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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科66巻1号

2012年01月発行

文献概要

臨床報告

眼球を自己摘出した統合失調症の1例

著者: 野々村咲子1 菅原岳史1 水野悟志1 忍足俊幸1 佐藤栄寿1 山本修一1

所属機関: 1千葉大学大学院医学研究院眼科学

ページ範囲:P.85 - P.88

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要約 目的:左眼を自己摘出した統合失調症患者の報告。症例:47歳女性が入院中の精神科病院から紹介され,急患として受診した。当日の早朝,看護師が巡回した際に顔面に出血があり,眼球が床に落ちていた。前歴:29歳のときに統合失調症と診断され,2年前から自傷行為を繰り返し,精神科で入院または通院による治療を受けていた。所見:左眼球は消失し,看護師が持参した眼球には約30mmの視神経断端が付着していた。右眼は脱臼し,散瞳して対光反応はなく,角膜混濁と前房出血があった。MRIでは右視神経に損傷があり,眼球に開放創はなく,網膜剝離があった。光覚がないため,手術適応はないと判断された。結論:本症例での眼球の自己摘出は,精神疾患に伴う自傷行為であると解釈される。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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