという点では眼も同様である。外界から入ってきた光は網膜に到達するまでに,角膜,前房,水晶体,硝子体を通過するが,なかでも角膜や水晶体により大きく屈折する。低次の収差であればレンズを用いて網膜上に像を結ばせることができるのであるが,高次の収差はレンズでは矯正しきれないのでどうしても網膜像がぼけてしまい,網膜の詳細な観察の障害となっていた。
補償光学眼底カメラ(以下,AOカメラ)では,補償光学の導入により高次収差まで補正が可能であり,水平面で約2μmの水平解像度が実現した。この解像度により,いままで見ることができなかった錐体のモザイク構造が観察可能になる。いままで見えていなかったものが見えるようになることで,網膜の病変について新たな知見が得られる可能性がある。本項では,AOカメラの理論と眼底疾患への応用を述べる。
参考文献
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