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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科64巻13号

2010年12月発行

文献概要

特集 基礎研究から難治性眼疾患のブレークスルーをねらえ

加齢黄斑変性

著者: 柳靖雄1

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学

ページ範囲:P.1960 - P.1967

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はじめに

 加齢黄斑変性の最近の研究はめざましい。臨床的には光線力学療法,そして,現在治療の主体となっている抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)療法などは長年の基礎研究の成果が臨床に応用された例である。加齢黄斑変性は網脈絡膜の加齢性変化を基盤とする疾患であるので,実験動物を用いて網膜色素上皮,Bruch膜,脈絡膜の加齢性の変化に注目し加齢性の変化を制御する因子の解明が試みられている。また,脈絡膜新生血管の研究は,マウスやラット,サルなどを用いたレーザー誘発性の脈絡膜新生血管モデルで,脈絡膜新生血管の活動性を制御する因子の検討が広くなされている。一方,ヒトを対象にした研究では疾患感受性遺伝子が明らかとされ,臨床的に得られた知見を今度は動物モデルに還元して検討が行われようとしている。

 加齢黄斑変性の病態解明,脈絡膜新生血管治療後の瘢痕病巣の制御,効率的なドラッグデリバリーシステムの開発など,私たち眼科医が積極的にかかわり研究成果を臨床に応用すべき事柄は多い。これまで多くの研究者が壁にぶつかり,その壁を乗り越え新たな治療が開発されてきた。本稿では加齢黄斑変性の基礎研究のこれまでの進歩について,ブレークスルーを生み出してきた先駆者たちの功績を整理して述べたい。そして私たち臨床眼科医が,基礎研究を通してどのようなブレークスルーをめざすのかを述べたい。

参考文献

1)Husain D, Miller JW, Kenney AG et al:Photodynamic therapy and digital angiography of experimental iris neovascularization using liposomal benzoporphyrin derivative. Ophthalmology 104:1242-1250, 1997
2)Kwak N, Okamoto N, Wood JM et al:VEGF is major stimulator in model of choroidal neovascularization. Invest Ophthalmol Vis Sci 41:3158-3164, 2000
3)Krzystolik MG, Afshari MA, Adamis AP et al:Prevention of experimental choroidal neovascularization with intravitreal anti-vascular endothelial growth factor antibody fragment. Arch Ophthalmol 120:338-346, 2002
4)Jonas JB:Intravitreal triamcinolone acetonide:a change in a paradigm. Ophthalmic Res 38:218-245, 2006
5)Iriyama A, Fujiki R, Inoue Y et al:A2E, a pigment of the lipofuscin of retinal pigment epithelial cells, is an endogenous ligand for retinoic acid receptor. J Biol Chem 283:11947-11953, 2008
6)Montezuma SR, Sobrin L, Seddon JM:Review of genetics in age related macular degeneration. Semin Ophthalmol 22:229-240, 2007
7)Xu H, Chen M, Forrester JV:Para-inflammation in the aging retina. Prog Retin Eye Res 28:348-368, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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