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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科62巻8号

2008年08月発行

文献概要

臨床報告

透析時の眼圧上昇に高浸透圧薬と高ナトリウム透析が有効であった血管新生緑内障の1例

著者: 中村佳代子13 村松昌裕13 横井匡彦23 陳進輝3 大野重昭3

所属機関: 1KKR札幌医療センター眼科 2手稲渓仁会病院眼科 3北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻感覚器病学講座眼科学分野

ページ範囲:P.1377 - P.1381

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要約 目的:血液透析直後に生じる眼圧上昇に,透析液の調整が奏効した血管新生緑内障の症例の報告。症例:53歳男性が22年前に2型糖尿病と診断された。12年前に両眼の糖尿病網膜症に対し汎網膜光凝固を受け,8年前から腎症に対し血液透析を受けている。11年前に右眼に硝子体トリプル手術が行われた。18か月前に右眼に血管新生緑内障が生じ,濾過手術を複数回受けた。所見:矯正視力は右0.3,左1.0で,眼圧は透析直後では38mmHg,非透析日には12mmHgと動揺を繰り返した。左眼圧は18mmHgに安定していた。透析に高ナトリウム濃度液を用い,透析中の高浸透圧薬の点滴で透析直後の高眼圧はなくなり,最終的には高ナトリウム濃度のみで右眼圧が18mmHgに安定し,高浸透圧薬の点滴後の眼圧再上昇もなくなった。結論:透析条件を調整することで透析直後の眼圧上昇が抑制できた。

参考文献

1)田原昭彦:血液透析と眼圧.産業医科大学雑誌 22:33-43,2000
2)野村征敬・野間英孝・塚本秀利・他:血液透析患者における眼圧変化.あたらしい眼科 21:809-811,2004
3)鎌田京美・田原昭彦・佐川卓司:血管新生緑内障患者における血液透析中の眼圧と血漿浸透圧の経時的変化.臨眼 45:1715-1717,1991
4)福本幸司・林 正和・塩田 洋・他:血液透析後のみに眼圧上昇をきたした開放隅角緑内障の1例.眼科 43:93-96,2001
5)岡田克樹・柴田哲夫・三嶋 弘:人工血液透析ごとに眼圧上昇を繰り返す血管新生緑内障の2例.眼臨 83:749-752,1989
6)天野 泉:眼圧変化と透析方法.臨床透析 14:1801-1806,1998
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8)佐藤成明・高橋現一郎・高橋洋子・他:血液透析が眼圧におよぼす影響―透析条件による差違.眼臨 94:905-909,2000
9)田原昭彦・久保田敏昭・坂本泰二・他:血管新生緑内障の発症メカニズム―血管新生緑内障の発生病理.眼科手術 12:117-120,1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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