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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科62巻2号

2008年02月発行

文献概要

臨床報告 カラー臨床報告

経時的な病巣の移動が観察された眼トキソカラ症の1例

著者: 松山加耶子1 垰本慎2 西村哲哉1 萩原実早子1 松村美代2

所属機関: 1関西医科大学附属滝井病院眼科 2関西医科大学附属枚方病院眼科

ページ範囲:P.173 - P.178

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要約 目的:経時的に病巣が移動し,眼トキソカラ幼虫によると推定された症例の報告。症例:ネコとイヌを飼っている67歳女性が5週間前からの左眼飛蚊症で受診した。所見と経過:矯正視力は左右眼とも1.5であった。左眼の中心窩耳上側に滲出巣があった。血清梅毒反応が陽性,トキソプラズマ抗体は陰性であった。2週間後に病巣が移動し,その跡が萎縮化していた。光干渉断層計(OCT)で病変部に半球形に隆起した高反射層があった。初診から8週間後に病巣はさらに移動したのでレーザー光凝固を行った。その3日後にさらに病巣が移動したので光凝固を追加した。その7か月後に病巣がさらに隆起していたが,6か月後に隆起が減少し,その15か月後に病巣が平坦化していることがOCTで確認された。視力は全経過中良好であり,眼内炎の所見はなかった。結論:所見と経過から本症は眼移行型のトキソカラ幼虫症であると推定される。診断にはOCT検査が有用であった。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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