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連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・17
HTLV-1関連ぶどう膜炎
著者: 北市伸義1 三浦淑恵1 大野重昭1
所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻感覚器病学講座眼科学分野
ページ範囲:P.1232 - P.1237
文献購入ページに移動ヒトTリンパ球向性ウイルス(human T-lymphotropic virus:以下,HTLV)はレトロウイルス科のオンコウイルス亜科に属し,CD4陽性Tリンパ球を標的宿主細胞とするRNAウイルスである。現在HTLV-1とHTLV-2の2種類が知られている。両者は核酸レベルで70%同一であるが,HTLV-1が成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia:以下,ATL)の原因ウイルスであるのに対して,HTLV-2の白血病への関与を示す証拠は得られていない。
ATLは1977年,京都大学内科(当時)の高月清らにより初めて報告された1)。全症例が九州鹿児島地方出身であることに気づかれたのはまさに慧眼であり,その後の研究に大きな手がかりを与えた。原因ウイルスであるHTLV-1は,1981年に京都大学ウイルス研究所(当時)の日沼頼夫らが発見した。HTLV-1の主な標的はCD4陽性Tリンパ球であり,Tリンパ球へ感染後ウイルス自身がもつ逆転写酵素によってDNAに転写され,感染細胞のDNAにプロウイルスとして組み込まれキャリアとなる。時あたかもAIDSのHIVウイルスが発見された頃であり,CD4T細胞を標的とする2つの病原ウイルスが洋の東西でほぼ同時期に発見されたことは歴史的にも興味深い。その後,HTLV-1関連脊髄炎(HTLV-1-asociated myelopathy:以下,HAM)など種々の関連疾患が明らかになっている(表1)。
ぶどう膜炎もHTLV-1と関連して発症することが証明され,HTLV-1関連ぶどう膜炎(HTLV-1-assosiated uveitis:以下,HAU)が一疾患概念として確立された2~5)。
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