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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科62巻8号

2008年08月発行

雑誌目次

特集 第61回日本臨床眼科学会講演集(6) 原著

微小視野計MP-1で測定した偏心固視症例における固視と視力,読書能力との関係

著者: 陳進志 ,   涌澤亮介 ,   阿部俊明 ,   吉田まどか ,   佐藤肇 ,   國方彦志 ,   宮沢弘史 ,   助川真里絵 ,   西田幸二

ページ範囲:P.1245 - P.1249

要約 目的:非典型偏心固視者の遠見視力と読書能力と,固視状況との相関の報告。対象と方法:中心暗点がある17例21眼を対象とした。男性12例,女性5例で,年齢は31~92歳(平均67歳)である。9例が加齢黄斑変性であった。MN read-Jで最大読書速度,微小視野計MP-1で固視偏心度と固視安定度を測定した。遠見視力はlogMARで評価した。結果:視力は0.5~1.5(平均0.95)で,最大読書速度は毎分6.4~225字(平均93字)であった。固視偏心度は1.1~15.5°(平均6.0°),固視安定度は直径2°で11~98%(平均57.6%)であった。視力と最大読書速度は,固視偏心度と有意な相関があった。最大読書速度と4°での固視安定度には弱い相関があり,視力とは相関しなかった。結論:中心暗点がある偏心固視者の視力と読書能力は,固視安定度よりも固視偏心度が強く相関する。

白内障術後遅発性眼内炎における菌検出のための検体採取部位

著者: 佐々木満 ,   佐々木香る ,   園山裕子 ,   風間成泰 ,   川崎勉 ,   出田秀尚

ページ範囲:P.1251 - P.1254

要約 目的:白内障術後に発症した遅発性眼内炎の起因菌を検出するための検体採取部位の検討。対象と方法:79歳男性,73歳女性,86歳女性の3例3眼を対象とした。眼内炎は,白内障手術のそれぞれ6か月,3か月,4か月後に発症した。検体は前房水,水晶体囊,眼内レンズ,硝子体液,手術時の灌流貯留液から採取し,好気培養と嫌気培養を行った。水晶体囊は塗抹標本としても検索した。結果:起因菌として,1例で硝子体液の嫌気培養のみでPropionibacterium acnes,2例で水晶体囊の嫌気培養のみでP. acnesとコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が検出された。水晶体囊の塗抹標本には多数の起因菌が確認された。結論:白内障術後に遅発した眼内炎での起因菌の検出では,水晶体囊からの検体採取が第一選択である。

眼球運動障害から発症し肥厚性硬膜炎を合併した難治性強膜炎の1例

著者: 石塚哲也 ,   篠崎和美 ,   大平明彦 ,   小野由子 ,   古谷達之 ,   陳麗理 ,   堀貞夫

ページ範囲:P.1255 - P.1261

要約 目的:眼球運動障害で初発し,肥厚性硬膜炎に併発した強膜炎の症例の報告。症例:75歳女性に,3週間前から右眼の眼瞼下垂,内転と下転障害,強膜炎があった。動眼神経不全麻痺と診断し,ステロイドとシクロスポリン点眼を開始した。1か月後に後部強膜炎が発症し,初診から2か月後に視神経周囲炎が起こり,視力が0.1に低下した。造影磁気共鳴画像検査(MRI)で肥厚性硬膜炎が発見された。プレドニゾロンのセミパルス療法で徐々に寛解し,眼瞼下垂,複視,強膜炎は消退し,視力が0.8に改善した。結論:強膜炎に動眼神経麻痺や頭痛が併発するときには,肥厚性硬膜炎の可能性がある。本症例では造影磁気共鳴画像検査が有用であった。

加齢黄斑変性に対する光線力学療法後に生じた脈絡膜循環障害の視力への影響

著者: 井上麻衣子 ,   鈴木美砂 ,   荒川明 ,   中原将光 ,   渡邉洋一郎 ,   門之園一明

ページ範囲:P.1263 - P.1268

要約 目的:加齢黄斑変性に対する光線力学療法後に起こる脈絡膜循環障害の検討。対象と方法:加齢黄斑変性に対し,初回治療として光線力学療法を行い,1回の照射で脈絡膜新生血管が鎮静化し,6か月以上の経過が追えた45例46眼を対象とした。男性35眼,女性11眼であり,年齢は50~86歳(平均73歳)である。照射の3か月後にインドシアニングリーン蛍光造影を行い,照射部と一致する低蛍光を示す低蛍光群と,そうでない非低蛍光群に分けた。視力はlogMARで評価した。結果:低蛍光群が18眼(39%),非低蛍光群が28眼(61%)であった。最終矯正視力の0.3以上の低下が,低蛍光群中5眼(28%),非低蛍光群中1眼(4%)にあった。2群間には有意差があった(p<0.05)。結論:加齢黄斑変性に対する光線力学療法では,脈絡膜循環障害が続発し視力障害が起こる可能性がある。

非典型的所見を呈した脈絡膜腫瘍の2例

著者: 鈴木茂伸 ,   佐野秀一

ページ範囲:P.1269 - P.1273

要約 目的:非典型的な臨床所見を呈した脈絡膜腫瘍の2症例の報告。症例:1例は57歳男性,他の1例は60歳女性である。1例には径17mmの脈絡膜腫瘍があり,軽度の色素沈着があった。磁気共鳴画像検査(MRI)のT2画像でやや高い信号を示した。放射性ヨードを使う123I IMP SPECTでは眼部が陽性であり,悪性黒色腫が疑われた。陽電子放射断層撮影(PET)で右肺の小細胞癌が発見され,転移性腫瘍と診断した。他の1例には径15mmの灰白色腫瘤があり,MRIのT2画像で不均一な信号を示した。123I IMP SPECTでは眼部が陽性であり,眼球を摘出し悪性黒色腫と判明した。結論:脈絡膜の悪性黒色腫は,眼底所見とともに,MRIや核医学検査の結果などを合わせて総合的に診断する必要がある。

アクリル眼内レンズの術後の屈折度変化の検討

著者: 島田一男 ,   高良由紀子 ,   小出良平 ,   井上浩太

ページ範囲:P.1275 - P.1278

要約 目的:アクリル眼内レンズの術後予想屈折度の精度と術後屈折度の変化の報告。対象と方法:過去45か月間に小切開白内障手術を行い,術後2か月後まで経過を追えた237眼を対象とした。術後矯正視力が0.6未満と,乱視が±2D以上のものは除外した。術前の屈折予想にはSRK/T式を用いた。眼内レンズには4種類を用いた。結果:術前の予想屈折度と術後の屈折度との違いは,4種類すべての眼内レンズの90%以上が±1.0D以内にあり,眼軸長とは無関係であった。屈折度は術後1週目と2か月後とで有意差はなかった。結論:使用した4種類の眼内レンズではSRK/T式が有用であり,術後早期から安定した屈折度が得られる。

眼部帯状疱疹に続発した全眼筋麻痺

著者: 佐藤里奈 ,   山田麻里 ,   玉井一司

ページ範囲:P.1279 - P.1283

要約 目的:眼部帯状疱疹の経過中に全眼球麻痺が発症した症例の報告。症例:62歳男性が3日前からの右側帯状疱疹として紹介された。右眼に角膜ぶどう膜炎があり,抗ウイルス薬,抗菌薬,ステロイドの局所投与で炎症は軽快した。発症から19日目に右側の眼窩周囲痛,眼瞼下垂,散瞳,全方向の眼球運動障害が生じた。磁気共鳴画像検査(MRI)で右海綿静脈洞部にガドリニウムによる増強効果があり,海綿静脈洞の病変による全眼筋麻痺と診断した。ステロイドと抗ウイルス薬の全身投与を行い,3か月後に眼球運動障害が消失し,4か月後のMRIで海綿静脈洞部の増強効果が消失した。結論:本症例では三叉神経の炎症が海綿静脈洞部で動眼神経と外転神経に波及した可能性がある。診断と治療効果の判定にMRIが有用であった。

潰瘍性大腸炎に併発したカンジダ角膜炎の1例

著者: 梶原淳 ,   小沢昌彦 ,   野田美登利 ,   内尾英一

ページ範囲:P.1285 - P.1288

要約 目的:カンジダ角膜炎が経過中に発症した潰瘍性大腸炎の症例の報告。症例と経過:68歳男性が潰瘍性大腸炎と診断され,プレドニゾロン内服と中心静脈栄養(IVH)が行われた。治療開始から5週間後に血液培養でCandida albicansが検出された。両眼に角膜後面沈着物があり,前部ぶどう膜炎と診断した。ステロイド剤の点眼と抗真菌薬の全身投与で眼所見は寛解した。11か月後に膿瘍と前房蓄膿を伴う角膜潰瘍が右眼に発症した。擦過物からC. albicansが検出された。抗真菌薬の点眼と内服で6週間後に瘢痕治癒した。結論:カンジダ血症では,軽症の前眼部ぶどう膜炎が長期間続いたのちに真菌性角膜炎が生じうることを本症例は示している。

特発性眼窩炎症に虚血性視神経症を合併したと思われる1例

著者: 久保田文洋 ,   安川力 ,   松原明久 ,   鈴木景子 ,   塚本比奈子 ,   小椋祐一郎

ページ範囲:P.1289 - P.1292

要約 目的:虚血性視神経症と推定される病変が特発性眼窩炎症に併発した症例の報告。症例:71歳男性の左眼に結膜充血と浮腫が生じ,眼窩蜂窩織炎が疑われた。12日後に受診し,特発性眼窩炎症が疑われた。矯正視力は右2.0,左0.01であり,左眼に眼球突出,眼球運動障害,臨界融合周波数の低下があった。磁気共鳴画像検査(MRI)で下直筋腫脹があった。プレドニゾロン内服で3日後から視力が改善し,5日目に0.7,9日目に1.0になった。受診から2週間後に下方水平性半盲が検出された。視野異常は視力が回復した1年後の現在まで持続している。結論:本症例では,特発性眼窩炎症に後部虚血性視神経症が合併した可能性があるが,他の全身性疾患も否定できない。

インフリキシマブの早期導入で良好な経過を示しているBehçet病ぶどう膜炎の症例

著者: 恒川日南子 ,   雑喉正泰 ,   岩城正佳 ,   向井知之 ,   山村昌弘

ページ範囲:P.1293 - P.1296

要約 目的:Behçet病患者のぶどう膜炎に対しインフリキシマブの早期投与をした症例の報告。症例と方法:Behçet病ぶどう膜炎がある3症例にインフリキシマブの全身投与を行った。29歳男性,28歳女性,27歳男性である。インフリキシマブ投与は,1例は前房蓄膿の初回発作から5日目,1例は7か月前からの陰部潰瘍と口内炎のあとに生じた片眼性前房蓄膿の初回発作の翌日,1例は6年前から口腔アフタと両眼のぶどう膜炎が続いたのちに開始した。結果:早期投与を行った2例では眼発作の再発がそれぞれ9か月間と8か月間はなく,視力と全身状態が改善した。病変が長期間続いていた1例では,眼発作が再発し視力は変化しなかった。3症例ともインフリキシマブ投与による重篤な副作用はなかった。結論:Behçet病でぶどう膜炎が悪化する前のインフリキシマブ投与は,少数例を短期観察した限り,安全かつ有効であった。視機能維持のために早期導入が望まれる可能性がある。

高度の閉塞性血管炎を合併した樹氷状血管炎の1例

著者: 柳橋まどか ,   馬場隆之 ,   四倉次郎 ,   渡邊満野 ,   山本修一

ページ範囲:P.1297 - P.1301

要約 目的:両眼に閉塞性血管炎を伴う樹氷状血管炎の症例の報告。症例:60歳男性。視力低下が3日の差で両眼に突発し,発症から5日後に受診した。所見:矯正視力は右0.03,左0.08であり,両眼に前部ぶどう膜炎の所見があり,軽度の硝子体混濁,乳頭の発赤,出血斑の散在を伴う動脈の白鞘化があった。フルオレセイン蛍光眼底造影で,動静脈からの蛍光漏出と部分的な血管閉塞があった。前房水からウイルスは検出されなかった。アシクロビル点滴,副腎皮質ステロイドの内服とパルス療法を行い,病変が鎮静化し,初診から7か月後に両眼とも0.6の視力を得た。結論:本症例は急性網膜壊死に似た所見を呈したが,樹氷状血管炎であったと推定される。炎症の鎮静化にステロイドパルス療法が有効であった。

ガラクトシアリドーシス(晩期乳児型)の眼所見

著者: 多島朋子 ,   河田博 ,   幸田富士子 ,   梅田陽 ,   高橋理香 ,   蒔田浩司 ,   石橋健 ,   土田展生 ,   北野滋彦

ページ範囲:P.1303 - P.1307

要約 目的:晩期乳児型ガラクトシアリドーシスの症例の報告。症例:2歳9か月の男児が精査の目的で小児科から紹介された。妊娠と出産は正常で,血族結婚ではなく,8歳の姉は正常である。精神・運動発達が遅く,ガーゴイル様の顔貌を呈していた。白血球のβガラクトシダーゼの活性が低下し,皮膚線維芽細胞のカテプシンA,βガラクトシダーゼとシアリダーゼの活性低下があり,ガラクトシアリドーシスと診断されていた。所見:両眼に軽度の視神経萎縮と桜実紅斑があった。5歳になるまで眼底所見に大きな変化はなく,矯正視力は左右とも0.1のままであった。結論:本症例での視力障害は,ガラクトシアリドーシスに続発した黄斑機能の障害と視神経萎縮が主原因であると推定される。

下直筋欠損の1例

著者: 渡邊智子 ,   松尾俊彦 ,   古瀬尚 ,   長谷部聡 ,   柳川俊博 ,   清水敏成 ,   大月洋

ページ範囲:P.1309 - P.1314

要約 目的:下直筋欠損が高齢になって発見された症例の報告。症例:73歳女性が幼時からあった右眼の上転が顕著化したため受診した。所見:矯正視力は右0.1,左0.8であり,第1眼位で右眼が上外側に偏位し,上方以外の5方向に眼球運動制限があり,潜伏眼振があった。磁気共鳴画像検査(MRI)で右眼の下眼筋が欠損し,上直筋と眼瞼挙筋に萎縮があり,内直筋の後部にくびれがあった。ARIXPHOX2B遺伝子エクソンの塩基変化はなかった。右眼に水平筋移動術を行い,眼位が正常化し,右眼視力が0.7pに上昇した。過去の報告例:日本では下直筋欠損につき16例の報告がある。男性4例,女性8例,不明4例で,小角膜,小眼球,瞳孔偏位,脈絡膜欠損などが併発している。結論:下転障害の症例では,MRIや牽引試験を行い,下直筋欠損と鑑別する必要がある。

内斜視で発見された福山型筋ジストロフィの1例

著者: 青松圭一 ,   阿部考助 ,   國吉一樹 ,   下村嘉一 ,   山本肇 ,   伊豆亜加音 ,   柳田英彦

ページ範囲:P.1315 - P.1318

要約 目的:内斜視を契機として発見された筋ジストロフィ症例の報告。症例:生後3か月の女児が内斜視として受診した。41週の正常分娩で生下時体重は3,182gであった。所見:両眼に視神経萎縮と網脈絡膜変性があった。小児科の検索で四肢筋力の低下,血清CPKの高値,磁気共鳴画像検査(MRI)での両側大脳半球の多小脳回と小脳の囊胞形成,上腕二頭筋の筋破壊があり,先天性筋ジストロフィが疑われた。遺伝子検査で福山型先天性筋ジストロフィの診断が確定した。結論:内斜視は福山型先天性筋ジストロフィの初発症状であり得る。

結膜上皮内癌に対する5フルオロウラシル点眼治療

著者: 服部昌子 ,   清水一弘 ,   田崎百合子 ,   山上高生 ,   向井規子 ,   勝村浩三 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.1319 - P.1322

要約 背景:結膜上皮内癌は手術を含め,有効な治療が困難である。目的:5フルオウラシル点眼が奏効した2症例の報告。症例:1例は73歳男性で,右眼の充血で受診した。2年前に右眼の結膜腫瘍の切除を受けている。右球結膜に膠様の隆起性病変があり,1% 5フルオロウラシル液を1日4回点眼した。2週間で隆起性病変はほぼ消失した。他の1例は30歳女性で,アレルギー性結膜炎の治療中に右球結膜と角膜輪部に隆起性病変が生じた。5フルオロウラシル液を1日4回点眼し,2週間後にほぼ治癒した。2症例とも生検で結膜上皮内癌と診断された。点眼による副作用はなかった。結論:広範囲の結膜上皮内癌に対し,5フルオロウラシル液点眼が治療の第一選択となる可能性がある。

角膜移植後ヘルペスウイルス感染による遷延性角膜上皮欠損を繰り返した1例

著者: 國重智之 ,   鈴木久晴 ,   小野眞史 ,   高橋永幸 ,   平岡美紀 ,   高橋浩

ページ範囲:P.1323 - P.1326

要約 目的:遷延性角膜上皮欠損に対し複数回の全層角膜移植が行われ,最終的にヘルペスの治療で治癒した症例の報告。症例:78歳男性が,4年前の白内障手術後に生じた右眼の水疱性角膜症で受診した。矯正視力は右指数弁,左1.0であった。右眼に水疱性角膜症,角膜の上皮欠損と混濁があった。経過:全層角膜移植を行ったが移植片が融解し,4か月後に再移植が行われた。再び移植片が融解し,その2か月後に3回目の移植,さらにその5か月後に表層角膜移植が行われた。角膜上皮欠損に対する羊膜被覆術は奏効せず,羊膜が融解した。ヘルペス感染を疑い,初診から23か月後にアシクロビル点眼を開始し,4回目の角膜全層移植を行った。上皮欠損はなく,角膜は透明で,視力は0.05に回復した。結論:角膜全層移植に抵抗する遷延性角膜上皮欠損にはヘルペス感染が関与している可能性がある。

成人の眼球形状の性差と年代による推移

著者: 杉紀人 ,   小幡博人 ,   牧野伸二 ,   石崎こずえ ,   茨木信博

ページ範囲:P.1327 - P.1332

要約 目的:年齢と性別の眼球の形態の報告。対象と方法:手術の既往がない成人333例333眼を対象とした。男性161例,女性172例で,平均年齢は男性52.8±19.7歳,女性54.7±18.4歳である。IOLマスターTMで眼軸長,角膜の横径と曲率半径,前房深度を測定した。結果:眼軸長は男性23.80±1.44mm,女性23.43±1.50mm,角膜横径は男性12.17±0.45mm,女性11.95±0.41mm,角膜曲率半径は男性7.77±0.28mm,女性7.64±0.27mm,前房深度は男性3.35±0.48mm,女性3.20±0.44mmで,いずれについても男性が有意に大きかった(p<0.005)。いずれの項目についても,年齢との間に負の相関があった(p<0.005)。結論:眼軸長,角膜横径,角膜曲率半径,前房深度は,いずれも男性で大きく,男女ともに高齢者ほど小さい。

ラタノプロスト点眼1~4年後の眼圧と視野

著者: 祐森弘子

ページ範囲:P.1333 - P.1336

要約 目的:ラタノプロスト点眼を1~4年続けたときの眼圧と視野の報告。対象と方法:正常眼圧緑内障50例100眼を対象とした。男性19例,女性31例で,平均年齢は66.9歳である。ラタノプロストの新規投与は21例で,他の29例は他薬からの切り替えであった。眼圧はGoldmann圧平眼圧計,視野はHumphrey視野計で測定した。点眼開始前の平均眼圧は13.0±2.6mmHgであった。結果:点眼1年と2年後では眼圧は有意に下降した(p<0.01)。3年後と4年後の眼圧は点眼開始前と有意差がなかった。視野のMD値は点眼開始から1,2,3,4年後のいずれの時点でも,点眼前と有意差がなかった。結論:正常眼圧緑内障に対するラタノプロスト点眼で,点眼開始から2年間は眼圧下降効果があり,以後2年間は点眼前の値に戻る傾向があった。1~4年の点眼で,視野は点眼開始前と同じ状態に維持された。

塩酸レボブノロールの点眼回数切り替えによる眼圧下降効果の検討

著者: 永沢倫 ,   菅野誠 ,   土谷大仁朗 ,   鈴木理郎 ,   山下英俊

ページ範囲:P.1339 - P.1341

要約 目的:緑内障に対する塩酸レボブノロール点眼を1日1回から2回に切り替えたときの眼圧下降効果の報告。対象と方法:塩酸レボブノロールを1日1回点眼中の10例10眼を対象とした。原発開放隅角緑内障4例と正常眼圧緑内障6例であり,男性8例,女性2例,年齢は39~75歳(平均60歳)である。眼圧は21.0±4.2mmHgであった。結果:点眼を1日2回に切り替えてから1か月後の眼圧は19.6±3.9mmHgで有意差がなく,3か月後に17.6±4.2mmHg,6か月後に18.4±5.0mmHgと,ともに有意に下降した(p<0.05)。結論:塩酸レボブノロールの点眼を1日1回から2回に切り替えることで,眼圧下降効果が増加する。

開放性眼外傷の統計学的観察

著者: ジェーンファン ,   尾崎弘明 ,   右田博敬 ,   近藤寛之 ,   内尾英一

ページ範囲:P.1343 - P.1346

要約 目的:鋭的外力による眼球裂傷の治療成績の報告。対象:過去6年間に治療し,3か月以上の経過を観察できた52例52眼を診療録に基づいて検索した。男性45例,女性7例で,年齢は5~72歳(平均40歳)であった。結果:外傷は穿孔45眼(87%),貫通7眼(13%),眼内異物22眼(39%)であった。損傷部位は,強角膜のみが25眼,水晶体に及ぶものが7眼,硝子体または網膜に及ぶものが20眼であった。最終視力は1.0以上が23眼(44%),0.5~0.9が9眼(17%),0.1~0.4が12眼(21%),0.09~手動弁が4眼(8%),光覚弁2眼(4%),光覚なしが2眼(4%)であった。術前因子として,視力が0.1未満,損傷が眼底に到達,網膜剝離,眼内炎がある例では,最終視力が有意に不良であった。結論:眼球裂傷の予後は比較的良好であるが,術前視力が0.1未満または損傷が後部眼底に及ぶ場合には視機能の回復が困難である。

ベバシズマブ併用光線力学療法を行った滲出型加齢黄斑変性の4例

著者: 高橋秀徳 ,   上田高志 ,   入山彩 ,   小畑亮 ,   井上裕治 ,   足立知子 ,   柳靖雄 ,   玉置泰裕

ページ範囲:P.1347 - P.1353

要約 目的:加齢黄斑変性に対し光線力学療法後にベバシズマブを硝子体内に投与した4症例の報告。症例:病変の最大径が5mmを超える滲出型加齢黄斑変性4例4眼を対象とした。男性3例,女性1例で,年齢は70~79歳であった。4例ともoccult with no classicであった。光線力学療法から5日~2か月後にベバシズマブ1.25mgを硝子体に注入した。結果:術前視力は0.1~0.4であった。6か月後に1例で2段階以上の視力低下があり,3眼では不変であった。初回治療から3か月後に2例,6か月後に3例が再治療を要した。6か月以上の経過中に,1乳頭径以上の網膜出血,網膜剝離,眼内炎などはなかった。結論:加齢黄斑変性に対するベバシズマブを併用する光線力学療法は,無害であり,奏効することがある。

トリアムシノロンアセトニド併用光線力学療法が視感度と脈絡膜循環に与える影響

著者: 涌澤亮介 ,   佐藤肇 ,   吉田まどか ,   阿部俊明 ,   國方彦志 ,   宮沢弘史 ,   玉井洋 ,   西田幸二

ページ範囲:P.1355 - P.1360

要約 背景:光線力学療法とトリアムシノロンの併用が有用である可能性がある一方,トリアムシノロンの網膜色素上皮への毒性と脈絡膜循環障害の問題がある。目的:加齢黄斑変性に対する光線力学療法を,単独またはトリアムシノロン併用で行ったときの,視感度と脈絡膜循環に及ぼす影響の報告。対象と方法:広義の加齢黄斑変性105例106眼を対象とした。57眼には光線力学療法のみ,49眼にはこれにトリアムシノロンのテノン囊下注射を行った。全例を3か月以上経過を追った。視力はlogMARで評価し,0.2以上の変化を有意とした。脈絡膜循環はインドシアニングリーン蛍光造影で検索した。結果:視力維持率,Humphrey視野計によるMD値の変化,照射部低蛍光の出現頻度は,両群間に差がなかった。再発に対する再治療は,トリアムシノロン併用群で有意に少なかった。結論:加齢黄斑変性に対する初回光線力学療法で,トリアムシノロンのテノン囊下投与が,治療後の視感度と脈絡膜循環に与える影響は少ない。

網膜血管腫に伴う硝子体出血と黄斑上膜に対して硝子体手術を行った1例

著者: 大平知美 ,   辰巳智章 ,   三田村佳典 ,   山本修一

ページ範囲:P.1361 - P.1364

要約 目的:硝子体出血に対して硝子体手術を行い,網膜血管腫が発見された症例の報告。症例と所見:71歳女性が8か月前からの右眼の霧視で受診した。矯正視力は右指数弁,左1.5で,右眼に強い硝子体出血があった。超音波検査で後部硝子体剝離と,下鼻側の眼底に隆起性病変があった。硝子体手術の術中所見として,乳頭の下方に約5乳頭径大の網膜血管腫と思われる腫瘤と,流入・流出血管があり,これから黄斑部にかけて網膜剝離と網膜上膜があった。網膜上膜を剝離し,網膜血管腫に冷凍凝固を行い,流入血管を光凝固した。術後さらに光凝固を追加した。7か月後に0.2の視力が得られた。網膜血管腫と関係する全身の異常はなかった。結論:本症例は後天性の網膜血管腫に続発した硝子体出血と推定される。硝子体手術と術中・術後の光凝固が有効であった。

光凝固治療後の網膜裂孔患者の長期予後

著者: 門屋講司 ,   田中朗 ,   田中寧 ,   鈴木利根 ,   瀬川敦 ,   筑田眞

ページ範囲:P.1365 - P.1367

要約 目的:網膜裂孔に対して光凝固を行った症例の長期経過の報告。症例と方法:網膜裂孔と診断され,アルゴンレーザーによる光凝固を受けた100例113眼を検索した。男性49例,女性51例で,年齢は22~79歳(平均53歳)である。5~21年(平均11年)の経過を追った。裂孔の内訳は弁状66眼,円孔51眼で,網膜裂孔すべてに光凝固を行った。結果:経過中に新規の裂孔が34例(34%)に生じ,同側14例(41%),他側15例(44%),両側5例(15%)であった。生じた時期は,光凝固後1年未満が14眼(32%),1~5年が18眼(41%),5年以上が12眼(27%)であった。網膜剝離が2眼(1.8%),網膜前膜が4眼(3.5%)に発症した。結論:光凝固で治療した網膜裂孔の長期経過は良好であったが,5年以上が経過しても裂孔が新規に生じ,網膜剝離に移行することがある。網膜裂孔が発見された症例では,長期の経過観察と新裂孔を早期に発見する努力が必要である。

連載 今月の話題

オルソケラトロジー

著者: 柳井亮二 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.1221 - P.1226

 オルソケラトロジーは,ハードコンタクトレンズを装着して睡眠し,角膜形状を変形させることにより角膜屈折力を変化させる屈折矯正方法である。オルソケラトロジーは日中,補助具なしで視力を改善することができること,レンズ装用を中止することによって角膜形状が元に戻り可逆性であることなどの利点がある。一方,矯正効果を発揮するためには,より効率よく角膜の変形を生じるハードコンタクトレンズを装用しなければならないため,角膜に対する影響は大きくなる。コラーゲンの性質が不安定な小児期や円錐角膜などでは,矯正効果および安全性が担保されないため適応とならない。また,オルソケラトロジーにより角膜上皮ステイニング,角膜上皮下浮腫,角膜上皮内鉄分沈着,感染などが生じる可能性がある。オルソケラトロジーの実施においては,その原理や実際の処方方法の習熟のみならず,屈折矯正の過程で生じる角膜への影響など,角膜生理と屈折矯正に対する深い理解が必要である。

日常みる角膜疾患・65

ステロイド関連角膜障害

著者: 森重直行 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.1228 - P.1231

症例

 [症例1]

 患者:66歳,女性

 主訴:左眼の異物感

 現病歴:10年前からSjögren症候群に対し,クラビット®点眼および0.1%フルメトロン®点眼加療が行われていた。3か月前から左眼の異物感を自覚して近医を受診,左眼の角膜潰瘍を指摘された。精査・加療目的で当科を紹介され受診した。

 初診時視力は右0.5(1.2),左0.3(0.6),結膜は軽度充血し,角膜中央部のやや下方に角膜実質の菲薄化した部位(図1a),その中央部に上皮欠損を認めた(図1b)。ドライアイに起因する遷延性角膜上皮欠損と考え,タリビッド®眼軟膏点入および強制閉瞼により加療したが上皮欠損は拡大した。

 ステロイドによる角膜上皮治癒遅延の可能性を考慮し,0.1%フルメトロン®点眼の使用を中止した。翌日上皮欠損は消失し,翌々日には左眼は0.5(0.9)まで視力が改善した。

公開講座・炎症性眼疾患の診療・17

HTLV-1関連ぶどう膜炎

著者: 北市伸義 ,   三浦淑恵 ,   大野重昭

ページ範囲:P.1232 - P.1237

はじめに

 ヒトTリンパ球向性ウイルス(human T-lymphotropic virus:以下,HTLV)はレトロウイルス科のオンコウイルス亜科に属し,CD4陽性Tリンパ球を標的宿主細胞とするRNAウイルスである。現在HTLV-1とHTLV-2の2種類が知られている。両者は核酸レベルで70%同一であるが,HTLV-1が成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia:以下,ATL)の原因ウイルスであるのに対して,HTLV-2の白血病への関与を示す証拠は得られていない。

 ATLは1977年,京都大学内科(当時)の高月清らにより初めて報告された1)。全症例が九州鹿児島地方出身であることに気づかれたのはまさに慧眼であり,その後の研究に大きな手がかりを与えた。原因ウイルスであるHTLV-1は,1981年に京都大学ウイルス研究所(当時)の日沼頼夫らが発見した。HTLV-1の主な標的はCD4陽性Tリンパ球であり,Tリンパ球へ感染後ウイルス自身がもつ逆転写酵素によってDNAに転写され,感染細胞のDNAにプロウイルスとして組み込まれキャリアとなる。時あたかもAIDSのHIVウイルスが発見された頃であり,CD4T細胞を標的とする2つの病原ウイルスが洋の東西でほぼ同時期に発見されたことは歴史的にも興味深い。その後,HTLV-1関連脊髄炎(HTLV-1-asociated myelopathy:以下,HAM)など種々の関連疾患が明らかになっている(表1)。

 ぶどう膜炎もHTLV-1と関連して発症することが証明され,HTLV-1関連ぶどう膜炎(HTLV-1-assosiated uveitis:以下,HAU)が一疾患概念として確立された2~5)

網膜硝子体手術手技・20

開放性眼外傷(5)眼球破裂,強角膜穿孔の2次的硝子体手術(1)

著者: 浅見哲 ,   寺崎浩子

ページ範囲:P.1238 - P.1243

はじめに

 眼球破裂,裂傷の2次的硝子体手術は,濃厚な硝子体出血,網膜全剝離,脈絡膜剝離や,それらに加え増殖性変化が起こっている場合が多い。しかもその視認性の悪さから術前に眼内の状態を把握することは困難であり,術中に病態を予想しながら処理を行っていかなければならないので,網膜硝子体手術のなかで最も技量が要求される疾患の1つである。

もっと医療コミュニケーション・8

医師には2種類の「腕」が必要―「腕」が伝えるパワー

著者: 佐藤綾子 ,   綾木雅彦

ページ範囲:P.1370 - P.1372

 S大学病院の整形外科のY医師は患者の間でとても人気があります。Y医師を囲んで患者友の会を作ろうではないか,という呼びかけが私のところにもきて,「なるほど,Y医師だったらそうかもしれない」と納得するものがありました。

 しかし,そんな動きを知った別の整形外科のA先生が「いったいなぜですかね? Y先生はアメリカ帰りで,新しいセラミックスを使った手術法などを知っているから人気があるのでしょうか?」と不思議そうな顔で言うのです。

今月の表紙

虹彩ルベオーシス

著者: 梅原亜矢子 ,   鈴木康之

ページ範囲:P.1244 - P.1244

 15歳男性の右眼である。出生時よりのSturge-Weber症候群を指摘され,近医にて弱視治療を行っていた。右顔面に母斑がみられ,2002年までの視力は右(0.3),左(1.2)であった。国立がんセンター中央病院で,Sturge-Weber症候群による右眼脈絡膜血管腫に対し放射線照射を行ったが,硝子体出血を起こしてからは視力が低下,その後,受診,治療せず放置していた。放射線照射から1年半後,眼痛のため近医を受診した。視力は右(光覚弁),左(1.2),眼圧は右50mmHg,左23mmHgで,右眼の虹彩ルベオーシスとそれに伴う眼圧上昇を認め,当院を紹介された。

 撮影にはHAAG-STREIT社フォトスリットカメラBP900を使用した。フィルター(デフューズ),スリット(なし),角度45°,NikonデジタルカメラD200を使用した。虹彩上のルベオーシスは目には見えても写真には写りにくいため,光量を高めに設定することや,虹彩とのコントラストが強調されるよう,細かな撮影角度の調整を行った。

臨床報告

透析時の眼圧上昇に高浸透圧薬と高ナトリウム透析が有効であった血管新生緑内障の1例

著者: 中村佳代子 ,   村松昌裕 ,   横井匡彦 ,   陳進輝 ,   大野重昭

ページ範囲:P.1377 - P.1381

要約 目的:血液透析直後に生じる眼圧上昇に,透析液の調整が奏効した血管新生緑内障の症例の報告。症例:53歳男性が22年前に2型糖尿病と診断された。12年前に両眼の糖尿病網膜症に対し汎網膜光凝固を受け,8年前から腎症に対し血液透析を受けている。11年前に右眼に硝子体トリプル手術が行われた。18か月前に右眼に血管新生緑内障が生じ,濾過手術を複数回受けた。所見:矯正視力は右0.3,左1.0で,眼圧は透析直後では38mmHg,非透析日には12mmHgと動揺を繰り返した。左眼圧は18mmHgに安定していた。透析に高ナトリウム濃度液を用い,透析中の高浸透圧薬の点滴で透析直後の高眼圧はなくなり,最終的には高ナトリウム濃度のみで右眼圧が18mmHgに安定し,高浸透圧薬の点滴後の眼圧再上昇もなくなった。結論:透析条件を調整することで透析直後の眼圧上昇が抑制できた。

光視標と調節視標による屈折値と瞳孔径の変化

著者: 中山奈々美 ,   川守田拓志 ,   山本真也 ,   魚里博

ページ範囲:P.1383 - P.1386

要約 目的:光視標と調節視標の注視が屈折と瞳孔径に及ぼす影響の報告。対象と方法:矯正視力が1.2以上の健常者12例の左眼を対象とした。矯正視力はすべて1.2以上で,年齢は平均22.5±2.5歳であった。屈折値と瞳孔径の測定には両眼開放型オートレフと解析ソフトを用いた。光視標と調節視標はいずれも5mと30cmの距離に置いた。結果:光視標と調節視標に対する屈折値は遠見時と近見時で有意差があった(p<0.05)が,光視標と調節視標の間には有意差がなかった。瞳孔径はどの条件下でも差がなかった。結論:光視標を使って眼位を検査するときには,調節による影響に注意する必要がある。

べらどんな

病気の匂い

著者:

ページ範囲:P.1243 - P.1243

 「病気には6種類しかない」という話を病理の講義で聞いた。炎症,変性,循環障害,腫瘍,外傷,先天異常がそれである。

 わかりやすい話なので,ずっと頭に残っている。眼底の疾患でも,すぐに見当がつかないときには,炎症か循環障害なのかなどをまず考えることにしている。

学会のおみやげ

著者:

ページ範囲:P.1364 - P.1364

 学会に行くといろいろなお土産をいただく。受付でもらうバッグには,名札やプログラムなどが入っている。これが国際学会になるとずっと賑やかになり,パーティーや音楽会の招待状,それに記念品などがこれに加わる。

 こういったお土産は参加者にとっては嬉しいのだが,会の主催者には気苦労の種になる。重いものは禁忌だし,安物や変なものでは喜んでもらえない。思い切って豪華にしようとするとその費用をどうするかが問題になる。ちなみに1978年の京都での国際眼科学会では,鋳物の文鎮と電卓がお土産だった。

やさしい目で きびしい目で・104

生かされている自分

著者: 杉村華子

ページ範囲:P.1369 - P.1369

 最近よく,地域においても家庭においても「生かされている自分」あるいは「活かしていただいている自分」ということを感じ,つくづく幸せなことと感謝の念に至ります。思えばいままで,ほんとうにいろいろな方々にお世話になり,いまの自分があります。

 幼少時代には,母の二人の姉家族と一緒の大家族のなかで一番年下なため,とにかくみんなに可愛がってもらったという思いが強く,そのことが私の人間観とか人生観の根っこになっているのだと思います。もともと明るく楽しい性格ではないのですが,いざ大事となるとかなり前向きな結論に達します。そして最後は決して諦めない,というわけです。

ことば・ことば・ことば

にせもの

ページ範囲:P.1373 - P.1373

 世の中では「ほんもの」の価値が高いほど「にせもの」が作られます。日本のお札は紙が特殊だし,印刷も精巧なのですが,最近では偽札が横行するようになりました。

 病気では解釈が変わったために,「偽者」の名がつくことがあります。

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あとがき

著者: 鈴木康之

ページ範囲:P.1406 - P.1406

 この度,歴史のある本誌に編集委員として参加させていただくこととなりました。思えば,1988年にAxenfeld-Rieger症候群の症例報告を本誌に投稿したのが私自身の初めての医学論文投稿でした。それから私の緑内障人生が始まった訳で,その雑誌の編集に参画させていただけることに大きな喜びを感じております。実をいうと本誌をじっくり読ませていただいたのは,かなり久しぶりなのですが,本誌の内容の充実ぶりに改めて驚き,またこれから毎号をより身近なものとして勉強させていただくことができることに対する期待を強く感じています。

 さて,本号では前号までに引き続き第61回日本臨床眼科学会にて発表された原著論文が特集されています。数々の貴重な症例報告とともに,加齢黄斑変性に対する光線力学療法に関連した多くの症例をまとめた研究の結果は,今後の診療に直結する貴重なものと考えられます。また,今月の話題としてオルソケラトロジーが取り上げられていますが,その歴史,原理から始まり,角膜の形状を夜間に変形させるということにより惹起されうる問題についての詳細な記述は,昨今話題になっているカラーコンタクトレンズの問題とともに,コンタクトレンズを扱ううえでの眼科医の責任を改めて考えさせてくれるものであると感じられます。

 これから諸先生方にご教示いただきながら,本誌の編集を通じて本誌ならびに日本の眼科学の発展に対して少しでも貢献できればと思っております。よろしくお願い申し上げます。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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