臨床眼科65巻2号

2011年02月発行

臨床報告 カラー臨床報告

著明な白板症と白色眼脂をきたした角結膜扁平上皮癌の進展例

著者： 木内絢子¹ 髙橋寛二¹ 西川真生¹ 植村芳子² 岩下憲四郎³

所属機関： ¹関西医科大学附属枚方病院眼科 ²関西医科大学附属枚方病院病理部 ³岩下眼科

ページ範囲：P.213 - P.217

要約　目的：白板症と白色眼脂を呈した角結膜扁平上皮癌の症例の報告。症例：71歳男性が右眼の結膜充血，眼脂，視力低下で受診した。19年前に右眼の外傷と4回の手術の既往がある。痛風腎，肺高血圧症，珪肺があり，常時臥床の状態であった。所見：矯正視力は右0.01，左0.5で，右眼の球結膜に白色の腫瘤，角膜にゼラチン様の上皮増殖，上方の球結膜に白板症で覆われるカリフラワー状の腫瘤があり，下方結膜囊に白色の眼脂が貯留していた。生検で角化傾向が強い角結膜扁平上皮癌の進展例と診断した。総量60Gyの放射線照射で腫瘍は縮小した。初診から4か月後に感冒を契機として死去した。結論：結膜の扁平上皮癌の進展例では角化が顕著になり，角化物が白板症と白色眼脂としてみられることがある。

参考文献

1）Shields CL, Demirci H, Karatza E et al：Clinical survey of 1643 melanocytic and nonmelanocytic conjunctival tumors. Ophthalmology　111：1747-1754, 2004

2）小幡博人・青木由紀・久保田俊介・他：眼瞼・結膜の良性腫瘍と悪性腫瘍の発生頻度．日眼会誌　109：573-579，2005

3）Buus DR, Tse DT, Folberg R et al：Microscopically controlled exicision of conjunctival squamous cell carcinoma. Am J Ophthalmol　117：97-102, 1994

4）中島香織・山品将祥・舟越　功・他：巨大眼瞼結膜癌に対する放射線治療が奏効した1例．臨眼　61：2149-2152，2007

5）有村仁志・上原文行・神村浩策・他：放射線療法が奏功した眼瞼・眼球結膜腫瘍の3例．あたらしい眼科　13：1403-1405，1996

6）小幡博人・矢野真知子・小島孚允・他：放射線療法が奏効した眼瞼結膜の扁平上皮癌の1症例．臨眼　49：1402-1404，1995