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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科64巻11号

2010年10月発行

文献概要

特集 新しい時代の白内障手術 Ⅰ.感染予防

感染時の対応

著者: 谷内修太郎1 平形明人1

所属機関: 1杏林大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.60 - P.64

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はじめに

 術後眼内炎は白内障手術の合併症として最も重篤な術後合併症であり,それへの対策は起こさないために最大限の努力を惜しまないことにつきる。しかし,周術期の感染予防対策を十分に行っても術後眼内炎を完全に避けることはできず1),わが国では約0.05%の発症率といわれている2)

 いざ眼内炎に遭遇した際は,初期の緊急対処法が視力予後を大きく左右する。緊急対応の基本は,適切な抗菌薬を適切な濃度で眼内投与することであり,薬剤の網膜毒性も考慮しなければならない。そこでいずれ遭遇するであろう術後眼内炎に対してあらかじめ治療のプロトコールを作成し,早急に対応できる準備を整えておくことが重要である3)。とくに硝子体投与,結膜下投与に用いる抗菌薬の調整方法は,いつでも確認が取れるように医局,診察室,手術室などの目につくところに貼っておくのがよい。眼内炎と診断した際の当院の治療のプロトコールと抗菌薬の調整方法を図1,2に示す。

 また,初診時には軽症と思われていた症例でも,その後に症状は急速に進行していくかもしれないと予想し,硝子体手術の時期を逸しないためにも点眼や抗菌薬の硝子体投与で漫然と経過観察をするのではなく,硝子体手術の設備がない施設では早めに緊急対応が可能な病院へ転院させることが必要である。

参考文献

1)Aaberg TM Jr, Flynn HW Jr, Schiffman J et al:Nosocomial acute-onset postoperative endophthalmitis survey. A ten-year review of incidence and outcomes. Ophthalmology 105:1004-1010, 1998
2)川崎史朗:わが国の術後眼内炎の動向は? あたらしい眼科 26:69-71,2009
3)薄井紀夫:初期治療プロトコール.大鹿哲郎(編):眼科プラクティス1.術後眼内炎.29-33,文光堂,東京,2006
4)Ciulla TA, Starr MB, Masket S:Bacterial endophthalmitis prophylaxis for cataract surgery. Ophthalmology 109:13-26, 2002
5)Shinglenton BJ, Wadhwani RA, O'Donoghue MW et al:Evaluation of intraocular pressure in the immediate period after phacoemulsification. J Cataract Refract Surg 27:524-527, 2001
6)Nagaki Y, Hayasaka S, Kadoi C et al:Bacterial endophthalmitis after small-incision cataract surgery. Effect of incision placement and intraocular lens type. J Cataract Refract Surg 29:20-26, 2003
7)Cooper BA, Holekamp NM, Bohigian G et al:Case-control study of endophthalmitis after cataract surgery comparing scleral tunnel and clear corneal wounds. Am J Ophthalmol 136:300-305, 2003
8)The Endophthalmitis Vitrectomy Study Group:A randomized trial of immediate vitrectomy and of intravenous antibiotics for treatment of postoperative bacterial endophthalmitis. Arch Ophthaimol 113:1479-1496, 1995
9)薄井紀夫:Endophthalmitis Vitrectomy Study(EVS)の結果をどう考えるか? あたらしい眼科 26:75-78,2009
10)忍足和浩・平形明人・岡田アナベルあやめ・他:白内障術後感染性眼内炎の硝子体手術成績.日眼会誌 107:590-596,2003
11)趙 培泉・林 英之・近藤寛之・他:感染性眼内炎に対する硝子体手術の治療成績.臨眼 53:761-764,1999
12)八幡健児・春木智子・伊藤久太朗:白内障術後眼内炎症例の治療予後.臨眼 63:981-985,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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