文献詳細
特集 新しい時代の白内障手術
Ⅲ.高機能眼内レンズ
文献概要
白内障術後の乱視
現在,眼内レンズは非球面レンズ,トーリックレンズ,多焦点レンズなど高機能眼内レンズが登場し,患者のQOV(quality of vision)の向上のための選択肢が増えてきている。一方,これらのレンズを使用するときには,術後の屈折力誤差が大きいと,その機能を十分に発揮することができない場合がある。白内障手術を行うにあたって,球面度数については眼内レンズの度数選択によってある程度の調整を行うことができるが,乱視に関しては,現時点ではトーリック眼内レンズのみ約1.0~2.0Dの範囲での円柱度数矯正が可能となっているのみであり,非球面眼内レンズ,多焦点眼内レンズにおいては,乱視の影響をほぼそのまま受けることになる。最近の白内障手術は創口の小切開化により惹起乱視が小さくなっているため,術前の角膜乱視が術後乱視に大きな影響を与えることになる。
図1は,白内障手術10,000例の術前角膜乱視度数の分布を直乱視,倒乱視に分けて示したものである。多焦点眼内レンズを用いる場合,良好な視機能を得るために推奨されている乱視度数は一般的には±1.0D以内とされているが1,2),この範囲に該当する症例は全体の約61.7%にしかならない。とくに欧米においては,1.0Dを超える乱視に関しては乱視矯正手術の対象とされる傾向にある1)。実際には,日常生活で必要とされる視力が患者によって異なるが,この基準を用いると3例に1例は潜在的に乱視矯正手術の検討対象となってしまうことになる。
現在,眼内レンズは非球面レンズ,トーリックレンズ,多焦点レンズなど高機能眼内レンズが登場し,患者のQOV(quality of vision)の向上のための選択肢が増えてきている。一方,これらのレンズを使用するときには,術後の屈折力誤差が大きいと,その機能を十分に発揮することができない場合がある。白内障手術を行うにあたって,球面度数については眼内レンズの度数選択によってある程度の調整を行うことができるが,乱視に関しては,現時点ではトーリック眼内レンズのみ約1.0~2.0Dの範囲での円柱度数矯正が可能となっているのみであり,非球面眼内レンズ,多焦点眼内レンズにおいては,乱視の影響をほぼそのまま受けることになる。最近の白内障手術は創口の小切開化により惹起乱視が小さくなっているため,術前の角膜乱視が術後乱視に大きな影響を与えることになる。
図1は,白内障手術10,000例の術前角膜乱視度数の分布を直乱視,倒乱視に分けて示したものである。多焦点眼内レンズを用いる場合,良好な視機能を得るために推奨されている乱視度数は一般的には±1.0D以内とされているが1,2),この範囲に該当する症例は全体の約61.7%にしかならない。とくに欧米においては,1.0Dを超える乱視に関しては乱視矯正手術の対象とされる傾向にある1)。実際には,日常生活で必要とされる視力が患者によって異なるが,この基準を用いると3例に1例は潜在的に乱視矯正手術の検討対象となってしまうことになる。
参考文献
1)ビッセン宮島弘子:多焦点眼内レンズと乱視矯正.あたらしい眼科 25:1093-1096,2008
2)Hayashi K, Hayashi H, Nakao F et al:Influence of astigmatism on multifocal and monofocal intraocular lenses. Am J Ophthalmol 130:477-482, 2000
3)山本佳乃・宮井尊史・子島良平・他:白内障術後乱視に対する角膜輪部減張切開による角膜不正乱視の変化.眼科手術 20:251-254,2007
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8)宮井尊史・宮田和典:角膜輪部減張切開術(LRI).IOL & RS 24:39-44,2010
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