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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科63巻4号

2009年04月発行

文献概要

特集 第62回日本臨床眼科学会講演集(2) 原著

シンナー吸入離脱後に生じた中毒性視神経症の1例

著者: 上野久美子1 平岡孝浩1 大鹿哲郎1

所属機関: 1筑波大学臨床医学系眼科学講座

ページ範囲:P.485 - P.489

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要約 背景:シンナー吸引では有機溶媒が通常用いられる。トルエン,キシレンなどがその成分で,メタノールを含むことがある。目的:シンナー吸引を8か月前に離脱した後に中毒性視神経症が発症した症例の報告。症例:24歳男性が前日からの視力喪失で受診した。6年間シンナーを吸引していたが,8か月前に離脱した。6日前から3日間,ラッカー薄め液で車の塗装を落とす業務に従事していた。所見:視力は左右とも光覚なしで散瞳し,眼底は正常で対光反射はなかった。磁気共鳴画像検査(MRI)で大脳深部皮質にトルエン中毒に特有な高信号域があった。ステロイドパルス療法で視力は10日後に手動弁,8週間後に0.02に改善し,視野が拡大した。結論:過去にシンナー吸引歴があり,すでに離脱していても,新規の受動的な吸引で中毒性視神経症が生じる可能性がある。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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