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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科62巻13号

2008年12月発行

文献概要

連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・21

HLA-B27関連ぶどう膜炎

著者: 南場研一1 北市伸義1 三浦淑恵1 大野重昭1

所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科医学専攻感覚器病学講座眼科学分野

ページ範囲:P.1950 - P.1954

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はじめに

 ある疾患にかかりやすいかどうかは,さまざまな要素がかかわりあっている。これらは多因子性疾患(multifactorial disease)と呼ばれる。そのなかには生まれもっている遺伝子も含まれる。もちろん,遺伝子の異常によって発症する疾患もあるが,遺伝子そのものに異常はないが,その遺伝子により疾患感受性が規定されていることがある。その1つが抗原提示,自己認識にかかわる主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex:MHC)抗原である。MHCは個人により保有する型が異なり,ある種の型をもっている場合,ある疾患に罹りやすいことが知られている。

 糖蛋白質であるMHC抗原はヒトではヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)と呼ばれ,1954年にパリ大学のJ. Dausset(1980年ノーベル医学生理学賞受賞者)によって報告された。HLA遺伝子は第6染色体短腕に存在し,高度の遺伝的多形性がある。免疫応答制御の中心的な役割を果たし,全長約4,000kbであり,ヒトゲノム中でも早くから詳細な解析が進んでいる遺伝領域である。HLA遺伝子はその遺伝産物(HLA抗原分子)の構造上の違いからHLA-A,B,Cに代表されるクラスⅠ分子とHLA-DR,DQ,DPからなるクラスⅡ分子に分けられる。また補体関連の遺伝子をクラスⅢということもある。

 HLAクラスⅠ分子はα鎖とβ鎖のヘテロダイマーからなる膜貫通型糖蛋白で,全身の有核細胞に発現している。また,HLAクラスⅠ分子は細胞自身がもつ内在性蛋白が分解されてできたペプチドと結合し,CD8 T細胞がこれを認識して活性化する。

 一方,HLAクラスⅡ分子はα鎖とβ鎖のヘテロダイマーからなる膜貫通型糖蛋白で,B細胞,抗原提示細胞(皮膚のLangerhans細胞,樹状細胞,単球,マクロファージ)および活性化T細胞に分布している。また,HLAクラスⅡ分子は抗原提示細胞が細胞外から取り込んだ抗原を分解してできたペプチドを結合して細胞表面に発現し,これをCD4 T細胞に提示して活性化する。

 HLAクラスⅠに属するHLA-B27陽性者に相関を示す疾患はHLA-B27関連疾患と呼ばれる(表1)。なかでも強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis:AS)の90%がHLA-B27陽性である。HLA-B27陽性者は急性前部ぶどう膜炎(acute anterior uveitis:AAU)を発症することがあり,HLA-B27関連ぶどう膜炎あるいはHLA-B27関連前部ぶどう膜炎と呼ぶ。

 HLA-B27のサブタイプとして現在までにB2701からB2723が同定されており,白人ではB2705が,また日本人ではB2704が強直性脊椎炎や前部ぶどう膜炎との関連が高いこと,クラスⅡのHLA-DR12やHLA-DR1が前部ぶどう膜炎に何らかの影響を有するという報告もある1)

参考文献

1)丸山耕一:急性前部ぶどう膜炎.岡田アナベルあやめ(編):眼科プラクティス16.眼内炎症診療のこれから.136-139,文光堂,2007
2)Chang JH, McCluskey PJ, Wakefield D:Acute anterior uveitis and HLA-B27. Surv Ophthalmol 50:364-388, 2005
3)北市伸義・三浦淑恵・大野重昭:ヘルペス虹彩毛様体炎.臨眼 62:1430-1435,2008
4)宮崎晶子・北市伸義・大野重昭:Posner-Schlossman症候群.臨眼 61:2000-2003,2007
5)北市伸義・大野重昭:虹彩炎.樋田哲夫(編):眼科プラクティス7.糖尿病眼合併症の治療指針.162-164,文光堂,2006
6)Martin TM, Zhang G, Luo J et al:A locus on chromosome 9p predisposes to a specific disease manifestation, acute anterior uveitis, in ankylosing spondylitis, a genetically complex, multisystem, inflammatory disease. Arthritis Rheum 52:269-274, 2005
2705 is the predominant subtype in the Korean population with ankylosing spondulitis, unlike other Asians. Rheumatol Int(in press)
8)北市伸義・合田千穂・宮崎晶子・他:サルコイドーシス.臨眼 62:444-449,2008
9)小竹 聡・大野重昭・麻生伸一・他:HLA-B27陽性のぶどう膜炎の臨床像.臨眼 40:589-592,1986
10)南場研一・小竹 聡・笹本洋一・他:HLA-B27関連ぶどう膜炎の臨床像.臨眼 50:1811-1814,1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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