文献詳細
特集 新しい時代の白内障手術
Ⅰ.感染予防
文献概要
病診連携と周術期管理
近年,厚生労働省の奨励もあり病診連携がより活発となっている。そのためか,ひと昔前よりも術後早期に紹介元や患者の住居近くの診療所へ逆紹介する機会が増えた。かつては最短でも2週間程度は術後の経過観察をしていたが,最近は術後1週間以内に逆紹介を行うケースが多い。なかには,退院後1回も手術施行病院を受診せず,病棟から担当医の紹介状を持って直接,近医を受診する場合もある。
しかし,術後1週間以内にこういった診察施設の移動が生じることは決して好ましいとは思えず,実際当院を退院して近医を受診するまでの間に眼内炎を発症し,患者自身の判断で救急外来を受診したという例がある。東邦大学大森病院で1998~2009年に発症した術後眼内炎症例の発症までの期間について調べたところ,術後4~7日の間に発症した症例が14例中4例(28.6%)存在しており(図1),逆紹介により受診した診療所でいきなり術後眼内炎を発症している可能性は十分ある。年間約100万眼施行される白内障手術は,白内障手術を施行しない診療所や病院であっても周術期管理が必要とされる時代となったのである。
近年,厚生労働省の奨励もあり病診連携がより活発となっている。そのためか,ひと昔前よりも術後早期に紹介元や患者の住居近くの診療所へ逆紹介する機会が増えた。かつては最短でも2週間程度は術後の経過観察をしていたが,最近は術後1週間以内に逆紹介を行うケースが多い。なかには,退院後1回も手術施行病院を受診せず,病棟から担当医の紹介状を持って直接,近医を受診する場合もある。
しかし,術後1週間以内にこういった診察施設の移動が生じることは決して好ましいとは思えず,実際当院を退院して近医を受診するまでの間に眼内炎を発症し,患者自身の判断で救急外来を受診したという例がある。東邦大学大森病院で1998~2009年に発症した術後眼内炎症例の発症までの期間について調べたところ,術後4~7日の間に発症した症例が14例中4例(28.6%)存在しており(図1),逆紹介により受診した診療所でいきなり術後眼内炎を発症している可能性は十分ある。年間約100万眼施行される白内障手術は,白内障手術を施行しない診療所や病院であっても周術期管理が必要とされる時代となったのである。
参考文献
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3)福田正道:AQCmax(maximum aqueous concentration:房水内最高濃度値)について教えてください.あたらしい眼科 17(臨増):37-40,2000
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11)薄井紀夫:術後眼内炎に対する治療.IOL & RS 22:142-144,2008
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