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連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・25
真菌性眼内炎
著者: 北市伸義1 齋藤航1 南場研一1 大野重昭2
所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科眼科学分野 2北海道大学大学院医学研究科炎症眼科学講座
ページ範囲:P.416 - P.420
文献購入ページに移動真菌性眼内炎には外因性と内因性がある。外因性真菌性眼内炎は穿孔性外傷や眼内手術により,直接眼内に真菌が侵入し,眼内炎が起こるものである。これは近年減少傾向にあり,問題となることは少なくなっている。これに対し,内因性真菌性眼内炎は真菌の全身感染によって血行性真菌が眼内に伝播し,網脈絡膜に感染して眼内炎を発症する。
本症は1943年に欧米で初めて報告され1),従来は稀な疾患とされていた。日本では1974年に初例が報告された2)。1980年代から医療の進歩とともに増加傾向にあり3,4),消化管手術後・中心静脈カテーテル長期留置・血液悪性腫瘍・臓器移植後・好中球減少・副腎皮質ステロイド薬使用・悪性腫瘍に対する化学療法後・血液透析などの免疫抑制状態や広域抗生物質の投与によって常在細菌叢が抑えられ,真菌血症を起こし,それに続発して発症することが多い5)。本症の約90%が経中心静脈高カロリー輸液(IVH)使用例であり,内因性真菌性眼内炎の重大な誘因である4)。IVHを使用していた患者に対し,眼科以外の医師が本症に気づくのが遅れ,訴訟となって敗訴している症例もある(2003年2月20日名古屋高裁判決,心臓バイパス術後,真菌性眼内炎発症,両眼失明)。
診断は比較的容易であるが,患者の全身状態が不良で自覚症状を訴えることのできない患者も多いので,担当診療科と綿密な連携をとることが必要である。
米国感染症学会のガイドラインでは,すべてのカンジダ血症の患者に対して眼科医の診察を推奨している6)。また,「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2007」など各種ガイドラインも作成されている。
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