文献詳細
連載 公開講座・炎症性眼疾患の診療・27
強膜炎
著者: 北市伸義12 石田晋3 大野重昭2
所属機関: 1北海道医療大学個体差医療科学センター眼科学系 2北海道大学大学院医学研究科炎症眼科学講座 3北海道大学大学院医学研究科眼科学分野
ページ範囲:P.836 - P.840
文献概要
強膜は眼球後方の大部分と,前方の角膜を除く外壁を形成する白色の丈夫な組織である。また,強膜表層に接する血管の豊富な部分は上強膜とよばれる。眼球形状の維持と瞳孔以外からの外界の光を遮断する役割を果たすため,機能としてはカメラのボディに近い。肉眼的には透明な結膜を通していわゆる白目として認識される。しかし他の霊長類がすべて虹彩色に近い着色強膜であるにもかかわらず(図1),ヒトだけが白色強膜である理由ははっきりしない。これでは虹彩とのコントラストが強調されてしまうために視線を読まれやすくなり,逃走方向を予測されて天敵・捕食動物に襲われた際の生存率が低下すると考えられる。進化の過程でそのような必要性が低下したために白色化したとも考えられるが,そうだとしてもいつから変色したのかは不明である。
この白色強膜のためヒトで最も多い強膜炎の自覚症状は充血,次いで疼痛である。強膜は膠原線維と弾性線維に富むため,膠原病やリウマチ疾患との関連が深い。比較的血管に富む前部強膜炎が多い。後部強膜炎は原田病との鑑別も重要である。
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