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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科65巻2号

2011年02月発行

雑誌目次

特集 新しい手術手技の現状と今後の展望

白内障手術―多焦点眼内レンズ

著者: 大谷伸一郎 ,   宮田和典

ページ範囲:P.131 - P.136

はじめに

 白内障手術の進歩とともに,患者が期待する術後視機能の水準はますます高くなっている。いままでは,良好な矯正視力を得られればよかったが,現在では,眼鏡なしでも不自由しない裸眼視力が求められている。理想的な術後視力は,若年時と同じ視機能の獲得,すなわち良好な裸眼視力と調節力の回復である。この要求に対して,従来からモノビジョン法,調節眼内レンズ,多焦点眼内レンズなどの試みがなされてきた。そのうち最近,臨床的に効果をあげているのが多焦点眼内レンズである。

 1980年代後半にその初期型が登場している1,2)が,術後乱視の管理が困難であった(切開は3mm以上)うえに,重篤なハロー・グレアが問題となり,患者の要求を満たすことはできず,ほとんど普及してこなかった。しかし近年,光学的な改良と極小切開白内障手術の普及により,それらの問題点は軽減し,新しい多焦点眼内レンズが相次いで登場している。そして既に多くの施設で導入され,その良好な臨床成績が報告されている。本稿では,多焦点眼内レンズの使用経験がなく,なじみのない読者の方を対象に,おおまかなイメージをつかんでいただくことを目的として概説したい。

白内障手術―トーリック眼内レンズ

著者: 野田徹 ,   大沼一彦

ページ範囲:P.138 - P.149

はじめに

 白内障手術の術後患者満足度に大きく関与する裸眼視力を左右する第一の要因は,球面度数と円柱度数である。球面度数の誤差は,光干渉眼軸長測定法や計算式の進化によって少なくなり,また,手術で惹起される角膜の屈折変化も,小切開白内障手術によって非常に少なくなった。そこで,既存の角膜乱視に対するトーリック眼内レンズを用いた補正が,術後の裸眼視力を向上させる有効な手段として注目されている。本項では,トーリック眼内レンズを臨床導入するうえで参考となると思われる事項について概説する。

緑内障手術―インプラント

著者: 千原悦夫

ページ範囲:P.150 - P.154

はじめに

 眼球は閉鎖空間であり,この中に毛様体から房水が分泌され,その房水が水晶体や角膜内皮を栄養した後,主に2つの排出ルート(Schlemm管系とぶどう膜強膜流系)によって眼外に排出される。房水産生は交感神経β2受容体のコントロールを受け午前8~12時は1分あたり2.97μlの産生量であるが,午後には2.68μl/分に落ち,夜中から朝6時には1分あたり1.28μlに落ちる1)。このことが夜間における低眼圧やβ遮断薬に対する不感性の原因と推測されている。

 もし,疾患によって房水の排出が完全に止まった場合,閉鎖空間である眼球にどのくらいの穴を開ければよいのかを調べた報告によると,その直径はわずかに12μmであった2)。最近日本では漸くインプラントに対する関心が高まりつつあるが,インプラントチューブの内径が305μmであるという事実だけみても,単純にチューブを差し込むだけではダメであることが理解されるであろう。

 緑内障インプラント手術は100年以上の歴史を積み重ねて改良がなされ,ようやく一般的な医療として認知される水準に達した。これからこの手術をしようという方はこれまでの苦難の歴史を注視し,どのようにすれば安全に良好な成績を上げることができるのかを理解しておく必要があるであろう。

硝子体手術―内視鏡手術

著者: 喜多美穂里

ページ範囲:P.156 - P.161

はじめに

 「より小さく,より早く」そして「より安全に,より確実に」と,硝子体手術が大きく動いている。その立役者は何といっても,25ゲージ,23ゲージといった小切開硝子体手術の登場だ。時代は,単に治すことから,いかに侵襲少なく治すかに移行している。その流れに沿って,眼内照明・観察系も,ライトパイプ・コンタクトレンズの時代から,シャンデリア照明,スリット照明,広角観察システム(ワイドアングルビューイングシステム),眼内内視鏡と多様化し進化している。

 本項では,眼内内視鏡使用の利点と,その有用性を中心に内視鏡併用硝子体手術の現状を解説し,今後の展望についても検討する。

硝子体手術―小切開硝子体手術

著者: 大島佑介

ページ範囲:P.162 - P.170

はじめに

 25ゲージの手術器具を用いて経結膜的に行う硝子体手術システムが2002年にJuanらによって発表され,現在の小切開硝子体手術(micro-incision vitrectomy surgery:以下,MIVS)の始まりとされている1,2)。硝子体手術の歴史を振り返ってみると,かつてオープンスカイ手術であった硝子体手術が1971年にMachemerによって初めてclosed eye surgeryとして確立され3),その後さらにO'Malleyら4)によって現在のような20ゲージの3ポートシステムへと発展したが,硝子体手術は約30年の年月を経てこのMIVSの登場によってようやく新しいステージに進んだ感がある。

 黎明期にはいろいろと問題点の多かったMIVSも,ここ数年の手術手技の進歩,手術器具の改良,新しい照明系や観察系の開発,そして合併症の発症機序の解明などMIVSに対する多くの臨床研究の積み重ねを通して,この新しい術式に対する理解が深まった。MIVSは硝子体手術の新しい領域としてその地位を確立しつつ,いまもなお進化し続けている。本項ではMIVSの現状をサマリーし,今後の開発を含めた将来的な展望について紹介する。

硝子体手術―Chemical vitrectomy

著者: 塚原康友

ページ範囲:P.172 - P.175

はじめに

 硝子体手術は,混濁した硝子体の切除による光路の再建を目的として始まった。その後,手技,器材の発達によって適応が広がり,網膜疾患の治療が主な目的となってきた。その際には硝子体の網膜表面からの除去が重要となるが,現在の手術手技で確実に侵襲なく除去するのは不可能といってよい。それを可能にするため用手的手術手技でなく,酵素などで化学的に網膜表面から硝子体を分離させる方法が現在までにいろいろ試みられている。また,欧米ではそのための薬物の治験が現在すでに進行している。本項ではそれらに対する現在までの試み,および今後の展望について概説する。

角膜内皮移植術(DSAEK)

著者: 小林顕

ページ範囲:P.176 - P.183

はじめに

 角膜内皮細胞がさまざまな原因により傷害されその密度が極端に減少した場合,最終的に水疱性角膜症を発症する。ごく最近まで,全層角膜移植術が水疱性角膜症の唯一の根治的な治療法であった。全層角膜移植術は約100年の歴史を有する確立された移植医療であるが,角膜全層に円形の垂直切開を行うため,眼球の脆弱性,縫合糸に関連した感染症,拒絶反応,術後の高度角膜乱視,オープンスカイサージェリーに起因する駆出性出血などさまざまなリスクを有する。

 これらの欠点を克服するためには角膜内皮層のみを移植(角膜内皮移植)できれば理想的であり,その実現に向けてさまざまな努力が行われてきた。本項では,角膜内皮移植術の現状と今後の展望について概説する。

今月の表紙

水晶体融解緑内障

著者: 薄井紀夫 ,   鈴木健司 ,   天野史郎

ページ範囲:P.137 - P.137

 症例は91歳,女性。前医からぶどう膜炎,緑内障の診断で紹介され受診した。視力は右0.1(0.6),左手動弁,眼圧は右6mmHg,左37mmHgであった。細隙灯顕微鏡検査では,左眼で著しく硬化・混濁した水晶体核を背景にキラキラと浮遊する融解水晶体が観察された。3日後に水晶体を全摘出し,前部硝子体切除および眼内レンズ縫着を行った。また右眼に対しても超音波水晶体乳化吸引術および眼内レンズ挿入術を施行した。術1年後の視力は右0.3(1.0),左は黄斑部にわずかな萎縮を認めるために0.1(0.4)にとどまったが,術前のキラキラをニコニコに変えていまでも元気に通院中である。

 撮影にはトプコン社製のSL-D7を使用した。バックグラウンドはoff,少しスリット幅を太くして角度を残し遠近感をつけて撮影した。できればもう少しスリット幅を細くしてほぼ真横から撮影することにより,深度を浅くしてキラキラと浮遊する融解水晶体のピントを均一に合わせたかったが,融解した水晶体が角膜後面に付着しスリット光を遮ったため,照らされる浮遊物が少なく見えてしまうのでこのように撮影した。

連載 視野のみかた・11

動的視野計測

著者: 松本長太

ページ範囲:P.186 - P.193

はじめに

 視野検査は,眼科診療において欠かすことのできない重要な視機能検査である。今日の眼科診療では,自動視野計による静的視野測定が視野検査の主流となっている。この背景には,手動のGoldmann視野計による動的視野測定が検者の技量に大きく左右されること,精度の高い動的視野を測定する環境を維持するためには,多大な人的資産の維持が必要であることが挙げられる。さらに,緑内障など長期的な経過観察を行う場合,Goldmann視野計による動的視野の測定結果は定量評価が難しいこともその大きな要因となっている。

 しかしながら臨床的には,むしろGoldmann視野計による動的視野のほうが自動視野計による静的視野より有益な情報を与えてくれる症例が存在することも事実である。視野障害が進行した症例,神経眼科領域の疾患,網膜色素変性など視野の全体像をパターンとして捉えることを考えた場合,Goldmann視野計による動的視野の優位性は高い。また,小児や,理解力の低い症例の場合は,検者が患者と1つ1つコミュニケーションを取りながら検査を進めることができる利点も大きい。今回は,この動的視野検査の臨床的な有用性を中心に考えていきたい。

眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・14

PEDF

著者: 緒方奈保子

ページ範囲:P.194 - P.196

 色素上皮由来因子(pigment epithelium-derived factor:PEDF)は神経保護作用とともに,強力な血管新生抑制作用を持つ。最近は,抗腫瘍作用がある,炎症を抑える,脂質代謝や糖尿病,メタボリック症候群にも関与する,神経幹細胞(neural stem cell)のニッチシグナルである,など実に多彩な機能をもつことが明らかとなり,ますます注目されている。眼にはPEDFが存在し,生理的機能を維持するとともに多くの眼疾患とかかわっている。

つけよう! 神経眼科力・11

頭位の異常のいろいろ

著者: 中馬秀樹

ページ範囲:P.198 - P.204

はじめに

 今回は,頭位の異常の話です。

 頭位の異常には,どのようなものがあるのでしょうか?

 1つはhead tilt(斜頸)が思い浮かびます。

 もう1つは,face turnですね。

 3つめは,head shaking(頭振),head thrustなど,異常運動です。

 以上が頭位の異常の種類です。

 頭位の異常も重要な神経眼科的所見ですので,ここでまとめておきましょう。

やさしい目で きびしい目で・134

女性に生まれて(2)

著者: 上田真由美

ページ範囲:P.205 - P.205

 長男が入院する際,子供を理由に仕事に穴をあけてはいけないと思っていた私は,京都の実家から母に来てもらい,おもりさんと3人でなんとか乗り越えました。昼間は,私は仕事,母は病院で入院中の長男に付き,おもりさんに夕方の上の子供たちの保育園のお迎えをお願しました。夜に母と私が交代し,母は家で子供たちを寝かせ,私は病院で長男と同じベッドで寝ます。朝7時半に,保育園に上の子供たちを送って母は病院へ,私は仕事へという具合です。夫は優しい人ですが,仕事への責任感が強く,子供を理由に仕事に穴をあけることは決してしません。無事,1週間後に長男は退院することができました。しかし,その時私は,“女性だけがこんな思いをするのはおかしい,今度生まれるときは絶対男性に生まれたい”と思いました。

 その後,高知市に戻り,主人は大学病院,私は県立病院の勤務となりました。一番上の長女が小学生になったころ,主人が再び高知県西部の宿毛市に赴任が決まりましたが,子供の教育のことを考え主人は単身赴任することになりました。それをきっかけに,私は実家のある京都に帰り,京都府立医科大学眼科学教室に入局,大学院に入学しました。子供を育てながら仕事を続けていた私には全く縁がないと考えていた研究を行うことができ,また,その魅力に魅了されてしまいました。両親が子供たちをみてくれるので,時間を気にせずに仕事に没頭できました。カギっ子になっていた子供たちは,家に帰ればおじいちゃん,おばあちゃんがいるという生活になりました。兄夫婦も近くに住んでいるので,兄の子供たちと一緒に私の子供たちもよく遊びにも連れて行ってくれました。

臨床報告

超急性期網膜中心動脈閉塞症に組織プラスミノゲン活性化因子(rt-PA)静注療法を施行した1例

著者: 小林奈美江 ,   島田頼於奈 ,   小林健太郎 ,   金子知香子 ,   久保仁 ,   山本悌司 ,   片山宗一

ページ範囲:P.219 - P.224

要約 目的:発症直後の網膜中心動脈閉塞症に対し,組織プラスミノゲン活性化因子(recombinant tissue plasminogen activator:rt-PA)の静注で治療した症例の報告。症例:78歳男性の左眼に視野欠損が突発し,その30分後に受診した。所見:矯正視力は右1.0,左光覚弁で,前眼部と中間透光体に異常はなかった。左眼の乳頭から黄斑に向かう網膜動脈に沿う網膜が白濁していた。蛍光眼底造影での腕-網膜循環時間は21秒で,網膜内の循環は緩慢であった。経過:発症から2時間後にrt-PAを静注した。その6分後から視野と視力の改善が始まり,翌日の視力は1.0で,下方視野にわずかな欠損があった。結論:発症2時間後の網膜中心動脈閉塞症に対しrt-PAを静注し,視力と視野がただちに回復した。本療法は脳梗塞の超急性期の治療に準じ,脳出血などのリスク管理を行えば,発症直後の網膜中心動脈閉塞症にも有効である可能性がある。

整復手術が必要であった眼内レンズ位置異常症例の検討

著者: 村田勝一郎 ,   相馬利香 ,   久保田敏昭 ,   田原昭彦

ページ範囲:P.225 - P.229

要約 目的:眼内レンズ(IOL)の位置異常に対して整復手術を必要とした症例の原因と危険因子の報告。対象:過去5年間にIOLの位置異常で視機能障害が生じ,整復手術を行った20例20眼を対象とした。結果:IOLは9眼では囊内固定,11眼では囊外固定であった。初回手術から整復手術までの期間は,囊内固定群では1年以上が多く,囊外固定群では1か月以内または10年以上が多かった。IOL脱臼の原因は,囊内固定群では外傷,落屑症候群,アトピー性皮膚炎に併発したZinn小帯脆弱性が多く,囊外固定群では術中の後囊破損が多かった。結論:落屑症候群やアトピー性皮膚炎がある症例では,IOLが囊内固定されていても術後の位置異常が生じることがある。囊外固定例では術後10年以上が経過していてもIOL位置異常が生じる可能性があり,注意が必要である。

ドライアイに対するアテロコラーゲン涙点プラグ(キープティア®)の治療効果

著者: 中野聡子 ,   村上智貴 ,   久保田敏昭

ページ範囲:P.231 - P.235

要約 目的:ドライアイに対する涙点プラグの治療効果の報告。対象と方法:点眼治療が奏効しないドライアイ45例89眼を対象とした。男性25眼,女性64眼で,平均年齢は75歳である。アテロコラーゲン涙点プラグ(キープティア®)を涙点に挿入し,6か月間の経過を評価した。結果:挿入2週間後に,自覚症状とすべての検査所見が軽快した。Schirmer Ⅰ法の所見改善は2週間後のみが有意で,涙液層破壊時間の延長効果も2週間後をピークに,次第に減弱した。フルオレセイン染色による他覚的所見の改善は,挿入2か月以降も持続していた。自覚症状改善効果持続期間の中央値は4か月であった。治療効果は軽症のドライアイで顕著であったが,重症の21眼にも一定の効果があった。一過性の流涙,眼脂,瘙痒感が計8眼(9%)に生じた。結論:ドライアイヘの涙点プラグ(キープティア®)は有効で安全であった。

カラー臨床報告

著明な白板症と白色眼脂をきたした角結膜扁平上皮癌の進展例

著者: 木内絢子 ,   髙橋寛二 ,   西川真生 ,   植村芳子 ,   岩下憲四郎

ページ範囲:P.213 - P.217

要約 目的:白板症と白色眼脂を呈した角結膜扁平上皮癌の症例の報告。症例:71歳男性が右眼の結膜充血,眼脂,視力低下で受診した。19年前に右眼の外傷と4回の手術の既往がある。痛風腎,肺高血圧症,珪肺があり,常時臥床の状態であった。所見:矯正視力は右0.01,左0.5で,右眼の球結膜に白色の腫瘤,角膜にゼラチン様の上皮増殖,上方の球結膜に白板症で覆われるカリフラワー状の腫瘤があり,下方結膜囊に白色の眼脂が貯留していた。生検で角化傾向が強い角結膜扁平上皮癌の進展例と診断した。総量60Gyの放射線照射で腫瘍は縮小した。初診から4か月後に感冒を契機として死去した。結論:結膜の扁平上皮癌の進展例では角化が顕著になり,角化物が白板症と白色眼脂としてみられることがある。

文庫の窓から

『大観本草』

著者: 中泉行弘 ,   林尋子 ,   安部郁子

ページ範囲:P.236 - P.239

古きを残して加筆された本草書

 本草学と呼ばれる東洋の薬物学は前漢末の頃から始まり,その最古の書物は『神農本草経』という。永元2年(500)頃,陶弘景(452-536)は,伝えられていた数種類の『神農本草経』を校勘し,新たに増補と注釈を加えて730種の薬物を網羅する本として『神農本草経集注』3巻(『本草集注』または『集注本草』と呼ばれる)を編纂する。ここでは玉石・草木・虫獣・果・菜・米食という分類がなされたが,『神農本草経』から踏襲された上品・中品・下品の三品分類も行われ,①養生のための上薬,②使い方によって毒にも養生薬にもなる中薬,③有毒で,長くは服用できないが病の治療には効果のある下薬の3種類に分けられる。

 その後,この3巻本『本草集注』は著者によって7巻に編集しなおされる。さらに159年後の659年,蘇敬らが初めての公撰薬物書である『新修本草』をつくる。また,宋の太素の命で973年には『新修本草』に増補・加注した『開宝本草』がつくられ,翌年には『神農本草経』の文を白抜き文字にして後補の注釈を黒文字で表す形式として刊行される。以後,1061年の『嘉祐本草』,1108年の『大観本草』,1116年の『政和本草』,1159年の『紹興本草』と続き,『本草綱目』が全く異なる形式をもって登場するまで,同じ形式の本草書が出される。

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欧文目次

ページ範囲:P.129 - P.129

べらどんな ドクニンジン

著者:

ページ範囲:P.175 - P.175

 200年前の眼科の教科書を読んでいる。『解体新書』(1774)と同じように,オランダ語の原書を和訳したもので,1815年に『眼科新書』として出版された。シーボルトが来日する8年前である。

 なかなか面白い。眼瞼から網膜までの118疾患について,症状,原因,治療が解説されている。当時の眼科医には必読書だったらしい。

ことば・ことば・ことば 義眼

ページ範囲:P.209 - P.209

 眼科には日本人が発音しにくい術語がときどきあります。翼状片のpterygiumや霰粒腫のchalazionがそれです。もっと困るのが眼球ろうphthisisで,子音が4つもつながっています。

 日本ではフティージスと発音する方が多いようですが,英語ではサイシスが標準的な発音です。もちろん語頭のサはsaではなく,θαのように発音します。これをタイシスとする発音もあります。

投稿規定

ページ範囲:P.210 - P.210

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.211 - P.211

希望掲載欄

ページ範囲:P.212 - P.212

べらどんな 料理番組

著者:

ページ範囲:P.224 - P.224

 テレビでは毎日のように料理の番組があり,よく「レシピ」が出てくる。これはrecipeを英語風に発音したもので,辞書を引くと,「料理の材料や調理法のこと」と書いてある。

 このrecipeは,本来は医学用語だった。ラテン語にrecepere「受ける」という動詞があり,英語のreceiveもこれから来ている。動詞recepereの命令形がrecipeで,処方箋にはかならず書かれていた。その略語のRpでもよい。

学会・研究会 ご案内

ページ範囲:P.241 - P.246

アンケート

ページ範囲:P.248 - P.248

次号予告

ページ範囲:P.249 - P.249

あとがき

著者: 天野史郎

ページ範囲:P.250 - P.250

 2010年12月から『臨床眼科』編集委員を務めさせていただいております。これまで編集委員のなかで唯一角膜を専門とされていた西田輝夫先生の後任ということで依頼がまいりました。日本が世界に誇る角膜研究家である西田輝夫先生のあとは私には荷が重すぎるのはよくわかっておりますが,『臨床眼科』は自分も若いころよく投稿した雑誌であり思い入れもありますので,私なりに精いっぱい務めさせていただこうと思います。

 本号は,「新しい手術手技の現状と今後の展望」を特集としております。どの手術手技も新しい手技として注目されているもので,皆様も大体どのようなものかは理解されていると思います。ただ自分の専門分野以外の手術の新しい手技についての評価,詳細についてまではなかなかご存じないのではないでしょうか。多焦点眼内レンズ,トーリック眼内レンズ,緑内障手術のインプラント,硝子体内視鏡,小切開硝子体手術,chemical vitrectomy,角膜内皮移植(DSAEK)について,各エキスパートが,現段階での評価と今後の展望を語ってくれます。DSAEKは角膜移植に革命をもたらしたともいえる新しい角膜移植です。そんなDSAEKにおいても,より多くの内皮細胞が残るように移植片挿入法にさまざまな改良が加えられたり,よりよい術後視機能を実現するために術式そのものも改変が考えられたりしている現状がよくおわかりいただけると思います。「視野のみかた」をはじめとする連載コーナー,「臨床報告」も合わせてお楽しみください。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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