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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科63巻9号

2009年09月発行

文献概要

連載 日常みる角膜疾患・78

流行性角結膜炎に続発する角膜混濁(点状表層角膜炎)

著者: 高橋典久1 近間泰一郎2 西田輝夫1

所属機関: 1山口大学大学院医学系研究科眼科学 2山口大学医学部眼病態学講座

ページ範囲:P.1420 - P.1423

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症例

 患者:17歳,男性

 主訴:左眼の霧視感

 既往歴:流行性角結膜炎

 家族歴:特記事項はない。

 現病歴:2006年に両眼の流行性角結膜炎に罹患,両眼の結膜炎は鎮静化していたが,左眼には角膜混濁が残存していた。2007年4月から近医眼科にて近視矯正の目的で頻回交換ソフトコンタクトレンズ(2週間)の装用を開始した。近医眼科で2か月ごとに定期検査を受けていたが,12月に左眼の霧視感と角膜混濁の増悪を認め,2008年1月初旬に精査,加療目的で当科を受診した。

 受診時所見:視力は右0.06(1.5),左0.3 p(矯正不能),眼圧は右13mmHg,左7mmHgであった。細隙灯顕微鏡検査では左眼角膜に瞳孔領を含む角膜上方の上皮下に無数の斑状混濁を認めたが,フルオレセイン染色では上皮欠損や上皮表面の不整はなかった。結膜充血や前房内炎症なども認めなかった(図1)。右眼には特に異常所見はなかった。生体共焦点顕微鏡検査では,角膜上皮下では多数の樹状細胞や類円形の炎症細胞の浸潤がみられ,実質浅層では実質細胞の活性化を認めた(図2)。

 治療経過:左眼の頻回交換ソフトコンタクトレンズの装用を中止し,ベタメタゾン点眼およびレボフロキサシン点眼を1日4回で開始した。その後,左眼の上皮下混濁は徐々に軽減して,半年後に点眼を1日2回に減量した。治療開始1年後には左眼の上皮下混濁はほぼ消失し,左眼の視力は0.8(1.0)と回復した(図3)。

参考文献

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3)青木功喜・井上幸次:ウイルス性結膜炎のガイドライン.第3章臨床像.日眼会誌 107:11-16,2003
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12)Valenton MJ:Deep stromal involvement in Dimmer's nummular keratitis. Am J Ophthalmol 78:897-902, 1974

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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