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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科65巻8号

2011年08月発行

文献概要

臨床報告

真菌性眼内炎による牽引性網膜剝離に対し網膜切除により網膜下肉芽腫を摘出した1例

著者: 上田麻奈美1 馬場高志1 船越泰作1 山崎厚志1 井上幸次1 井東弘子2

所属機関: 1鳥取大学医学部視覚病態学 2井東医院眼科

ページ範囲:P.1351 - P.1355

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要約 目的:牽引性網膜剝離が生じた真菌性眼内炎に対し,網膜切除と網膜下肉芽腫を摘出した症例の報告。症例:57歳男性が左眼の眼内炎で紹介され受診した。12週間前に食道癌の手術と経中心静脈高カロリー輸液を受け,真菌感染による熱発があった。所見:矯正視力は右1.0,左0.8で,左眼に硝子体混濁と下鼻側周辺部に牽引性網膜剝離を伴う腫瘤があった。抗真菌薬が奏効せず,13日後に硝子体手術を行った。牽引性網膜剝離を復位させるために腫瘤の周囲の網膜を切除し,肉芽腫様の腫瘤を切除した。液空気置換,光凝固とガスタンポナーデを行い,牽引性網膜剝離は復位した。摘出した肉芽腫にはリンパ球と形質細胞の浸潤があり,真菌は検出されなかった。結論:真菌性眼内炎において抗真菌薬が使われていても,眼内肉芽腫形成による牽引性網膜剝離があれば,消炎と網膜復位のために硝子体手術と肉芽腫切除が奏効することがある。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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