今月の表紙
黄斑円孔
著者:
福井勝彦1
根木昭2
所属機関:
1旭川医科大学眼科
2神戸大学眼科
ページ範囲:P.1843 - P.1843
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33歳,女性。2001年,両眼の疲労時小暗点と視力低下を主訴に当科を受診し,両眼に大きな黄斑円孔を認めた。視力は右0.07(0.4×-5.50D),左0.08(0.5×-5.00D),Titmusステレオテストによる立体視力は50秒と良好な視機能であった。眼圧は両眼とも11mmHgであった。両眼ともに前眼部,中間透光体に異常はなかった。眼底所見は,右眼の円孔上縁に数個の微小網膜円孔と架橋を伴った約1.2乳頭径大の黄斑円孔(a),左眼の円孔周囲に黄白色の顆粒状組織を伴う約1乳頭径大の黄斑円孔を認めた。走査型レーザー検眼鏡では,両眼ともに円孔底に一致したdense scotomaと円孔の上縁に安定した固視点を認めた。後部硝子体は未剝離であった。初診時から7か月間経過を観察し,両眼の円孔径と視力に変化がなかったため,両眼性の1乳頭径を超える大きな黄斑円孔でありながら良好な視機能をもつ1例として報告した(Takahashi A et al:Arch Ophthalmol 120, 2002)。初診時から5年3か月後,左眼の視力低下を自覚して再来した。右眼(0.2),左眼(0.05)であった。右眼の円孔径は2.2乳頭径大に拡大していた(b:表紙写真)。光干渉断層計にて円孔耳側に網膜分離,網膜剝離を認めた。左眼は1.2乳頭径大と拡大は少なかったが,アーケード血管を越える広範囲の黄斑円孔網膜剝離を発症していた。左眼に硝子体切除,後部硝子体剝離作製,SF6ガス置換を施行し,円孔は閉鎖しなかったが網膜は復位した。