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臨床報告
視力低下をきたしたうつ病小児に発見された下垂体腫瘍
著者: 福田宏美1 森秀夫1
所属機関: 1大阪市立総合医療センター眼科
ページ範囲:P.1021 - P.1024
文献購入ページに移動要約 目的:視力障害を契機として下垂体腫瘍が発見されたうつ病男児の報告。症例:17歳男児が視力低下で受診した。7か月前から登校拒否になり,うつと診断された。所見:矯正視力は右0.5,左1.5で,前眼部,中間透光体,眼底,眼球運動に異常はなく,対座法とAmslerチャートで視野異常はなかった。視力低下の原因として,うつによる集中力の低下を疑った。初診から3週間後に右眼視力が零になり,左眼に耳側半盲が生じた。CT検査でトルコ鞍部に最大径26mmの腫瘍が発見され,血液検査などから胚細胞腫と診断した。さらに問診で,多飲,多尿,口渇感,全身倦怠感などが5年前からあったことが判明し,尿崩症,副腎機能低下,甲状腺機能低下が推定された。化学療法と放射線照射で腫瘍は縮小した。視力は4か月後に右1.0,左1.5に改善し,うつ状態も消失した。結論:うつ病によると推測される視力障害が,頭蓋内腫瘍によって起こることがある。
参考文献
1)高野晋吾・松村 明:脳腫瘍の治療.手術・科学療法・放射線療法.小児看護 30:1648-1654,2007
2)内海 隆:小児の心因性視覚障害の病態と治療.神眼 21:417-422,2004
3)横山尚洋:小児の視力障害に関する精神医学的研究.器質的変化を伴わない症例について.慶應医学 63:309-333,1986
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