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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科66巻1号

2012年01月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

加齢黄斑変性と遺伝子―個別化医療をめざして

著者: 山城健児

ページ範囲:P.5 - P.8

 加齢黄斑変性の発症には環境因子と遺伝的因子の両方が関与している。最近になって,加齢黄斑変性の発症に影響を与える遺伝子が明らかとなり,さらに進行・予後および治療への反応性にも遺伝子的要素が関係していることもわかってきた。遺伝子診断によって各患者に最適な治療方針を決定する個別化医療が実現できるかもしれない。

網膜剝離ファイトクラブ・Round 3

裂孔不明網膜剝離 その1

著者: 喜多美穂里 ,   木村英也 ,   日下俊次 ,   栗山晶治 ,   斉藤喜博 ,   塚原康友 ,   安原徹

ページ範囲:P.12 - P.19

ファイトクラブにようこそ!

術前に裂孔が検出できない裂孔原性網膜剝離が,有水晶体眼では2~3%,白内障手術既往眼では5~20%あるといわれます。そんな網膜剝離に遭遇したとき,あなたならどういうアプローチをして治しますか? 今月と来月で2つの症例を検討します。

眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・25

―臨床編:各種眼疾患と生理活性物質とのかかわり―網膜中心静脈閉塞症

著者: 鈴木幸彦

ページ範囲:P.22 - P.24

はじめに

 網膜中心静脈閉塞症(central retinal vein occlusion:以下,CRVO)は,網膜中心静脈の基幹部分(視神経篩状板)で閉塞が起こり1),静脈内圧の上昇に伴い,うっ滞した静脈血が網膜出血となる。そして網膜全体の循環不全を生じ,無灌流域の形成や新生血管の発生,さらには血管新生緑内障や黄斑浮腫といった視力予後に大きな変化をもたらす病態へと進行しかねない。

 フルオレセイン蛍光造影写真において,無灌流域が10乳頭面積以上あるか,あるいは無灌流域を評価できないほどの濃厚な網膜出血がある場合には虚血型(ischemic type),無灌流域が10乳頭面積未満の場合には非虚血型(non-ischemic type)に分類され,虚血型の場合には血管新生緑内障の発症リスクが高いため,網膜光凝固などの積極的治療が推奨されている2)

 従来,内科的治療については線溶療法や抗凝固療法,抗血小板療法などが試みられてきたが,高いエビデンスはまだ得られていないと考えられている。

 最近は,光干渉断層計(optical coherence tomograph:以下,OCT)の普及による黄斑浮腫の診断精度の向上に伴い,局所的薬物治療として黄斑浮腫に対するトリアムシノロンの硝子体注射3)やテノン囊下注射4,5),あるいは血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:以下,VEGF)に対する抗体であるベバシズマブの硝子体注射6)がさかんに試みられている。臨床的な効果が報告されているこれらの治療の意義については,眼内生理活性物質であるサイトカインの面から考えてみる必要がある。

つけよう! 神経眼科力・22

視神経疾患と間違いやすい網膜疾患

著者: 若倉雅登

ページ範囲:P.25 - P.30

はじめに

 視力が低下しているが,それを説明できる診察所見がなく,眼底が正常に見える場合,しばしば「球後視神経炎」が疑われる。しかし,画像診断を含めてよく調べてみても,視神経には異常が検出できないことはあり,その場合でもまだ非器質的疾患とはいいきれない。なぜならば,眼底所見に乏しい網膜疾患が存在するからである。

 今回は,そのような疾患の代表的なものを取り上げる。

『眼科新書』現代語訳

その10

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.34 - P.41

『眼科新書』巻之四(後半)

 前号の水晶液病篇第十では,#97内翳眼[白内障]の前半までが掲載された。以下はその続きで,水晶液病篇後半が扱われる。

今月の表紙

急性網膜壊死症

著者: 千嶋淳子 ,   江本宜暢 ,   寺崎浩子

ページ範囲:P.11 - P.11

 症例は48歳,男性。右眼に飛蚊症を自覚して当科を紹介受診した。視力は右(1.0),左(1.5)。眼圧は右17mmHg,左10mmHg。豚脂様角膜後面沈着物を伴い,前房に中等度の炎症を認めた。水晶体混濁はない。硝子体混濁も軽度だが,網膜動脈周囲炎や周辺部に大小さまざまの網膜黄白色滲出斑を認めた。蛍光眼底造影では視神経乳頭の過蛍光と,動脈に瘤状の色素漏出の散在を認めた。前房水を採取しPCRで水痘・帯状疱疹ウイルスが検出された。アシクロビル点滴,プレドニゾロン内服を開始。2週間の点滴終了後は塩酸バラシクロビルを4週間内服した。

 写真は発症後約1か月で,網膜黄白色滲出斑は癒合拡大し,静脈にも血管に沿った棍棒状出血を認める。4か月後に網膜剝離をきたし,硝子体手術を施行した。

やさしい目で きびしい目で・145

バンド活動と医局員勧誘

著者: 山下彩奈

ページ範囲:P.33 - P.33

 専門医に合格した翌年の2004年,加齢黄斑変性に対する光線力学的療法が始まり,私もPDT認定医の資格を取得し,白神教授率いる黄斑チームの一員としての生活が始まりました。ちょうど同じ頃,プライベートのほうで始めたことがあります。それはバンド活動です。

 私は学生時代,軽音楽部に所属し,主にベースを弾いていたのですが,卒後は友人の結婚式で弾く程度でほとんど活動していませんでした。ところが,以前より活動していた他科の先輩Drのバンドが人事異動の関係でメンバーが足らなくなり,そこで私に声がかかり,再開することになったのです。

臨床報告

内斜視で発見された小児の橋神経膠腫の3例

著者: 羽入貴子 ,   三木淳司 ,   植木智志 ,   高木峰夫 ,   阿部春樹 ,   吉村淳一

ページ範囲:P.49 - P.56

要約 目的:内斜視を主訴として眼科を受診し,脳外科または神経内科で橋神経膠腫と診断された3小児例の報告。症例:症例は4歳女児,4歳男児,10歳女児で,1例には左眼の内斜視が出現進行,第2例には転倒して頭部打撲後に内斜視が出現,第3例には頭痛と内斜視が生じた。一眼の外転制限が3例すべてにあった。3例とも脳外科または神経内科で精査が行われ,頭部CTと磁気共鳴画像検査(MRI)で橋神経膠腫が発見された。結論:小児に生じた内斜視の診断では,橋神経膠腫による外転神経麻痺を念頭に置く必要がある。画像診断ではCTよりもMRIの価値が高い。

涙囊様腺管組織を呈した涙腺囊胞の1例

著者: 山本和幸 ,   加瀬諭 ,   野田実香 ,   岩口佳史 ,   後藤田裕子 ,   石田晋

ページ範囲:P.57 - P.60

要約 目的:涙腺囊胞の1症例の報告。症例:80歳男性が右の上眼瞼腫脹で受診した。40年前に涙囊炎で右の涙囊摘出を受けていた。所見:右の上眼瞼の耳側に直径10mmの表面が平滑な軟性腫瘤が触知された。周囲組織との癒着はなかった。磁気共鳴画像検査(MRI)のT2強調画像で,内部が均一な高信号を示す囊胞様病変があった。血液検査でCRPとIgGの上昇があった。摘出した腫瘤は,病理組織学的に大小の囊胞腔腫瘤からなり,囊胞内腔は多列線毛円柱上皮を示し,断頭分泌を伴っていた。囊胞の上皮下にリンパ球とIgG陽性の形質細胞浸潤があった。結論:本症例は涙囊様組織を呈する涙腺囊胞と考えられる。血液のCRPとIgG値の上昇,囊胞の上皮下に浸潤した形質細胞がIgG陽性であったことから,その発生に慢性炎症が関与した可能性がある。

大分大学医学部眼科におけるぶどう膜炎の臨床統計

著者: 池脇淳子 ,   瀧田真裕子 ,   久保田敏昭

ページ範囲:P.61 - P.66

要約 目的:過去3年間の大分大学眼科でのぶどう膜炎の統計報告。対象と方法:2006~2008年に当科を受診した内因性ぶどう膜炎176例を診療録に基づいて検索した。結果:男性76例,女性100例で,年齢は6~85歳,平均53歳であった。59例が片眼,117例が両眼に発症していた。内訳は,サルコイドーシス51例(29%),原田病16例(9%),Behçet病12例(7%),ヒトT細胞白血病ウイルス1関連ぶどう膜炎5例(3%)などであり,58例(33%)が分類不能であった。結論:今回の結果は,従来の他施設からの報告と同様に,サルコイドーシス,原田病,Behçet病の3大ぶどう膜炎の頻度が高いことを示している。

ドライアイ患者におけるピロカルピン塩酸塩服用中止後の眼所見

著者: 宮本龍郎 ,   江口洋 ,   三田村佳典

ページ範囲:P.67 - P.71

要約 目的:ドライアイ患者でのピロカルピン塩酸塩を内服中と内服中止後の眼所見の報告。症例:ドライアイに対してピロカルピン塩酸塩を内服し,なにかの理由で内服を中断した9例を対象とした。男性1例,女性8例で,年齢は53~72歳,平均60歳であった。内服は1日1回とし,その量は2例が2mg,7例が1mgであった。ドライアイは4例が涙液分泌減少型,5例が涙液蒸発亢進型であった。結果:涙液分泌量は内服中止前後で有意差はなかった。涙液層破壊時間(BUT)は両型とも中止後に短縮したが,治療開始前よりも有意に延長していた(p=0.04,p=0.02)。角結膜上皮障害スコアは涙液分泌減少型では中止後改善し(p=0.01),涙液蒸発亢進型では変化がなかった。結論:ドライアイに対するピロカルピン塩酸塩内服は,内服中止後1か月間はドライアイを改善させる可能性がある。

重度の視神経炎のみを呈した視神経脊髄炎spectrum disorderの1例

著者: 豊田千純子 ,   澤田亮一 ,   余郷麻希子 ,   岡尚省 ,   持尾聰一郎

ページ範囲:P.75 - P.77

要約 目的:重篤な視神経炎のみを呈し,抗アポクリン4抗体が陽性で,neuromyelitis optica spectrum disorderが疑われた症例の報告。症例:抗アポクリン4抗体が陽性である43歳女性が精査のため受診した。16か月前に頭部の打撲後に左眼視力が低下し,左視神経炎と診断された。プレドニゾロン全身投与で4か月後に視力は0.01から1.0に回復した。3か月前に右眼が見えにくくなり,右視神経炎と診断された。右眼に乳頭浮腫と外下方1/4盲があった。所見:右眼に光覚がなく,乳頭が蒼白であった。左眼の眼底と視野に異常はなかった。MRIで右視神経に軽度の腫脹があった。単純血漿交換と二重膜濾過血漿交換を行ったが視力は回復しなかった。結論:視神経のみがあっても,抗アポクリン抗体が陽性のときにはneuromyelitis optica spectrum disorderの可能性を考えて対処すべきである。

網膜および網膜前出血が診断の決め手となった揺さぶられっ子症候群の2例

著者: 伊丹彩子 ,   八代成子 ,   武田憲夫 ,   松下竹次 ,   山中純子

ページ範囲:P.79 - P.84

要約 目的:網膜出血と網膜前出血が診断の決め手になった揺さぶられっ子症候群(shaken baby syndrome:以下,SBS)の2症例の報告。症例:症例は10か月の男児と8か月の女児で,1例は転倒後の意識障害,ほかの1例は転倒後の嘔吐と痙攣があった。それぞれ急性硬膜下出血とクモ膜下出血が疑われ,入院後に眼科を受診した。2症例とも外傷や骨折はなく,硬膜下血腫があり,両眼後極部を中心に網膜出血と網膜前出血が多発していた。これらの所見からSBSと診断した。両症例とも1か月後には網膜出血と網膜前出血はかなり消退し退院した。結論:乳児の硬膜下血腫では,SBSの可能性を考え,速やかに眼底を検査すべきである。

眼球を自己摘出した統合失調症の1例

著者: 野々村咲子 ,   菅原岳史 ,   水野悟志 ,   忍足俊幸 ,   佐藤栄寿 ,   山本修一

ページ範囲:P.85 - P.88

要約 目的:左眼を自己摘出した統合失調症患者の報告。症例:47歳女性が入院中の精神科病院から紹介され,急患として受診した。当日の早朝,看護師が巡回した際に顔面に出血があり,眼球が床に落ちていた。前歴:29歳のときに統合失調症と診断され,2年前から自傷行為を繰り返し,精神科で入院または通院による治療を受けていた。所見:左眼球は消失し,看護師が持参した眼球には約30mmの視神経断端が付着していた。右眼は脱臼し,散瞳して対光反応はなく,角膜混濁と前房出血があった。MRIでは右視神経に損傷があり,眼球に開放創はなく,網膜剝離があった。光覚がないため,手術適応はないと判断された。結論:本症例での眼球の自己摘出は,精神疾患に伴う自傷行為であると解釈される。

限局性強皮症に発症した小児ぶどう膜炎の1例

著者: 白井久美 ,   岡田由香 ,   藤田識人 ,   雑賀司珠也

ページ範囲:P.89 - P.93

要約 背景:限局性強皮症は原因不明の限局性の皮膚結合織の硬化性病変で5型に分類され,顔面や頭部に生じる場合は剣創状強皮症という。目的:剣創状強皮症に併発したぶどう膜炎の女児の報告。症例:4歳3か月の女児が健康診断で発見された左眼視力不良で受診した。1年前から剣創状強皮症で皮膚科に通院中で,同時期から左眼に羞明があった。所見:左眼に虹彩炎,乳頭の発赤浮腫,網膜血管周囲の白濁がみられた。蛍光眼底造影で網膜白濁部は過蛍光であった。剣創状強皮症に併発したぶどう膜炎と診断した。プレドニゾロン内服とベタメタゾン点眼で徐々に軽快した。結論:剣創状強皮症では眼合併症が併発しやすい。本症例はその例で,副腎皮質ステロイド薬の点眼と内服で軽快した。

書評

インターネット時代の専門書 Therapy for ocular angiogenesis:Principals and Practice

著者: 坂本泰二

ページ範囲:P.72 - P.73

 数年前の臨床眼科学会総会の特別講演でDoheny眼研究所のRyan教授が,「今は,基礎医学の成果がついに臨床医学の果実を生むに至ったゴールデンエイジにあるといえる」と述べた。これは,基礎研究,臨床応用,産業化,さらには米連邦政府によるレギュレーションなど,過去40年にわたりこの問題に第一線でかかわってきたRyan教授ならではの言葉であり,正鵠を得たものである。ゴールデンエイジに関しては,腫瘍学,外科学など多くの医学領域についても当てはまることであるが,眼科領域は特にそれがいえる。そして,その中心が眼内血管新生ocular angiogenesisである。Angiogenesisは,故Folkman教授が提唱した現象であり,主に腫瘍増殖にかかわるものとして研究された。眼科領域では,糖尿病網膜症などの発症にかかわる因子としてfactor Xが予言されたが,研究の結果,腫瘍血管新生因子と眼内血管増殖因子(factor X)は重なり合うことがわかり,眼内血管新生研究は大いに発展した。そして,血管内皮増殖因子(VEGF)が主要分子であることが解明され,現在の抗VEGF療法の隆盛につながっている。

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欧文目次

ページ範囲:P.3 - P.3

べらどんな コナルカ

著者:

ページ範囲:P.32 - P.32

 視力には3種類がある。教科書によると,視認最小閾,分離最小閾,可読最小閾がそれである。これを学生に理解させるのは楽ではないが,よい方法を発見した。

 栄養士を養成する某大学には,養護教諭のためのコースがある。実質3時間で眼科学の講義をすることを頼まれた。

投稿規定

ページ範囲:P.44 - P.44

著作権譲渡同意書

ページ範囲:P.45 - P.45

希望掲載欄

ページ範囲:P.46 - P.46

ことば・ことば・ことば 緑眼

ページ範囲:P.48 - P.48

 Glaucomaという病名は古代ギリシャの時代からあり,ヒポクラテスの書いたものにも出てくるそうです。このことから,「緑内障はずっと昔からあった」と思いたくなりますが,現代のわれわれが理解している意味での「緑内障」は1830年,すなわち19世紀になってからの新しい概念なのです。

 ナポレオンは1821年,ゲーテは1832年に世を去りましたが,この頃までは「緑内障は白内障のこと」というのが定説でした。白内障は手術で治るけれども,緑内障は治らないことで区別されました。その理由は説明されていません。

べらどんな 白いレーザー

著者:

ページ範囲:P.66 - P.66

 白色光を出すレーザーが発明されたという話を聞いた。

 「まさか」と思った。レーザーには気体,液体,固体,それにダイオードなどがあるが,基本的にはそれぞれに波長が決まっていて,単色光が出るようになっている。

学会・研究会 ご案内

ページ範囲:P.95 - P.100

次号予告

ページ範囲:P.101 - P.101

あとがき

著者: 寺崎浩子

ページ範囲:P.102 - P.102

 皆様新年明けましておめでとうございます。東日本大震災で被災されました先生がたには謹んで寒中お見舞いを申し上げます。

 今年はどんな年になりましょうか。先のことばかり考えても仕方がないのでコツコツと勉強を積み重ねたいと思っております。臨床眼科は,震災の影響などありましたが,例年どおりのスケジュールで昨年の編集・発行をおわることができ,本号の巻末に全国眼科学教室の教室名簿を掲載することができました。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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