臨床眼科64巻4号

2010年04月発行

特集 第63回日本臨床眼科学会講演集（2）

原著

悪性貧血と亜急性連合性脊髄変性症に合併した栄養欠乏性視神経症の1例

著者： 大江敬子¹ 岸俊行²

所属機関： ¹JA香川厚生連滝宮総合病院眼科 ²JA香川厚生連滝宮総合病院内科

ページ範囲：P.517 - P.520

文献概要

要約　目的：悪性貧血と亜急性連合性脊髄変性症に続発した栄養欠乏性視神経症の症例の報告。症例：51歳男性が2週間前からの右眼視力障害で受診した。その2日前から右上肢と下肢の脱力感としびれがあった。所見：矯正視力は右0.3，左0.5で，右眼に相対的瞳孔求心路障害があった。眼底と視野に異常はなかった。脳の画像検査では異常がなく，全身検査で悪性貧血，ビタミンB₁₂欠乏，亜急性連合性脊髄変性症があった。ビタミン複合剤と副腎皮質ステロイドの投与で，2か月後に左右眼とも視力が0.8に回復した。結論：本症例での視力障害は悪性貧血による栄養欠乏性視神経症と診断される。原因不明の視神経炎には，ビタミンB₁₂欠乏が関与する可能性がある。

参考文献

欠乏および葉酸欠乏と神経障害．薬の知識　56：93-95，2005

2）石橋一樹：栄養欠乏性視神経症．根木　昭（編）：眼科プラクティス　23．眼科薬物治療A to Z．238，文光堂，2008

3）松田　晃：巨赤芽球性貧血．日本内科学会雑誌 95：2010-2015，2006

4）今村雅寛：亜急性連合性脊髄変性症．日本臨牀（別冊）　20：148-150，1998

5）溝田　淳：視神経の脱髄性疾患．丸尾敏夫・本田孔士・臼井正彦・他（編）：眼科学Ⅰ．462-464，文光堂，2003

6）Kuzminski AM, Del Giacco EJ, Allen RH et al：Effective treatment of cobalamin deficiency with oral cobalamin. Blood　92：1191-1198, 1998

7）二宮治彦：巨赤芽球性貧血の診療の実際．治療　84：77-81，2002