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特集 新しい手術手技の現状と今後の展望
白内障手術―多焦点眼内レンズ
著者: 大谷伸一郎1 宮田和典1
所属機関: 1宮田眼科病院
ページ範囲:P.131 - P.136
文献購入ページに移動はじめに
白内障手術の進歩とともに,患者が期待する術後視機能の水準はますます高くなっている。いままでは,良好な矯正視力を得られればよかったが,現在では,眼鏡なしでも不自由しない裸眼視力が求められている。理想的な術後視力は,若年時と同じ視機能の獲得,すなわち良好な裸眼視力と調節力の回復である。この要求に対して,従来からモノビジョン法,調節眼内レンズ,多焦点眼内レンズなどの試みがなされてきた。そのうち最近,臨床的に効果をあげているのが多焦点眼内レンズである。
1980年代後半にその初期型が登場している1,2)が,術後乱視の管理が困難であった(切開は3mm以上)うえに,重篤なハロー・グレアが問題となり,患者の要求を満たすことはできず,ほとんど普及してこなかった。しかし近年,光学的な改良と極小切開白内障手術の普及により,それらの問題点は軽減し,新しい多焦点眼内レンズが相次いで登場している。そして既に多くの施設で導入され,その良好な臨床成績が報告されている。本稿では,多焦点眼内レンズの使用経験がなく,なじみのない読者の方を対象に,おおまかなイメージをつかんでいただくことを目的として概説したい。
白内障手術の進歩とともに,患者が期待する術後視機能の水準はますます高くなっている。いままでは,良好な矯正視力を得られればよかったが,現在では,眼鏡なしでも不自由しない裸眼視力が求められている。理想的な術後視力は,若年時と同じ視機能の獲得,すなわち良好な裸眼視力と調節力の回復である。この要求に対して,従来からモノビジョン法,調節眼内レンズ,多焦点眼内レンズなどの試みがなされてきた。そのうち最近,臨床的に効果をあげているのが多焦点眼内レンズである。
1980年代後半にその初期型が登場している1,2)が,術後乱視の管理が困難であった(切開は3mm以上)うえに,重篤なハロー・グレアが問題となり,患者の要求を満たすことはできず,ほとんど普及してこなかった。しかし近年,光学的な改良と極小切開白内障手術の普及により,それらの問題点は軽減し,新しい多焦点眼内レンズが相次いで登場している。そして既に多くの施設で導入され,その良好な臨床成績が報告されている。本稿では,多焦点眼内レンズの使用経験がなく,なじみのない読者の方を対象に,おおまかなイメージをつかんでいただくことを目的として概説したい。
参考文献
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