臨床眼科62巻8号

2008年08月発行

特集 第61回日本臨床眼科学会講演集(6) 原著

網膜血管腫に伴う硝子体出血と黄斑上膜に対して硝子体手術を行った1例

著者： 大平知美¹ 辰巳智章¹ 三田村佳典¹ 山本修一¹

所属機関： ¹千葉大学大学院医学研究院眼科学

ページ範囲：P.1361 - P.1364

要約　目的：硝子体出血に対して硝子体手術を行い，網膜血管腫が発見された症例の報告。症例と所見：71歳女性が8か月前からの右眼の霧視で受診した。矯正視力は右指数弁，左1.5で，右眼に強い硝子体出血があった。超音波検査で後部硝子体剝離と，下鼻側の眼底に隆起性病変があった。硝子体手術の術中所見として，乳頭の下方に約5乳頭径大の網膜血管腫と思われる腫瘤と，流入・流出血管があり，これから黄斑部にかけて網膜剝離と網膜上膜があった。網膜上膜を剝離し，網膜血管腫に冷凍凝固を行い，流入血管を光凝固した。術後さらに光凝固を追加した。7か月後に0.2の視力が得られた。網膜血管腫と関係する全身の異常はなかった。結論：本症例は後天性の網膜血管腫に続発した硝子体出血と推定される。硝子体手術と術中・術後の光凝固が有効であった。

参考文献

1）飯田知子・南　正宏・今村　裕・他：黄斑上膜を伴う網膜血管腫に硝子体手術を施行した1例．眼科手術　16：545-548，2003

2）Singh AD, Nouri M, Shields CL et al：Treatment of retinal capillary hemangioma. Ophthalmology　109：1799-1806, 2002

3）伊藤幸子・加藤　整・大島健司：巨大血管腫を有するvon Hippel-Lindau病に対する手術．眼臨　94：1171-1174，2000

4）田邊ひな子・石田正弘・竹内　忍：経瞳孔温熱療法が奏功した網膜血管腫の2例．日眼会誌　110：525-531，2006

5）橋本紀子・岩切直人・土居範仁・他：網膜血管腫（von Hippel病）に対する網膜冷凍凝固術．眼臨　88：526-529，1994

6）三宅孝知・白井正一郎：黄斑上膜が自然剝離した網膜血管腫の1例．眼臨　98：892-894，2004