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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科62巻13号

2008年12月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

手術治療からみた眼瞼解剖

著者: 柿崎裕彦

ページ範囲:P.1939 - P.1944

 眼瞼手術を行うためには,まず第一に,眼瞼の解剖を熟知しておく必要がある。近年,多数の研究によって眼瞼解剖の詳細が明らかとなってきたが,それらの知識をアップデートし,実際の手術治療に反映させることは,良好な手術結果を得るために,また安全・確実な手術を遂行するために,非常に有意義である。本稿では,上下眼瞼の解剖を,上眼瞼下垂と退行性下眼瞼内反症を例にとり,その術中所見と比較しながら解説する。

日常みる角膜疾患・69

続発性角膜アミロイドーシス

著者: 森重直行 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.1946 - P.1948

症例

 患者:50歳,女性

 現病歴:30年前,両眼の円錐角膜と診断され,以後ハードコンタクトレンズを装用していた。数年前から右眼のハードコンタクトレンズ装用が困難となり,左眼のみ装用していた。左眼はコンタクトレンズ矯正視力も不良で,精査・加療を目的に当院を紹介され受診した。受診時,視力は右0.01(0.4×HCL),左指数弁(0.1×HCL),細隙灯顕微鏡検査で左眼角膜中央部に灰白色透明の隆起性病変を認めた(図1a)。また,角膜中央部下方の実質は菲薄化していた。

 病変の隆起のためコンタクトレンズフィッティングが不良であること,灰白色混濁が視力低下の原因となっている可能性があることから,外科的に病巣搔爬を行い,病理組織学的な診断も施行した。検体の病理組織学的検索で,病変はヘマトキシリンエオジン好染で,コンゴレッド染色陽性(図2),偏光顕微鏡による緑色の複屈折が観察されたことから,病変はアミロイド物質の沈着であることが確認された。

 本症例は,患眼,僚眼ともに角膜実質の線状混濁を認めないこと,円錐角膜に対して長期間ハードコンタクトレンズを装用し円錐部に慢性刺激が加わったことが想定されることから,続発性角膜アミロイドーシスと診断した。術後,隆起性病変はみられず(図1b),視力は左0.03(0.5×HCL)と改善した。

公開講座・炎症性眼疾患の診療・21

HLA-B27関連ぶどう膜炎

著者: 南場研一 ,   北市伸義 ,   三浦淑恵 ,   大野重昭

ページ範囲:P.1950 - P.1954

はじめに

 ある疾患にかかりやすいかどうかは,さまざまな要素がかかわりあっている。これらは多因子性疾患(multifactorial disease)と呼ばれる。そのなかには生まれもっている遺伝子も含まれる。もちろん,遺伝子の異常によって発症する疾患もあるが,遺伝子そのものに異常はないが,その遺伝子により疾患感受性が規定されていることがある。その1つが抗原提示,自己認識にかかわる主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex:MHC)抗原である。MHCは個人により保有する型が異なり,ある種の型をもっている場合,ある疾患に罹りやすいことが知られている。

 糖蛋白質であるMHC抗原はヒトではヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)と呼ばれ,1954年にパリ大学のJ. Dausset(1980年ノーベル医学生理学賞受賞者)によって報告された。HLA遺伝子は第6染色体短腕に存在し,高度の遺伝的多形性がある。免疫応答制御の中心的な役割を果たし,全長約4,000kbであり,ヒトゲノム中でも早くから詳細な解析が進んでいる遺伝領域である。HLA遺伝子はその遺伝産物(HLA抗原分子)の構造上の違いからHLA-A,B,Cに代表されるクラスⅠ分子とHLA-DR,DQ,DPからなるクラスⅡ分子に分けられる。また補体関連の遺伝子をクラスⅢということもある。

 HLAクラスⅠ分子はα鎖とβ鎖のヘテロダイマーからなる膜貫通型糖蛋白で,全身の有核細胞に発現している。また,HLAクラスⅠ分子は細胞自身がもつ内在性蛋白が分解されてできたペプチドと結合し,CD8 T細胞がこれを認識して活性化する。

 一方,HLAクラスⅡ分子はα鎖とβ鎖のヘテロダイマーからなる膜貫通型糖蛋白で,B細胞,抗原提示細胞(皮膚のLangerhans細胞,樹状細胞,単球,マクロファージ)および活性化T細胞に分布している。また,HLAクラスⅡ分子は抗原提示細胞が細胞外から取り込んだ抗原を分解してできたペプチドを結合して細胞表面に発現し,これをCD4 T細胞に提示して活性化する。

 HLAクラスⅠに属するHLA-B27陽性者に相関を示す疾患はHLA-B27関連疾患と呼ばれる(表1)。なかでも強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)の90%がHLA-B27陽性である。HLA-B27陽性者は急性前部ぶどう膜炎(acute anterior uveitis:AAU)を発症することがあり,HLA-B27関連ぶどう膜炎あるいはHLA-B27関連前部ぶどう膜炎と呼ぶ。

 HLA-B27のサブタイプとして現在までにB2701からB2723が同定されており,白人ではB2705が,また日本人ではB2704が強直性脊椎炎や前部ぶどう膜炎との関連が高いこと,クラスⅡのHLA-DR12やHLA-DR1が前部ぶどう膜炎に何らかの影響を有するという報告もある1)

網膜硝子体手術手技・24

黄斑円孔網膜剝離(1)

著者: 浅見哲 ,   寺崎浩子

ページ範囲:P.1956 - P.1960

はじめに

 難治性疾患のなかの1つである黄斑円孔網膜剝離(図1)の治療法は,さまざまな変遷をたどってきた。

 初期には黄斑部バックリング1),硝子体内ガス注入2),単純硝子体切除術3)などが試みられた。その発症に後部硝子体皮質の接線方向の牽引がかかわっていることがわかってくると硝子体皮質の除去が行われたが,トリアムシノロンアセトニド(ケナコルトA®)を用いた硝子体の可視化により,硝子体皮質のより確実な除去ができるようになってきた。さらに完全な硝子体皮質の除去や,黄斑部網膜の柔軟性の獲得を目的に,内境界膜剝離を行うことが一般的となってきており4),以前よりは手術成績がよくなってきている。

 しかし手術予後が向上したといっても,いまだ難治であることに変わりはなく,また手技的にも高度なテクニックを要する疾患である。本号と次号にわたり黄斑円孔網膜剝離の手術治療について述べる。

もっと医療コミュニケーション・12

温かい医師は姿勢と動作でわかる―「動作学」の活用法

著者: 佐藤綾子 ,   綾木雅彦

ページ範囲:P.1964 - P.1967

 私たちは人の話を聞いていて,その話がおもしろければ身を乗り出し,目の前の相手のことが心配になれば斜め下から相手の顔を覗き込むようにして,目の色を窺おうとします。相手の話に退屈すれば,ついつい貧乏ゆすりを始めたりします。体は正直なのです。

 このような体の動き全般を研究する学問分野を「動作学(キネシクス)」といいます。「キネ(kine)」はラテン語の「動く」から発生しています。「映画」の「シネマ(cinema)」も,もともとは「キネマ(kinema)」から発生したもので,運動学は「キネマティックス(kinematics)」,テレビ用のブラウン管は「キネスコープ(kinescope)」という具合です。

臨床報告

片眼の錐体機能異常を呈したacute zonal occult outer retinopathy様症例

著者: 児玉良太郎 ,   照屋健一 ,   新井三樹 ,   山川良治

ページ範囲:P.1989 - P.1993

要約 目的:求心性視野狭窄と強い錐体機能障害がある片眼性のacute zonal occult outer retinopathy(AZOOR)が疑われる症例の報告。症例:12歳男子が2年前からの左眼視力低下,視野異常,光視症で受診した。所見:矯正視力は右1.2,左0.8で,両眼とも前眼部から眼底まで異常がなかった。フルオレセイン蛍光眼底造影は正常で,限界フリッカ値も正常所見を呈した。左眼の相対的瞳孔求心路障害(RAPD)は陽性で,Humphrey視野検査で左眼に求心性狭窄があった。網膜電図(ERG)では左眼の錐体反応,多局所ERGの応答,30Hzフリッカ応答が著しく減弱していた。結論:本症例では著しい錐体機能障害が左眼にあることが電気生理学的検査で確認され,臨床所見からAZOORの1型と推定される。

眼瞼浮腫を主徴とした伝染性単核症の2例

著者: 伊佐敷靖 ,   井口昭久 ,   三宅養三

ページ範囲:P.1995 - P.1998

要約 目的:眼瞼浮腫を主訴として眼科を受診した伝染性単核症の2症例の報告。症例:2例とも19歳女性で,両症例とも両側の上眼瞼浮腫と球結膜充血があった。1例には片眼の球結膜に赤色の隆起性病変があった。眼瞼浮腫と前後して倦怠感と発熱があった。視機能は良好で,眼内に異常所見はなかった。高度の肝機能異常と異型リンパ球の増加があり,伝染性単核症が疑われた。1例ではEpstein-Barr(EB)ウイルス関連抗体の検査で,抗virus capsid antigen(VCA)IgGと抗EB VCA IgMがともに160倍の高値であった。他の1例には抗体検査を行わなかった。眼病変は2症例とも発症から約2週間で寛解した。結論:若年者に両側の眼瞼浮腫があり,発熱と倦怠感を伴うときには伝染性単核症の可能性がある.

ラタノプロストの併用薬剤としてのチモロールXE,ブリンゾラミドおよびブナゾシンの降圧効果の比較

著者: 小林博 ,   小林かおり

ページ範囲:P.1999 - P.2002

要約 目的:ラタノプロストに併用するチモロールXE,ブリンゾラミド,ブナゾシンの眼圧下降効果の比較。対象と方法:眼圧が21mmHg以上の開放隅角緑内障で,6か月以上のラタノプロスト点眼でさらに眼圧下降が必要と判断された45例45眼を対象とした。年齢は42~81歳(平均70歳)である。ラタノプロスト点眼開始前の平均眼圧は22.9mmHg,点眼後の平均眼圧は18.0mmHgであった。各15眼にチモロールXE,ブリンゾラミド,ブナゾシンの追加点眼を行い,眼圧の変化を12週間観察した。点眼開始前は3群間に眼圧の有意差はなかった。結果:12週間後の眼圧下降は,チモロールXE群2.0±0.8mmHg,ブリンゾラミド群2.2±0.7mmHg,ブナゾシン群1.4±0.8mmHgで,前2群での眼圧下降はブナゾシン群よりも有意に大きかった(チモロールXE:p=0.0494,ブリンゾラミド:p=0.00693)。結論:ラタノプロストで加療中の開放隅角緑内障にチモロールXEまたはブリンゾラミドを12週間追加点眼すると,ブナゾシン点眼よりも有意に大きく眼圧が下降する。

先天白内障に後天的に発症した膜白内障の1例

著者: 橋本昌美 ,   三木淳司 ,   水澤由香 ,   長井慎吾 ,   高木峰夫 ,   吉澤豊久 ,   阿部春樹

ページ範囲:P.2003 - P.2005

要約 目的:両眼に先天白内障があり,4歳時に膜白内障になった症例の報告。症例:出生直後から白色瞳孔が左眼にある男児を生後2か月で診察し,両眼を先天白内障と診断した。混濁が強い左眼は生後3か月で水晶体を摘出した。生後2年目から右眼の水晶体が扁平化し,強度遠視になった。右眼に内斜視と眼振が生じ,膜白内障になったため,4歳時に水晶体を摘出した。7歳になった現在の矯正視力は右0.3,左1.0である。結論:出生時に先天白内障があり,混濁が軽度で水晶体の形態異常がなくても,稀に膜白内障になることがある。

各種外眼部感染症に対する抗菌点眼剤レボフロキサシン点眼液(クラビット®点眼液0.5%)の使用成績調査

著者: 神田佳子 ,   加山智子 ,   岡本紳二 ,   橋本公子 ,   石田智恵美 ,   柳井知子 ,   福本充 ,   國廣英一

ページ範囲:P.2007 - P.2017

要約 目的:0.5%レボフロキサシン点眼液(クラビット®点眼液0.5%)の使用実態下での安全性と有効性の確認。対象と方法:契約した医療機関でレボフロキサシン点眼液を新規に投与された症例を対象とした。医療機関が調査票に記入した使用状況,患者背景,有害事象などを解析した。調査は2000年から2004年まで,3回に分けて実施した。結果:808施設から6,760例の調査票が得られた。副作用は6,686例中42例(0.63%)に発現した。眼瞼炎7例,眼刺激6例などであり,いずれも重篤ではなかった。5,929例中5,660例(95.5%)で有効であり,経年的な有効率の低下はなかった。結論:レボフロキサシン点眼液は市販後の使用実態下でも安全かつ有効であり,各種外眼部の感染症の治療に有用であると判断される。

加齢黄斑変性に対する光線力学療法の評価

著者: 小島正嗣 ,   松浦豊明 ,   湯川英一 ,   太田丈生 ,   小林武史 ,   原嘉昭

ページ範囲:P.2019 - P.2023

要約 目的:滲出型加齢黄斑変性に対する光線力学療法の報告。対象と方法:中心窩下に脈絡膜新生血管がある広義の加齢黄斑変性49例51眼を対象とした。フルオレセイン蛍光造影による分類で,predominantly classicが7眼(14%),minimally classicが18眼(35%),occult with no classicが26眼(51%)であった。全例を1年以上観察し,2段階以上の視力の変化を改善または悪化とした。結果:視力は51眼中10眼(20%)で改善,27眼(53%)で不変,14眼(27%)で悪化した。ポリープ状脈絡膜血管症7眼については,改善が4眼(57%),不変が2眼(29%),悪化が1眼(14%)であった。結論:滲出型加齢黄斑変性に対する光線力学療法では,約70%の症例で視力の改善または維持が得られた。本療法はポリープ状脈絡膜血管症に対しても有効であった。

カラー臨床報告

網膜静脈分枝閉塞症に続発した黄斑浮腫に対するベバシズマブ硝子体内注入後8か月間経過を追えた1例

著者: 正井晶子 ,   林孝彰 ,   竹内智一 ,   月花環 ,   酒井勉 ,   渡辺朗 ,   常岡寛

ページ範囲:P.1975 - P.1982

要約 目的:網膜静脈分枝閉塞症に続発した黄斑浮腫に対しベバシズマブの硝子体注入を行った症例の8か月間の経過報告。症例と経過:40歳男性が2日前からの左眼変視症と視野異常で受診した。矯正視力は右1.5,左1.2であり,左眼に黄斑浮腫を伴う網膜静脈分枝閉塞症の所見があった。5か月後に黄斑浮腫のため視力が0.5に低下し,ベバシズマブの硝子体注入を行った。光干渉断層計による中心窩厚が減少し,4週間後に視力が1.0に改善した。その5週間後に変視症が増悪し,中心窩厚が増加し,ベバシズマブの第2回注入を行った。自覚症状と黄斑所見は急速に改善した。初回治療から8か月後の現在,視力は1.2に維持されている。結論:網膜静脈分枝閉塞症に続発した黄斑浮腫に対してベバシズマブの硝子体注入を2回行い,視力低下,黄斑浮腫,多局所網膜電図の応答密度が改善した。

朝顔症候群に伴う網膜剝離の3例

著者: 中須賀大二郎 ,   有田量一 ,   松本博善 ,   望月泰敬 ,   江内田寛 ,   上野暁史 ,   畑快右 ,   石橋達朗

ページ範囲:P.1983 - P.1988

要約 目的:網膜剝離を伴う朝顔症候群3例3眼に硝子体手術を行った前後の所見と病理学的所見からその成因について考察する。症例と経過:8歳女児,16歳女性,23歳男性に朝顔症候群が片眼にあり,黄斑を含む広範囲な網膜剝離があった。硝子体手術を行い,うち2眼に乳頭の漏斗状陥凹内の萎縮巣に裂孔があり,網膜剝離の原因と推定された。病理組織学的に乳頭陥凹部の中央にある白色組織はコラーゲン線維に富む結合組織であったが,牽引性網膜剝離を示唆する筋線維芽細胞はなかった。結論:朝顔症候群に伴う網膜剝離では,その成因として裂孔形成が関与する事例があり,裂孔形成には網膜の萎縮性変化が関与する可能性がある。

今月の表紙

進行性網膜外層壊死

著者: 水澤剛 ,   寺崎浩子

ページ範囲:P.1945 - P.1945

 症例は47歳,男性。2006年5月にヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症,水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)性髄膜炎,トキソプラズマ脳症,水痘の診断で,当院臨床検査科へ入院した。同年9月当科にて,HIV感染に伴う眼合併症の精査を行ったが異常所見は認めなかった。同年10月右眼の視野狭窄を自覚し,再度当科を受診した。受診時,矯正視力は右0.8,左1.2,眼圧は両眼ともに8mmHg,右眼前房炎症細胞(2+)を認め,左眼には異常はなかった。眼底は,右眼に広範囲な浸潤病巣および網膜出血を認め,左眼は耳側周辺部に2,3か所の白点状病巣を認めた。精査の結果,前房水よりVZV DNAが検出され,進行性網膜外層壊死(progressive outer retinal necrosis:PORN)と診断され現在加療中である。写真は,そのときの右眼である。

 撮影は,興和社製の眼底カメラPro-3を用い画角50°で行った。画像加工にはAdobe社のPhotoshop Elements 2.0を用い,眼底像のみを抽出し,画像重複部分を不透明度20%の消しゴムツールで消し,28枚から形成した。色調を均一に撮影するのに非常に苦労した1症例である。

やさしい目で きびしい目で・108

私も保因者

著者: 中村かおる

ページ範囲:P.1963 - P.1963

 私は1型2色覚の保因者である。父が色覚異常であることは長男出産後に告白されるまでまったく気づかなかったが,わが子の色誤認にはすぐに気づいた。色名を覚えるのが遅く,紺色のTシャツを紫,えんじ色のさいころを黒と言い,TVゲームのお絵かき遊びでオレンジや茶と緑を混在させた。1/2の確率と理解していても,わが子への遺伝を目の当たりにしたときはショックであった。

 初めはどうしていいかわからなかった。傷つけないようにと思いながらも,時には誤りを正さずにはいられなかったし,お絵かきなど予測される失敗に備えてそれとなく教えたりした。

ことば・ことば・ことば

素粒子

ページ範囲:P.1971 - P.1971

 どんなに風変わりな単語でも,しばらくたつとそれが当たり前のような気になるものです。

 ノーベル賞で有名になったクォークもその例ですが,日常べつに気にしないで使っているリットルもその語源を知りたくなります。

べらどんな

エジプト眼病

著者:

ページ範囲:P.2017 - P.2017

 病名に地名がついている例は多い。スペイン風邪は1918年から大流行したインフルエンザだし,イギリスでFrench diseaseと言えば梅毒を意味する。そのなかで眼科にもっとも関係が深いのが「エジプト病」である。

 トラコーマはヨーロッパでも古代ギリシャの時代からあったが,慢性疾患であり,あまり注目をされていなかった。これが大問題になったのは19世紀に入ってからである。

文庫の窓から

『和剤局方』

著者: 中泉行弘 ,   林尋子 ,   安部郁子

ページ範囲:P.2024 - P.2026

徽宗皇帝の勅撰治方書

 宋代,進んだ印刷技術を背景にして,多くの医学書が刊行されたことはよく知られている。北宋の時代だけでも,第2代太宗の時に『太平聖恵方』と『神医普救方』,第4代仁宗の時は『慶暦善救方』と『簡要済衆方』,第6代神宗の時には『太医局方』,そして第8代徽宗は今回取り上げる『和剤局方』と『聖済総録』を刊行させている。

 唐の滅亡後,時代は混乱に向かったが,社会制度はある程度唐の時代のままに残されていたらしい。宋代に入って第6代神宗の元豊年間(1078-1085),財政の充実をみた頃から官制の大改革が始まり医療体制や保険衛生に関する事業も行われたようである。

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あとがき

著者: 寺崎浩子

ページ範囲:P.2036 - P.2036

 今年もついに師走を迎えてしまいました。学会原著の掲載も終わり,本号では,一般原著といつもの連載をゆったりとご覧いただけるかと思います。毎号おなじみになった「日常みる角膜疾患」「公開講座・炎症性眼疾患の診療」「網膜硝子体手術手技」の連載は,それぞれ69回目,21回目,24回目を迎えており,引き続き充実した教育内容を執筆していただいております。「医師のためのパフォーマンス学」も7回目となり,皆様の診療スタンスにも若干の変化をもたらしたでしょうか?

 小児科医の不足が叫ばれていますが人口10万人あたりの眼科医の数はもっと少なく,65歳以上の患者の占める割合が特に他科に較べて多い眼科において,高齢者の増加は医師不足をきたしており,眼科も外科系であるという印象を免れないところです。医師の分布と同様,眼科医においても分布は西高東低ですが,何十人もの新患を1日に診察する医師も稀ではありません。勤務医では外来診察,検査,レーザー治療,手術,他科の患者の回診,書類書きと,一人で多くの仕事をこなさなくてはならない医師も多く,勉強や研究をする時間をつくるのは容易ではありません。病院ではコメディカルの数も十分とはいえず忙しい毎日ですが,その一方で,診療の質を確保していくことが眼科の発展に寄与することにほかなりません。足早に変わっていく眼科診療についていくために生涯教育講座が必要なわけです。

 本号は,今年最終号で巻末に総目次を設けてありますので,これも何とぞご活用ください。それでは,どうぞ来年も皆様にとってご発展の年でありますようにお祈りいたします。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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