文献詳細
連載 日常みる角膜疾患・74
Descemet膜前角膜ジストロフィ
著者: 近間泰一郎1 西田輝夫2
所属機関: 1山口大学医学部眼病態学講座 2山口大学大学院医学系研究科情報解析医学系学域眼科学分野
ページ範囲:P.638 - P.640
文献概要
患者:58歳,男性
主訴:両眼の視力低下
現病歴:会社の検診で視力低下を指摘された。近医で両眼の白内障と角膜内皮側の混濁がみられたため,角膜の精査を目的として当科を紹介された。
既往歴:高血圧と糖尿病を内服薬で加療中で,いずれもコントロール良好であった。
初診時所見:視力は右0.08(0.5),左0.03(0.8p),眼圧は右12mmHg,左15mmHgであった。細隙灯顕微鏡検査では,両眼の角膜実質深層に顆粒状の淡い混濁が散在しており(図1),前房内炎症はなかった。角膜内皮細胞密度はスペキュラマイクロスコープで右2,631 cells/mm2,左2,777 cells/mm2で,角膜後面沈着物や内皮面の不整はなかった。
レーザー生体共焦点顕微鏡(HRTⅡ-RCM®)を用いた観察では,Descemet膜直上の実質深層に輝度の高い細胞質をもつやや大型の実質細胞が散在していた。細胞質内にのみ高輝度のやや大小不同を有する顆粒状物質の散在が認められ,細胞間にはなかった(図2a)。顆粒状物質は実質深層でのみ認められ,実質浅層および中層ではほとんどみられなかった(図2b)。上皮層には異常所見はみられず,Descemet膜と実質深層の境界を断層で捉えた像からは,顆粒状物質は実質内のみに存在しDescemet膜には存在していないことが明らかであった(図2c)。また,スペキュラマイクロスコープの所見と同様に角膜内皮の所見にも異常所見は認めなかった(図2d)。
治療経過:両眼に中等度の白内障があり,白内障手術を施行したところ,術後に矯正下で両眼とも1.2の視力が得られた。
参考文献
掲載誌情報