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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科64巻6号

2010年06月発行

文献概要

特集 第63回日本臨床眼科学会講演集(4) 原著

塩酸ラロキシフェンにより増悪したと考えられた結核性網膜血管炎の1例

著者: 右田雅義1 右田寛1

所属機関: 1右田眼科

ページ範囲:P.979 - P.983

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要約 背景:塩酸ラロキシフェンは選択的エストロゲン受容体モジュレータで,骨粗鬆症に対して経口投与される。静脈血栓症は本剤の禁忌とされている。目的:塩酸ラロキシフェンの投与開始後に発症した結核性網膜血管炎の報告。症例:65歳女性が3週間前からの左眼霧視で受診した。霧視を自覚する2週間前から塩酸ラロキシフェンを投与されていた。所見:矯正視力は左右とも1.0で,両眼に眼底出血と網膜血管炎,左眼に豚脂様角膜後面沈着物と隅角結節があった。ツベルクリン反応が強陽性であった。塩酸ラロキシフェンの投与を中止し,デキサメタゾンの点眼を開始した。3か月後に眼底出血と血管炎は軽快した。内科の診察で結核性胸膜炎が疑われ,抗結核薬による治療が行われた。初診から15か月後の現在,眼底の経過は良好である。結論:塩酸ラロキシフェンの全身投与が網膜血管炎の発症または増悪に関係した可能性がある。

参考文献

1)茶木 修:高齢者骨粗鬆症の病態と診断へのアプローチ.ラロキシフェンの適応と治療の注意点.Geriatric Medicine 46:861-865,2008
2)Delmas PD, Ensrud KE, Adachi JD et al:Efficacy of raloxifene on vertebral fracture risk reduction in postmenopausal women with osteoporosis:four-year results from a randomized clinical trial. J Clin Endocrinol Metab 87:3609-3617 2002
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6)鈴木 潤:結核性網膜血管炎.眼科 50:1399,2008
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9)鏑木淳一:抗リン脂質抗体症候群における臨床像と治療.日本臨床免疫学会会誌 31:152-158,2008
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11)厚生労働省健康局結核感染症課:結核の統計2003年版.結核予防会,厚生労働省,東京,2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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