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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科64巻9号

2010年09月発行

文献概要

連載 つけよう! 神経眼科力・6

複視や眼位異常はどこまで治せるのか?

著者: 三村治1

所属機関: 1兵庫医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.1474 - P.1478

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大角度の外斜視でも手術で整容面だけでなく両眼視も回復する!

 成人の最も多い眼位異常は外斜視である。小角度であれば両眼視も良好で間欠性外斜視のことが多いが,大斜視角の外斜視では両眼視が不良で恒常性外斜視が大部分である。そのため,眼科医から術後の複視発症の危険性などを指摘され,手術治療を諦めざるをえない患者も多いと考えられる。

 しかし,長期間斜視が持続していても視力が良好であれば,大角度の斜視であっても手術によって両眼視が回復するという報告1)がある。筆者らの教室でも近見眼位で80プリズム以上外斜している大角度の恒常性外斜視25例の術前後の両眼視機能を検討した2)。その結果,大型弱視鏡では術前両眼視のなかった44%の患者が術後20%に減少し,立体視は術前20%しかなかったものが52%に増加した(図1)。また,Titmus stereo testでも立体視のみられなかった患者が72%から24%に減少するなど劇的に立体視機能の改善がみられ(図2),極端な外斜視であっても術後に複視をきたすことなく整容面,両眼視機能面とも著明に改善できることが証明された。

参考文献

1)Fatima T, Amitava AK, Siddiqui S et al:Gains beyond cosmesis:recovery of fusion and stereopsis in adults with longstanding strabismus following successful surgical realignment. Indian J Ophthalmol 57:141-143, 2009
2)大北陽一・木村亜紀子・間原千草・他:成人の大斜視角の外斜視に対する手術効果.眼臨紀,2010(印刷中)
3)三村 治・内海隆生・木村亜紀子・他:眼運動神経麻痺の予後―薬物療法でどこまで治るか? 眼臨 101:178-181,2007
4)Akagi T, Miyamoto K, Kashii S et al:Cause and prognosis of neurologically isolated third, fourth, or sixth cranial nerve dysfunction in cases of oculomotor palsy. Jpn J Ophthalmol 52:32-35, 2008
5)Park UC, Kim SJ, Hwang JM et al:Clinical features and natural history of acquired third, fourth, and sixth cranial nerve palsy. Eye 22:691-696, 2008
6)Bartalena L, Baldeschi L, Dikckinson AJ et al:Consensus statement of the European group on Graves' orbitopathy(EUGOGO)on management of Graves' orbitopathy. Eur J Endocrinol 158:273-285, 2008
7)目黒千章・木村亜紀子・木村直樹・他:上下直筋水平移動術の回旋矯正効果とその影響因子.眼臨 100:187-189,2006
8)Rutar T, Demer JL:“Heavy eye”syndrome in the absence of high myopia:a connective tissue degeneration in elderly strabismic patients. J AAPOS 13:36-44, 2009
9)Yamaguchi M, Yokoyama T, Shiraki K:Surgical procedure for correcting globe dislocation in highly myopic strabismus. Am J Ophthalmol 149:341-346, 2010
10)三村 治:麻痺性斜視.丸尾敏夫(編):眼科プラクティス29.これでいいのだ斜視診療.110-118,文光堂,東京,2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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