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文献概要
特集 網膜硝子体診療update Ⅲ.手術治療update
小切開手術(23ゲージ)
著者: 篠田啓1
所属機関: 1大分大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.135 - P.141
文献購入ページに移動はじめに
1971年にMachemerら1)によって開発された経毛様体扁平部硝子体手術は,長きにわたり3ポートの19~20ゲージ(以下,G)システムにより行われてきた。顕微鏡,周辺機器などの技術開発や病態理解のめざましい発達により,難治性疾患や黄斑疾患などへと適応は広がり,裂孔原性網膜剝離のスタンダード手術の1つとしても用いられるようになった。
しかし硝子体術者は満足せず,より小さい創で低侵襲の手術という理想を追求し続けた。その結果,白内障手術が切開創の大きな計画的水晶体囊外摘出術(ECCE)から小切開自己閉鎖創による超音波白内障手術(PEA)に移行したように,硝子体手術においてもsmall gauge surgeryが広く行われるようになった。de Juanらは1990年に25ゲージ硝子体手術器具のプロトタイプを作製し2),さらに2002年に経結膜的強膜創にカニューラを設置する25G硝子体手術システムを開発した3,4)。
ゲージが小さければ小さいだけ局所での侵襲は小さくなるが,効率は低下する。例えばカッターの外径が20Gの0.9mmから25Gの0.5mmになったことで,管壁の剛性を保つため内径はより小さくなる。流体の抵抗は内半径の4乗に反比例するため切除効率は悪く手術時間は長くなり,従来のハロゲン光源では十分な照度を得られなくなった。また,眼内器具の先端の剛性低下のため「しなり」が強く操作性が悪い,先端の曲がった器具が使用できないなど,20Gシステムと比較した場合,使用できる眼内器具が制限された。
この欠点を補い,かつ経結膜無縫合手術を可能とした23Gシステムが2005年にEckardt5)により開発された。23Gシステムはシャフトの剛性が高く(図1,2)6),吸引力も20Gカッターとほぼ同等であるというデータ6)もあり,20Gに近い感覚で手術を行うことができる。以前より硝子体生検や気体網膜復位(pneumatic retinopexy)を外来手術で行う1ポートから2ポートでの経結膜無縫合硝子体手術システム(office-based vitrectomy:OVIT)として,23Gのポータブルカッターを用いた方法7)も報告されており,これを機に近年小切開硝子体手術を行う術者が急速に増えている8~12)。
ここでは,23G硝子体手術の特性およびその長所,短所を確認し,実際の手術手技を解説する。
1971年にMachemerら1)によって開発された経毛様体扁平部硝子体手術は,長きにわたり3ポートの19~20ゲージ(以下,G)システムにより行われてきた。顕微鏡,周辺機器などの技術開発や病態理解のめざましい発達により,難治性疾患や黄斑疾患などへと適応は広がり,裂孔原性網膜剝離のスタンダード手術の1つとしても用いられるようになった。
しかし硝子体術者は満足せず,より小さい創で低侵襲の手術という理想を追求し続けた。その結果,白内障手術が切開創の大きな計画的水晶体囊外摘出術(ECCE)から小切開自己閉鎖創による超音波白内障手術(PEA)に移行したように,硝子体手術においてもsmall gauge surgeryが広く行われるようになった。de Juanらは1990年に25ゲージ硝子体手術器具のプロトタイプを作製し2),さらに2002年に経結膜的強膜創にカニューラを設置する25G硝子体手術システムを開発した3,4)。
ゲージが小さければ小さいだけ局所での侵襲は小さくなるが,効率は低下する。例えばカッターの外径が20Gの0.9mmから25Gの0.5mmになったことで,管壁の剛性を保つため内径はより小さくなる。流体の抵抗は内半径の4乗に反比例するため切除効率は悪く手術時間は長くなり,従来のハロゲン光源では十分な照度を得られなくなった。また,眼内器具の先端の剛性低下のため「しなり」が強く操作性が悪い,先端の曲がった器具が使用できないなど,20Gシステムと比較した場合,使用できる眼内器具が制限された。
この欠点を補い,かつ経結膜無縫合手術を可能とした23Gシステムが2005年にEckardt5)により開発された。23Gシステムはシャフトの剛性が高く(図1,2)6),吸引力も20Gカッターとほぼ同等であるというデータ6)もあり,20Gに近い感覚で手術を行うことができる。以前より硝子体生検や気体網膜復位(pneumatic retinopexy)を外来手術で行う1ポートから2ポートでの経結膜無縫合硝子体手術システム(office-based vitrectomy:OVIT)として,23Gのポータブルカッターを用いた方法7)も報告されており,これを機に近年小切開硝子体手術を行う術者が急速に増えている8~12)。
ここでは,23G硝子体手術の特性およびその長所,短所を確認し,実際の手術手技を解説する。
参考文献
1)Machemer R, Buettner H, Norton EW et al:Vitrectomy:a pars plana approach. Trans Am Acad Ophthalmol Otolaryngol 75:813-820, 1971
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4)Fujii GY, De Juan E Jr, Humayun MS et al:Initial experience using the transconjunctival sutureless vitrectomy system for vitreoretinal surgery. Ophthalmology 109:1814-1820, 2002
5)Eckardt C:Transconjunctival sutureless 23-gauge vitrectomy. Retina 25:208-211, 2005
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7)Hilton GF, Josephberg R, Halperin LS et al:Office-based sutureless transconjunctival pars plana vitrectomy. Retina 22:725-732, 2002
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11)木村英也:小切開硝子体手術.松村美代(監修):図説硝子体手術.47-60,銀海舎,東京,2007
12)野田 徹・寺内直毅:硝子体手術の道具立て.田野保雄(編):みんなの硝子体手術.眼科プラクティス,53-61,文光堂,東京,2007
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14)井上 真・篠田 啓:25ゲージ硝子体手術のまとめ.眼科手術 18:373-377,2005
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