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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科65巻4号

2011年04月発行

文献概要

臨床報告 カラー臨床報告

腹臥位での全身麻酔下脊椎手術後の虚血性眼窩コンパートメント症候群の1例

著者: 神田愛子1 岸大地1 木許賢一1 久保田敏昭1

所属機関: 1大分大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.557 - P.562

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要約 背景:腹臥位での脊椎手術では,稀ではあるが重篤な視機能障害が続発する。目的:腹臥位での脊椎手術後に片眼が失明した症例の報告。症例:49歳男性が頸椎椎間板ヘルニアに対し腹臥位で全身麻酔下で手術を受けた。術中は頭部を馬蹄形の枕に固定し,輸血は行われず,手術は3時間かかった。手術の3時間後に右眼が見えないことを自覚し,緊急受診した。所見:矯正視力は右光覚なし,左1.2であり,右眼に対光反射がなく,眼球運動が全方向に制限され,眼瞼下垂と球結膜の充血があった。右眼底に桜実紅斑があった。磁気共鳴画像検査(MRI)で右眼の外眼筋腫大があった。右眼は前方に変位し,視神経と眼球後壁との角度が90°であった。眼窩内に出血などはなかった。網膜中心動脈閉塞症を伴う虚血性眼窩コンパートメント症候群(ischemic orbital compartment syndrome)と診断した。3か月後に眼球運動が回復したが,視力は光覚なしであった。結論:眼窩内圧の急激な上昇による眼窩内の循環不全が本症候群の原因と推定される。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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